ビジネスメール教育の第一人者、平野友朗氏のメールと時間管理のテクニックで、仕事はすぐにラクになる

ビジネスメール教育の第一人者、平野友朗氏のメールと時間管理のテクニックで、仕事はすぐにラクになる

株式会社アイ・コミュニケーション 代表の平野友朗氏は、ビジネスメールの専門家。メールを中心としたコミュニケーションや時間管理について、数々の講演や執筆を行っています。さらにこのほど『ビジネスを強力にバックアップするメールテクニック、ビジネスメールの書き方送り方』改訂新版が発売されました。その内容の一端をご紹介いただきながら、平野氏の根底にある考え方を、とことんお話しいただきます。

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会社員時代の反省が時間管理のきっかけに

― 書籍にもありますが、ビジネスを進めていく上で効率や時間はものすごく重要になってきますね。

私は、「残業ばかりの生活を変えて、自由になりたい」と思って独立しました。しかし起業したての頃は24時間365日働く生活が続いていて、全然労働時間が減らない。「自分はなんで独立したんだろう」と思いましたね。

実は、これは会社員の時に時間管理を学んでいなかったのが大きかった。会社員の時は上司から仕事を振られないためにはどうしたらいいか、いかに自分をセーブして仕事をするかばかり考えていました。だから自分のキャパが広がらなかった。そんな状態で独立して、仕事がたくさん入ってきてしまったので、時間を管理することができなくなっていたのです。

最終的には、会社員時代よりも不健康になり、このままでは長生きできないと確認するようになりました。そんな経験から、「自分だけでなくみんなが健康でいるためには、もっと効率を上げて、無駄な仕事をやめればいいのでは」と考えるようになりました。

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独立してからは、原因を見つけて改善

仕事の効率を上げるためにはどうするか。まずは手帳とか三色ボールペンとか付箋とか、そういうツールを使ってみました。でも面倒くさくて全然うまくいかない。どうしようと考えていく中で、だんだん自分なりのやり方が見えてきた感じです。

メール一つにしてもどうやったら返事がもらえるかを突き詰めていくとレベルが上がっていく。納期を守れない体質だったのを、一つひとつ原因を見つけて改善することを繰り返していたら、「あれ、いつも定時に帰れるじゃないか。土日も働かなくていいじゃないか」というふうに変わっていった感じです。ですから、皆さんにもぜひこのノウハウを共有していただきたいと思っているのです。

メールのコツがわかれば時短ができる

無駄な時間を使っていることに気づかない人も多いです。メールの研修のときに、後ろから見ていると、書いては消し書いては消し、10分間かけてやっと10行ぐらいとか。「宛名に会社名あったほうがいいかな」と細かいところで悩んでいる。でもこういうメールは1分で書けるんです。決まった書き方を覚えておけば効率が上がるはずですよね。

― メールに限らず、文章を書くのが苦手という人が多いのかもしれませんね。

長文を書こうと思わず、100文字ぐらいだったら、30、30、40ぐらいに分割すると、推敲(すいこう)がしやすいです。普段から短文で書く癖をつけるといいと思います。ビジネスの世界はうまい文章を書く必要はありません。いかに伝わりやすくて、わかりやすい文章を早く正確に作るか。そこだけなんですよ。

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時間管理はパズルの入れ替え、締め切りはデッドライン

― 私たちから見ると平野さんはすごい仕事量を短時間に凝縮して、一分一秒をきちんとやられているイメージがあります。

そんなにがっつりやっているわけではなく、セミナーが終わってからお客さんとずっと30分ぐらい話したりと、普通にこなしています。枠の中で自分の仕事を定義付けているんです。2時間のセミナーは動かせないから、その後の休憩で何をしようかとか。来客の前に30分あるから、明日の分のメルマガを書いちゃおうとか。

仕事をパズルと捉えていて、「自分だったら何が何分でできるかというのを全部把握しているんですよ。そのパズルを全部入れ替えて仕事を前倒しできれば、明日1日休みを取ることも可能になります。

締め切りをもっとシビアに意識しよう

書籍『仕事を高速化する「時間割」の作り方』に書きましたが、多くの人が締め切りを理解していないんです。締め切りはデッドラインです。「これを超えたら殺される」くらいの覚悟で、締め切りと向き合わないといけません。超えても1日2日ぐらいの話なんですが、体質的に守れない。それは締め切りを見て仕事をしているからなんです。

提出日が来週だったら来週やろうとする。でも来週やろうと認識していると、頭にいつも残っていて、ふとした瞬間に「あの書類出さないといけないな」と気になったりする。こういうふうに無駄な意識を持って行かれるのが嫌なので、来たらすぐやるようにしています。献本していただいたらすぐ読む。そうしないと忘れて「申し訳ないです」ということになりますから。

