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ハラスメント問題対策の第一人者が提唱する「かりてきたねこ」理論とは?

ハラスメント問題対策の第一人者が提唱する「かりてきたねこ」理論とは?

ハラスメント問題が表面化している昨今、かつてのやり方で推し進めようとする経営者は、重大なリスクを抱えているといいます。現代社会に受け入れられつつ、成果を上げる経営に必要なものとは何か?日本を代表するビジネスコーチで、産業カウンセラーでもある帝京平成大学現代ライフ学部教授、株式会社ライフバランスマネジメント研究所代表、渡部卓(わたなべたかし)氏に、変化する社会を生き抜く秘訣をとことん語っていただきます。

世界を飛び回るような仕事がしたい

大学では、麻雀とか山登りとかばっかりやってて、あまり勉強をしなかったんですが、英語だけは真面目にやったんですよ。そしたら、論文が入賞するぐらい英語が得意になったんです。それで、世界を飛び回るような仕事をやりたいと思って、モービル石油に就職したんです。

言葉が通じない世界へ

ところが、当時の人事部長から、「営業が分かんなくてグローバルも何もない。地場の営業をまず見てこい。そこでものになったらグローバルに行かせてやる」と言われたんです。それで、まず仙台の営業支店に行くことになったんです。私は、両親は福島県南相馬市出身ですけど、育ちは神奈川なんです。

仙台に初めて行って、まず言葉が通じない。青森とか秋田のお客さんからの電話を受けた時なんて、方言と訛りが強くて、何言っているのかわからず泣きたくなりました。当時は新幹線も無くて、上野から特急で4時間15分かかりました。

最初のうちは地方の営業なんか嫌だなと思っていたし、今考えるとどうしようもない営業マンだったんですが、仕事では一回も怒られた記憶はありません。今自分が営業課長だったら怒鳴りつけるような新人だったのに。先輩や課長さん、それに東北人はハートのある熱い人たちで、辛抱して育ててくれた。そういう経験が、今いろいろ雑誌や新聞の連載をやったり本も出したりしていますけど、上司と部下との関係の話をするのに生きているのかなと思います。

この4月に出版した「人が集まる職場、人が逃げる職場」という題名をつけた本も、その辺の事を盛り込んだのですが、とても売れ行きが良くて、ヤフーニュースでも5月だけで4回もニュース記事で毎週のように紹介されています。

簿記を勉強したら、営業が見えてきた

― 当時はどんな営業をされていたんですか?

月曜日に支店に行って、火、水、木、金と営業車を運転して自分の系列のガソリンスタンドを回ったり、軽油を使うトラックの会社や、あと重油を使う工場みたいなところに営業に行きました。物を売る、特に石油を売るということは、スタンドの経営が分かってないと売れないんです。値段を下げれば量は売れるんですけど、そうすると自分の首を絞めちゃいます。

営業のからくりというのは大学では教えてくれませんでした。そこで私がやったのは簿記です。最初簿記の三級をとったら、お店の経営が見えてきて、結構スタンドのマネージャーに相談を受けるようになった。ただ簿記3級ではお店の経営はわかるけど、その上のスタンドを統括する会社の全体の経営像を理解するとなると知識が足りない。ということで日商簿記二級(商業・工業)も取りました。

そうすると経営者は、私は出入りの営業マンなのに「どう思う?」って言って財務諸表や資金繰り表まで出してくるんです。というよりは、経営の基本から教えてくれるんですね。きつくなったらこうやって担保を出して信用金庫から融資を受けて資金繰りするんだとか、手形というのはこうだとか。営業やりながら、ビジネススクールのケーススタディでの教育受けてるみたいでした。

簿記会計がしっかりしている中小企業は強い

そこで思ったのは、成功している中小企業の社長は大学のビジネススクールでも教えられるくらいレベルが高いなと。私も大きな会社の事業部長とかもやりましたけど、大企業より中小企業の経営者のほうがよっぽど経営の苦楽や本質を分かっているなと。

