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料亭で培ったおもてなしの心を、ビジネスの現場へ落とし込むコーチングのプロ

料亭で培ったおもてなしの心を、ビジネスの現場へ落とし込むコーチングのプロ

とても物腰が柔らかく、フッと人を引き込む魅力の秘密は、幼少から女将である祖母から「おもてなし」を学んだことにあった。全国の三越約12,000名の中の11人に選出されディズニーマネジメントを学び、その後グアム三越社長兼ティファニーブティック支配人、フロリダディズニー・ワールド エプコットセンター・ジャパンパビリオンディレクター(取締役)といったキャリアを重ね、独自のコーチングスタイルで多くの人を導く、上田比呂志さんにおもてなしの流儀をとことん聞き取らせていただきます。

想いを形にする力

ー 上田さんの本を読ませていただきましたが、相手のことを理解してからということをすごく書かれておられますね。上田さんのお人柄がなんとなくイメージできました。

どういう人柄だと思いますか?

ー ものを押し付けない、柔らかい方なんだろうなと思いました。よくあるリーダー像とは違う印象でした。

そうなんです。講演の前に肩書きや経歴を紹介されると、どんな人が来るんだろうと、みんな身構えるんですよ。でも話し出すと柔らかくて、びっくりするんですよね。

ー そういう雰囲気とか空気感というのは、もともとなんですか?

ご存知の通り、家は料亭でしたから。そこはあまり緊張させる世界ではない、人を楽しませる世界なので、それが染み付いていたんでしょうね。ただ、入り口は柔らかいけれど、中に入っていくと短刀を持っているとよく言われます。だからもちろん、やるべきことは徹底的にやるというのはありますね。

キャリアアップの根っこは料亭にあった

ー 三越の社員12,000人の中の11人に入ってディズニーで研修を受けて、ものすごいキャリアアップを形にされていますが、どういった背景があったのでしょうか。

もともと根っこは、料亭にあるんですよ。部屋を一歩出ると、芸者さんがすそ引きで歩いているような世界で、ワーっと人を楽しませて、すごいなと思っていました。私はすごく家の商売が好きで、小さい頃からお手伝いしてたんですが、そんな中で子ども心に、自分も将来は人を楽しませる仕事に就きたいと思っていたんです。

当時TVでディズニーチャンネルというのがありましたが、そこでウォルト・ディズニー本人が夢を語るんです。「今度こういうディズニーランド作る」って。この人すごいなあと思った。それでどんどん夢が膨らんでいって、いつかディズニーで働いてみたいと思うようになるんです。 ディズニーって人を楽しませる究極だと思ったんですね。

でも、働くにしても日本にはまだないし、どうしたらいいのかと思っていたところへ、三越がディズニーで研修できる制度を取り入れるというのを見つけたんです。就職先として百貨店も希望していましたから、ドンピシャだったんですよ。それでディズニーへ行くためのひとつの手段として、三越への就職を決めたわけです。

夢は逃げないぞ!

ー そして、6年後に、見事ディズニーに行ける11人に選ばれるわけですね。

やっぱり簡単にはいかなかったです。何度も落ちて、諦めようと思った時もありました。実は、28歳までという年齢制限があって、最後までだめだとカッコ悪いなと思って、最後は受けるのをやめようと思ったんです。
そしたら先輩が、「お前、夢あきらめるのか?」って。「さんざんディズニー行きたいって言ってたじゃないか。夢は逃げないぞ。逃げてるとしたら自分だぞ。」って言われて。ああそうだなあ、自分が逃げてるんだと思いました。自分が諦めた途端、夢は夢でなくなるなあと思ったんです。

それでもう1回、なぜ受からなかったのか考えてみたところ、重大なことに気付きました。私はそれまでアメリカどころか、1回も海外へ行ったことがなかったんです。今と違って、当時は学生が海外へ行くような時代でもなかったのですが、それでも海外に行ったことのない人間が、アメリカでディズニーで働きたい? それはないだろうと思った。しかも、英語があまりできなかったので、じゃあ一回アメリカっていうのを見てやろうと思って、生まれて初めてニューヨークへ行ったんです。

そしたらカルチャーショックですよね。当時のニューヨークは、まだすごくさびれてて、貧富の差が激しくてね。スラム街なんかがすごく危険な状態でした。 その時にマンハッタンにある世界的な有名なランドマークであるエンパイア・ステート・ビルディングに上ったのですが、こんなに高層ビルが建ってるのに古い建物も多くて。すごいな、ニューヨークって歴史が短い割には、短期間で繁栄してきたんだなと思いました。