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「あっ」は時間管理ができていない証拠

― 本の中でも「『あっ』っていう言葉を使うな」と書いてありましたね。

皆さんの身の回りで、仕事中に「あっ、やばい、思い出した」という人はいませんか? そういう人は仕事が管理できていないんです。やることを思い出すのは完全にノイズで、自分の行動を邪魔しているだけです。

『仕事を高速化する「時間割」の作り方』の本の中でも「衝動の反応をなくそう」と書いていますが、「あっ」と思い出して、今やらなくてはいけなくなると、今やっていたことができなくなる。

すると仕事が後ろにずれ込み、期限を守れなくて怒られ、お詫びをする。この「スケジュールを組み直してほしい」とお願いのメールを送ることも、無駄な時間でしかない。そもそもこういう事態が発生しなければいいわけです。発生させないことに向き合わないといけません。

結局すぐやるのがベスト

― 締め切りを守れない人に、いいアドバイスはありますか?

締め切りの日ぎりぎりに始めると、その日に病気になったら終わりです。その日にすごくいい案件が発生しても対応できないし、いいことが何もない。結局、合理的に考えたら早くやるのがベストで、それ以外に答えがないんです。

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ギリギリですり抜ける達成感は不要

ただ、 作業興奮というのがあります。直前でできたから「自分はすごい!」みたいな。そういうのでずっと乗り越えてきている人は、締め切りがあるから頑張れる。やりきった感があって、その後飲みに行ったりしたら、達成感でいっぱいなわけですよ。でもわざわざそうする必要はないですよね。

― 結局やるんだったら最初から本気でやれという話ですよね。

締め切りを把握すると、それまでの期間の中でだらだらと作業時間が延びてしまう。例えばこの本を書いて出版社に送ろうとすると、最初はちょっと考えて、その後ちょっとエンジンがかかってくる感じになる。10日間あると思うとまるまる使っちゃうんです。

褒められるラインを締め切りにしよう

自分の場合は、称賛(しょうさん)ラインという、「このタイミングでやったら編集者が褒めてくれるな」というラインを設けています。それを表向きの締め切りとして認識しているので、デッドラインは見ないんです。

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― 設定された締め切りよりも早く返したりすると、すごく喜んでもらえますよね。

同じことをしても早かったら褒められるし、遅かったら「普通だよね」という評価しかされない。それなら早くやらない理由はないですね。

唯一のデメリットとしては、会社員の方の場合は、仕事が出来すぎるとみんなにどんどん仕事を振られます。自分のキャパが広がると考えればいいことですが、でもあまりひどい場合は辞めちゃえばいいと思いますね。

遅刻と居眠りは時間管理ができていない証拠

締め切りが守れない人は、遅刻するのも平気です。昔は自分もよく遅刻していましたけど、でも講演には1回も遅刻したことがないわけですよ。 講演の仕事は「絶対に遅刻をしてはいけないという気持ちがあるからです。でも会社には遅刻する。それは会社をなめているからです。そういう感覚だったんでしょうね。

今は研修で、「時間を守れない人は駄目です、セミナーに遅刻するとかありえない」と言っています。いろんな理由があるとは思いますが、そこから変わってくれればいいですね。

― 厳しい意見ですね。でも、部外者に怒られることはあまりないから、それはそれで衝撃がありますよね。

起業家にとって本当に必要なのは時間を守ること。スキルどうこうではなくて、返信が早いとか、時間を守るとか、時間感覚だと思うんです。

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居眠りは将来の自分に返ってくる

時間管理の社員研修をやると、居眠りをする人もいます。自分の時間をどう使うかは自分次第ですし、私は、寝たい人は寝ていいけれども、今日ちゃんと学習して明日からの仕事を変えよう、密度を高くしようと考えるなら、起きて聞いていたほうがいいでしょうという話をします。

これは、実は昔の自分に言いたいことなんですけれどもね。絶対に一番後ろの席で寝ていましたから。でもその結果がどうだったかはわかっています。そこで寝るという選択をするのか、話をまじめに聞いて、自分の中に落とし込むのかで、全然違ってくるんです。

効率よく仕事をするために実践すること

― 自分の作業に対する時間の把握や見積もりは、どう意識付けしていくのがいいですか?

まず作業時間を見積もる

まず自分が仕事をするのに、何にどれだけ時間がかかるのか、測定することからスタートです。今日はいつからいつまで何をやったか全部細かく書いていって、1週間ぐらい続けると、なんとなくこうかなという感覚が見えてくる。

「自分はメルマガ書くのが45分だ、じゃあ今から45分メルマガ書くぞ」ということができるようになってきます。枠を決めて、その枠の中でやりきるということが大事なんです。労働時間が決まっているわけですから、「気づいたら夜になっていた」じゃまずいわけです。

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本を書くなら、まず手順を考えて所要時間を見積もる。私の場合は1時間で2~3,000字は書けるかなと。10万文字と考えたら、50時間です。5時間を10日やれば書ける。根詰めてやったら5日でできるだろうと。