ですから私は、中小企業の経営者を尊敬してます。ただ、中小企業やベンチャーでも勢いだけで潰れてしまうところも多い。やっぱり、生き残っているのは経営者が簿記、経理、会計に強いという印象です。

スモールビジネスって、7~8割はうまくいかず、5年以上もつ会社って1割もない。その失敗する要因を見ていくと、やっぱり資金繰りというか、簿記がうまくできてない。ちょっとうまくいってお金が入ると、接待とかに「ぱーっと」使っちゃったり、派手なイベントやったりして失敗してる。アルコール好きを自認する経営者は本当に注意が必要です。(笑)うまくいってる人は、ケチじゃなくて、簿記会計がちゃんとしてるんです。ここはしっかり勉強しないと。

昔のお付き合いの感覚が今ではパワハラに

東北で営業していた時、ガソリンスタンド経営しているのは土地の名士が多くてね。昔は“いろり”で酒を飲みながら話してると、「泊まってけ」って言うんですよ。「ホテルキャンセルして俺ん家泊まってけっ!」て(笑)

泊まりに行くと奥さんいたり娘さんいたりしてね。娘も良い年だから、だれか大学の同級生を紹介してくれとか。お酒の時はご返杯とかね。私たちの世代は、そういうお付き合いをしてきたんです。でも今の時代、これはもうアルハラ(アルコールハラスメント)ですよね。

ハラスメントと酒癖で、会社は失敗する

私は大学で若い人とも接してるので、若い人の気持ちも分かります。今、よくセクハラ問題がニュースになっていますが、あんなエリートで頭のいい人でもわかんないこと、それがハラスメントなんです。

スモールビジネスでもそうです。普段はいい人なんだけど、酒飲むと人が変わる人がいる。これでスモールビジネスの社長がかぶさると、お山の大将の人も多いから大抵は失敗しますね。経営者からのハラスメントだって、昔の社員は泣き寝入りで終わってたものが、今は訴えられますからね。

大企業は今の時代ではしょっちゅう研修などでハラスメント防止の啓発をしてるので分かってきていますが、中小企業とかスモールビジネスの経営者目指す人、それに官庁や大企業でヒラメのようの部下に囲まれて上に上り詰めたひとは、そういうところの感性がちょっとずれてる人が多い。ニュースにでてくるケースなどを見れば一目瞭然です。

ハラスメントはセクハラだけじゃなくて、今、多いのがパワハラなんです。昔はベンチャーなどでは創業社長の夢に社員もついていくっていうことで、朝一番に行ったら社員が徹夜して床に寝てたとか、そんな苦楽の成果でベンチャーがあるから成功するっていうエピソードも美談の時代もありましたけど、これって現代では正直夢物語でしょう。今それやるとベンチャーでも社員から訴えられますよね。

時代と場所が違うと、捉え方は変わる

私自身、転職して気づいたことがあります。転職すると、会社ってガラッと変わりますよね。例えば、ネクタイしてないと「ちゃんとしてないと信用されないぞ」といって怒られていたものが、転職したら「ネクタイなんかやってたら偉そうに見えるから、社員ついてこないよね」といって、ネクタイ取れって社長に言われたんですよ。なるほど、こういう社長もいるんだと。両方とも正しいんです。

ペプシコーラの時代ですがアメリカの本社勤務になって、日本にいたときのように残業して大きなビルで最後まで残ってガンガン働いていたら、夜だけ社内を巡回する黒人の大きなガードマンたちに目をつけられました。なんか悪いことやってるんじゃないかって。日本とは違う見方がされるんですよ。(笑)

30年前、40年前はマイホームパパは男性としてダメだ、みたいな考え方が主流でしたけど、今は育メンといってマイホームパパのほうが上。その方が若い人がついていく傾向が強い。

我々の世代というのは、そういう変化というのを経験してきたんで言えるのですが、スモールビジネスで失敗する人というのは、自信過剰というか多面的な見方ができない事が多いんです。それができない限り、成功は難しいなと思います。賢い若手や跡継ぎの経営者はそうならないようにコーチをつけます。