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ニューヨークの現実を感じたことで動き出した未来

そして、どんよりかげろうのように屍が見えたんです。そこで夢破れたりした、たくさんの人の屍が。ニューヨークってこういう人たちの夢を食って成長してきた街なんだなって、初めてわかったんですよ。その中にひとつだけ黄金のビルが輝いてたんですが、今思うと、それは出来たばかりのトランプ・タワー。

あれが成功者っていうんだと思いました。アメリカっていうところは、99パーセントの屍の上の1%の成功者で成り立っているっていうのを、実感として感じましたね。そして若かったですから、血が煮えたぎるものがあって、自分が次にここに立つときは旅行では立たない。ビジネスで立ってやろうと思ったんです。そう決めたんです。

その後すぐフロリダのディズニーに行ったんですよ。そうしたらもう、360度違っていました。みんな笑顔でニコニコでね。ニューヨークが屍の世界なら、ディズニーは夢の国。誰もが幸せになる世界だったんです。なんだろうこれ、同じ国だろうかと思って。ああやっぱり自分はここがいい、ここを目指したいなと思いました。

ディズニーが必要とされた理由

そして、その時気が付いたんです。そうか、アメリカはああいう屍の世界だから、こういう夢と魔法の国が必然的に必要だったんだ。これでバランスを取ってるんだと。つまりウォルトはたぶん、アメリカで傷ついた人たちの受け皿をここで作ったんだなと思いました。それがディズニーの源流だっていうのを直感で感じたんですよ。

それで、次の面接でそれを話したら、ディズニーの面接官がすごく感激してくれて、それで受かったんです。だから、やっぱり自分でその場に行って感じてみないとダメですね。後に、私はグアムでティファニーの支配人になりましたので、次にニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングに立った時は、ティファニーの支配人として、ビジネスで立ちました。だからどちらの夢も叶えることができたのです。

ー ティファニーの支配人になるきっかけというのは?

当時、私は三越の日本橋本店で、一介の平社員として働いていたんです。異動の時期でもないのに突然辞令がでて、「実は海外です。グアムで支配人です。」って言うんですよ。海外の支配人っていうのは、当時の三越では部長職なんです。ヒラから部長職って、ありえないじゃないですか。

事情を聞いたら、前の支配人が地元の社員からボイコットにあって、強制送還されたというのです。で、後釜がいない。この時期、後釜をするのはミッションがすごく大変なんですよ。チームビルディングしていかないといけないし、雰囲気を作っていかないといけない。今思うと、会社がかけてくれたんですね、私に。

それでグアムに行ったのが、私のリーダーとしての最初の仕事となったわけですが、『結果を出すリーダーの選択』には、そのときのことを書きました。

結果を出すリーダーの選択

ー この本、すごく読みやすいと思います。

こういうことって、ほんとはシンプルなんですよ。いくらでも難しく書けますし、心理学だとか、いろいろ書いてる本もありますけど、現場において、ロジックをいちいち意識しながらそれを当てはめてやるっていうことは、ないですよね。もっと動いてるものだし、もっと泥臭いものじゃないですか。だから難しいことを書くより、自分の体験を書いたほうがいいと思ったんです。

ー 最近は、目に見えるノウハウとか、枝葉の部分にばかり意識を持っていかれてることが多い気がします。

ええ。そういう、明日からすぐ使えることをお話してくださいっていうオファーも多いです。

ー でも私の中では、もっとベーシックなものがあって、そのうえで、そういうノウハウが生きてくると思うのですが。そういう意味でもこの本は、読みやすいんだけど、本質的な部分がバシバシ書いてありますね。

ありがとうございます。うわべだけ読めばさっと読めちゃうけど、どこまで深く読むかはその人次第だと思います。その裏にある意味とか、一個一個の奥に何があるのかを深く読み取っていただけたらうれしいですね。

シンプルなことほどやれていないという現実

ー みんな知ってるシンプルなことだからこそ難しい。本の中でおっしゃってるように、自分が知ってるということと、やれてるということは、全く別のことだと思うんですよね。

シンプルなことほど、案外できてない。当たり前のことを徹底して、しかも継続して揺るぎなくやっていくと、当たり前じゃなくなりますよね。「チームでとか言ったって、そんなの理想ですよ。」って言う人もいますが、じゃあ本当に、本腰入れてそこまで徹底してやったことがありますかって聞くと、大体やったことがないんです。

- 本書ではきちんと読み手を考えさせるような仕掛けがあるように感じましたが?