そして納期を聞いて、そこまでに50時間取れれば受けます。受けた瞬間に自分のカレンダーに「執筆」と埋めていって、他に講演とかの依頼が来ても、スケジュールの変更な不可能なものは断るようにします。

そうやって自分の予定を組んでおけば、朝出社したら今日の時間割はもう決まっているので、その通りにこなせば予定通り18時に帰れます。その繰り返しなんです。会社員の方だったら見積もった時間の1.2倍ぐらいで枠を作っておくといいですね。来客対応とか、電話の対応とか、ちょっとした業務も全部こなせるはずです。

時間割に無理は禁物

物理的にこなせないくらいの案件を抱えている人がいますが、それはやめたほうがいいです。外注するとか断るとかしないとみんなに迷惑かけるし、自分の評価も落ちてしまいます。

起業したばかりの頃はは、飲みに行っても帰ってきたら仕事をしたりしていました。今は無理なく時間割を作ってそれを把握しているから、業務量が何倍も多くなったのに、効率が上がって労働時間が減っている感じです。たまに残業するとしたら、スタッフの手伝いだけです。

発注先が無理をしていて最終的に「できませんでした」というケースがありましたので、発注先の進捗状況を把握するのも仕事の一つにしています。

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メールテクニックや時間管理が学べるツール

― お話を聞いて、ぜひ直接学びの場に足を運びたいなと思うんですが、そういう場合はどうすればいいですか?

学習に高額な費用は要らない

弊社(株式会社アイ・コミュニケーション)では、ビジネスメールのセミナーを月に10回から20回ぐらいやっていて、そのうち4回か5回は私が講師を務めています。各セミナーの詳細は、アイ・コミュニケーションのサイトでご覧いただくことができます。

他には、今メルマガの読者さんが2万人くらいいらっしゃるんですが、なかなか全ての方の質問対応やサポートはできません。そこで、「実践塾シェアクラブ」というものをつくり、そちらの有料会員になっていただいた方を優先してサービスを行っています。月1,980円のプランでも多くのコンテンツが聞けますし、Zoomシェア会で話をしたり、メールの質問にも全てお答えしています。明日も会員さんとご飯に行きますけれども、お会いしてお話しする機会を増やしています。

― 会員になると、たくさん動画を見られるんですよね。

5分のワンポイント動画が120本上がっていて、まだまだどんどん増えています。全部聞いたら100%元が取れると思いますよ。

世間ではもっと楽に学べるものがないかとか、高いもののほうが効果があるんじゃないかといって、半年で60万円とか100万円という塾に入る人もいます。でも、実践塾シェアクラブだけで十分同じ効果を出せるんじゃないかなと思うんです。あとは本人次第じゃないかなと。

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通ってきた道を体系化して教える

― 平野さんの実績は厚みがありますからね。

17年ぐらい、頑張って実績を積んできました。自分でやってきたからこそ教えられるんです。例えば本を1冊書いて「出版コンサルだ」と言えなくもないのですが、やはり10冊くらい出してから「出版に詳しくなってきたから」ということで教えられる。メディアにも1,000回以上出ているので、どうやったらメディアに出られるのかも教えられる。社団法人をつくって商標を取ったり、いろんなことをやってきたので、自分が通ってきた道は体系化できます。だから、スモールビジネスは割と得意なんです。

無駄を徹底的に省く。そこから生まれた仕事術

いま自分の中で旬の話題は、『ビジネスを強力にバックアップするメールテクニック ビジネスメールの書き方送り方』(あさ出版)改訂版が2月14日に発売されたことです。

仕事のメールは、LINEスタンプのように「察してください」という要素は要りません。正しくはっきり伝えることが大切で、「16時ぐらいに来てもらえたらいいな…」ではまずいわけです。

弊社がメール教育をやっている理由は、無駄が嫌だからです。メールのルールをみんなが知っていたら悩まず時間が短縮できて、早く帰ることができる。やりたいことができたり、家庭も円満になるはずです。無駄に働くことをなくし、生産性を上げるためにも、ぜひたくさんの方に読んでいただきたいと思っています。

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【略歴】
平野友朗(ひらの・ともあき)
一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事
株式会社アイ・コミュニケーション代表取締役

1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類(認知心理学専攻)卒業後、広告代理店勤務を経てアイ・コミュニケーション設立。ビジネスメールスキルの標準化を目指し、日本初のビジネスメール教育事業を立ち上げる。個人のメールスキル向上指導、組織のメールのルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などを手がける。官公庁、企業、学校、団体、商工会議所などへのコンサルティングや講演・研修回数は年間120回を超える。2013年に、一般社団法人日本ビジネスメール協会を設立。認定講師を養成し、ビジネスメールの教育者を日本全国に送り出している。さらに「ビジネスメール実務検定試験」を立ち上げ、ビジネスメール教育の普及に尽力している。東京を中心に日本全国でビジネスメールの公開セミナーを毎月10回以上開催中。

一般社団法人日本ビジネスメール協会
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