これはアメリカでは当たり前なのですが、日本ではコーチというと、野球やサッカーのコーチを思い浮かべて、ビジネスコーチは想像がつかない。これが日本の経営がグローバルでは競争力がついていかない原因でもあるのです。

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ハラスメントのリスクを軽視すると事故につながる

メンタル、ストレス、ハラスメント。これは会社にとって、非常にリスクになるわけなんです。ですから勢いだけで会社を大きくしようと頑張ろうとした時に、思わぬ落とし穴がある。これを経営者が軽視すると、事故につながっていきます。

だけどベンチャーとかスタートアップは、余裕はなくてそこまで行かないです。今50人以上の会社は、ストレスチェックというのをやらないと法律違反ですが、ベンチャーとかはやらないですよ。だけど、リスクはベンチャーの方がよほど高いんです。昔みたいに泣き寝入りっていうのがないんです。ベンチャーだから「そんなこと言ってられない!」「ガンガン行くぜ!」みたいなノリの良い経営者が、すごいリスクを抱えてる。

先日もインターンの女子学生たちを飲み会に誘って、カラオケでデュエットを強要したり、両手に花などといって写メの自撮りをしてフェースブックにアップしたベンチャーの社長が後日、厳重注意の事態となっています。昔は頭をかいて謝れば済んだような事だとの認識がぬけないのです。

すぐに噂になり採用にも悪影響があります。そこはやっぱり、中小やベンチャーでもしっかり経営者セミナーにも行くとか、個人でもコーチングをプロから受けた方がいいと思います。トップクラスのスポーツ選手や芸能人も米国ではワークライフコーチがついています。アメリカも昔は多かったのですが、今は、お酒のトラブルやハラスメントなどで大きな問題を起こすことが少ないというのが現状です。

中国でもメンタル対策は進んでいる

これ中国も同じなんですよ。私は中国の大学の大学でも正規の授業で教えてましたが、中国は一人っ子が多いので、ある意味日本の若者以上に打たれ弱いんです。私の友人の会社でもあったのですが、ちょっと大声で叱られただけで行方不明になっちゃったりします。特に中国では社員が自殺すると中国では遺族と社会的な糾弾がとてもすごいのです。

ですので中国企業の経営者たちはメンタル問題や自殺などが発生するとトップの辞任につながるので恐々とするのです。ですから、ある意味、日本より中国の方がメンタル対策が進んでいるんですよ。私みたいな50後半以降の人達っていうのは、その変の変化がわかっていないと大失敗しますね。中国でも中小企業の社長たちはビジネスコーチをつけるようになっています。

会社に入ってからの教育が大切

これは,従業員教育についてもいえることです。日本の大企業というのは、優秀な若手ばかりを採用していると思っているので、それで安心してあとは教育しないんですよ。トップの大学を出てる社員なんだからもう教育する必要ないだろうと、そのまま行ってしまうのです。

それで大きな間違いが起きる。アメリカの一流企業だと、トップのスタンフォードだとかハーバード大学の出身だろうが、入ってからものすごく企業が教育するんです。私が働いていたシスコ・システムズっていう会社も、今は非常に大きなIT企業なんですが、私が入った頃はベンチャーで小さかった。

それも、やっぱりなんでシスコ・システムズがトップクラスの学生や転職先として人気あったかというと、入ってから短期でも海外研修とか、出張、ワークショップなどで年に何度も、新人だけでなく部長クラスであっても、会社が勉強や研修のセッティングを社員のためにしているのです。接待交際費などはゼロに近いが、教育研修などでは有名な先生の社内セミナーなどをやって膨大な教育費を使っている。

そういう点では、中小企業とかベンチャーの社長というのは、確かに余裕はないんですけど、社員が「安心して働ける」というキーワードの元となるものが何かっていうのを、しっかり考えないといけません。