『結果を出すリーダーの選択』は、出版社の意向で、選択シリーズにしてくれって言われたんです。例えば、チーム力を高めるのはどっちって比較して、論理的な説明うまいほうがリーダーとしてはいいんだよっていう、結論を出すような。

でも、読んでいただくとお分かりですが、私、結論出してないんです。どっちもありなんですよ。ずるいでしょ。普通こういう本を買う人って、どっちかはっきりしてくれよって買うんだけど。
全部シチュエーションが違うっていうことなんです。その時置かれた企業の状況と、人員の関係性によって違ってくるんですよ。大事なのは、リーダーが選択できる力量を持つということです。そこが大事だと伝えたくて、あえて結論を出してないわけです。だから、ズルい作り方だなあと思うんです。

それに、プロローグが非常に長くて、58ページ使ってる。ありえないですよね。でも実はここがベースなんです。大事なのはこの根っこの部分ですね。

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答えを自分で導き出す本

ー プロローグから、いつの間にか対比に変わっていたという感じで、読みやすかったです。

ありがとうございます。そういうふうに書くの、苦心しました。若いリーダーたちは、どっちか明快にするのを求めるので、それは外せないということだったんです。たとえば聞き上手か語り上手かどっちがいいかというと、どっちもある。ただ聞けばいいって話じゃないし、やっぱり語れないといけないし、本当にケースバイケースなのですが、今は聞くべきか語るべきかっていうそこを判断し、状況に合わせてそれをやれるのがリーダー、という選択なんですよね。

ー 実は私も読ませていただきながら、聞くか語るかで、作者はどっちと決めるだろうかと思って読んでたんですよ。まんまとはまってしまいました。

実際やってきて奥が分かってる方でないと、ズルいなと思うかもしれませんね。でもそこは、書いてある内容が何を意味するんだろうって、そこを考えてもらって、気づいてもらうものなんですよ。こうしろという本じゃなくて、気づきを与える本なんです。

本を通して自らを反芻する

ー 自分のことを振り返って、考えさせられましたね。人にやれって言ってるけど、人の話ちゃんと聞けてるのか。その後のフォローはちゃんとできてるのか。できなかったことに対しては、言ったはずだといって、相手のせいにしてなかっただろうかとか。

自分が関心のある時だけ聞いて、フォローを入れない。それは相手本位ではないですよね 。例えば、うちは社長室をオープンにしてるから、いつでも来いよっていったって、気を使うし、誰も話しに行けないですよ。そっちが降りてきてくれないとね。

ー そんなリーダーのあり方をみると、なんかちょっと痛いなと思うところもありますね。

そう思っていただければいいんです。人はそのつもりはなくても、たいてい人のせいにしてしまう。私も含めて人というのは完璧ではないのでね。でも振り返ってみて、こういうとこあったなあ、ちょっと反省しないといけないなって気づけば、それでいいと思うんですよ。

意識を立てておかないと、私も含めて人間は、やっぱりそちらに流れてしまいます。そういうもんです、人の意識っていうのは。だからそこで、そうではない心の癖をつけるような意識を常にトレーニングしてないと。
だからこれは心の力を鍛える本でもあるんですよね。筋力と同じで、心の力も鍛えていけば、だんだんそうなっていきます。ただそもそも、そこを鍛えようという発想がない。どうやったらいいかもわからない。

小手先に頼らない本物の魅力とは

― そうですよね。特に営業トークとかは、やっぱりノウハウにばかり目がいきがちというか。

でもおっしゃったように、この人小手先じゃなくて深いなと思ったら、営業は後でついてきますよ。やっぱり人となり。人間的に魅力的かどうかですよね、そこはもう、根っこのコアの部分だから。年を重ねれば重ねるほど、それはすごく感じます。 若い時代は、がむしゃらな部分もあっていいんです。私も散々それでやってきたから。でも結局のところ、やっていくうちにそうではないというのがだんだん見えてくる。これはもう、人に言われるのではなくて、自分で気づくしかないですよね。

講演を聞いて学ぶのもいいけど、人は人によって磨かれるものです。結局実際に人と会いながら、自分が体験するなかでしか磨けないんですよね。自らの体験の足跡の中に、どれだけ気づきがあるか。実はいろんなことを体験してるんです。でも上辺だけで見てるんで、ちょっと過ぎちゃうと気づかないで終わってしまう。自分が歩いてきた軌跡の中に、気づくべき宝物は埋まってるんですよね。年を重ねるってそういうことだと思う。その当時分かんなかったことが見えるようになってきます。

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自分が何を感じているかを理解する

- 最後になりますが、今自分が思ってることを形にしてあげられない、例えばありがとうを形にするとか、目に見えるような形で伝えるようなことが苦手な人も多いと思うんですけれども、それを相手に伝わるようにするには、どうすればよいでしょうか。

まず全体として大事なのは、自分は今何を感じてるか、思ってるかというのを、ちゃんと掴むことですね。なんとなく感じてるだけでは、なかなか言葉に変換できない。それが何なんだろう。自分の今のこの気持ちは何なんだろう。そこがあいまいな場合が多いんです。

それから、感じるをカタチにするということですよ。ミュージシャンが音としてカタチにしてる。ある人は絵でカタチにしてる。全部、感じるをカタチにしてるんですね。大事なのはまずアンテナを伸ばしてみることです。そして何を感じているのかっていうのを、自分でしっかり掴み取ってみることです。そしてその中で、じゃあ ありがとうという言葉だったらその感じたものを表現として、ありがとうってシンプルに相手に伝えてください。

だから伝わらないというのは、自分自身がちゃんとまず捉えてないからだと思います。何を感じてるか、そもそも自分が自分の思いをわかってない。そこからだと思いますよ。

ー 本当にその通りです。何も感じ切れてないんですよね。今何をしようと思ってるのか、自分がどこに行きたいのかも、本当に不明確な人が多い。

それが明解になっていったら、不器用な言葉でも伝わりますよ。どうしたら伝わるかという伝え方を学ぶのではなくて、もっと、自分が何を思ってるか、そこを掴めば、結果的に言い方はどうであれ、相手には伝わる。必ず思いは伝わります。でもそもそも自分が、自分自身の思いをちゃんと掴んでないと、それは伝わらないですよね。掴んでないんだもの。そこが一番原因だというような気がします。

編集後記

『結果を出すリーダーの選択』では、経験が若いリーダーにメッセージということですが、それ以外の多くの方にも読んでほしい本だと感じました。例えば専業主婦にとっても家庭という社会があり、お付き合いがあるわけですが、その小さな社会で生きていくうえでのヒントがちりばめられています。決してげきを飛ばしたり、上の方にある目標をポンと提示するだけではなく、静かに、繰り返し繰り返し、大切なことを語り掛けてきます。とても具体的に自分のことを思い起こさせる。

それは上田さんの言葉が、経験に基づくものであるからこそ、読者は素直に受け入れられるものと思います。上田さんが、決して偉ぶることなく、経験を積んでこられたことが伝わってくるので、先輩の背中を見て、読者は見習おうという心持になれます。読者のことを気遣いながら書かれていることも感じられます。この本に出合えたことで、楽になれた部分がたくさんあります。(弊社編集が本書の感想を編集後記として記載させていただきました。)

【略歴】
上田比呂志(うえだ・ひろし)
大正時代に創業の料亭・橘家の長男として生まれ、幼少から女将である祖母から「おもてなし」のいろはを教わり育つ。大学卒業後、三越に入社。日本橋本店にて、主に企画、販促に従事。その後店舗開発を担当。社内研修制度に応募し、全国の三越約12,000名の中の11人に選出。フロリダ ディズニー・ワールドにてフェローシッププログラムに参加し、1年間、ディズニーマネジメント(ディズニーメソッド)を学ぶ。卒業後、グアム三越社長兼ティファニーブティック支配人、フロリダディズニー・ワールド エプコットセンター・ジャパンパビリオンディレクター(取締役)などを務め、2005年に三越を退社。料亭のおもてなし精神や、ディズニーメソッドを取り入れた独自のコーチングスタイルを確立し、講演、企業研修、執筆、パーソナルコーチングを中心に精力的に活動中である。
著書に『ディズニーと三越で学んできた 日本人にしかできない「気づかい」の習慣』(クロスメディア・パブリッシング)、『「気がきく人」の習慣』(アスコム)などがある。

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