メンタル・ハラスメントのリスクを学ぶ人が成功する

父親がつくった40億の借金抱えて経営を引き継ぎ、そこから尋常でない努力と才覚で立て直したいまや講演でもひっぱりだこの有名な居酒屋チェーンの社長さんがいて、その経営の苦労中に私の講演会にも来てくれたんです。その社長さんはご自分は針のむしろのような生活の中でも、社員のためにメンタルとかハラスメントのリスクもしっかり社長が理解しようとしていたのです。

社長や店長が威張ってて、徒弟制度みたいな居酒屋がある中で、彼は、ちゃんと社員が安心して、勉強の機会の多い会社を再建しながらつくった。あれから借金を返して、今はすごい成功してますよね。やっぱりあの人は経営者の中でも別格に違うと思いましたね。「俺んとこは他には絶対負けねえぜ」とか、威勢だけで短期的には成功する人もいるんですけども、やっぱり何十億も借金を抱えたら返せないと思いますよね。それは私も同じですが。(笑)

若い人をリードするには、心意気だけではダメ

私のところには、おかげさまで取材依頼は毎月のようにありますし、毎年2冊ぐらいの出版依頼が来るんですが、やっぱりメンタルとかハラスメント、コーチングの話って、ニーズが多いんだろうなと思います。でも、専門の先生や精神科医の話だとどうも一般には難しくてわかんないらしいです。私の場合は職場の下からの目線で書いてるから、各方面からもう15年以上、継続してお話をいただけるのかなと思います。

経営者として、どういう風に自分の企業でそれを考えていくのかとか、若い人をどうリードしていくかというところが、すごく難しくなってきてる。それだけに、社長の心意気だけでは、やっぱり引っ張れない時代になってきてるのかなと思います。

ところが世の中に出てる経営についての雑誌を見ると、社長の心意気が大事だみたいな話とか、「俺はこんだけ苦労したんだ!」みたいな苦労話で終わっちゃってて。

苦労話は一回は聞くのも面白いんですけど、やっぱり社員とか若い人はついてこないですね。未来を、今を語らないとね。そうすると、やっぱり今は不安とかメンタルとかストレスとかハラスメントとかいうことの理解がトップにも大切になってくる。

- だからこそ、やっぱり経営者も安心して相談できる、渡部さんのような方がいるっていうのは、間違いなく心強い。

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若者を引きつけるキーワードは,安心と成長の実感

経営の雑誌って、どうしても売上がこれだけだとか、社員の数とか、「数」で自慢しますよね。そういうんじゃなくて、数とかで示せない、やっぱり見えないところにすごく価値があって、社員がどれだけ会社についてくるか。キーワードは安心と成長の実感ですね。

若者が安心できる職場とは

今、日本人の社会心理でのベースは実は不安なんです。不安に対して、安心できる職場を求めている。安心って何なのかというと、給料だとか、定年まで働けるとかではなくて、職場の人間関係なんがベースになるのです。

勘違いしていただきたくないのは、安心と甘さとは違うんです。「こんなのは頑張らなくていいんだよ」とか、「売り上げはほどほどでいいんだよ」みたいなのは、甘さです。そうではない。

良くある話ですが、「最近の若い奴は本当折れやすいよね。ちょっと怒っただけですぐめげるし、根性ないですよね」って、こういうこと言う人いますけど、これわかってないんです。言ってる本人こそが大抵パフォーマンス悪いです。今の若い人や学生は賢いし、非常に鋭いですよ。

その中で、じゃあ今の若者たちを引きつけようとするためにはどうすればよいか。これやっぱり甘えじゃなくて、職場での安心感、そして成長感なんですよね。厳しく叱るっていうのも、成長のためなのですが、注意が必要なのです。厳しく叱ってくれるような会社だから、自分で納得して安心できる、これは中年以上の幹部の発想です。いまは、「かりてきたねこ」で叱らないと失敗します。

そもそも叱ることに上司も慣れてないですし、若い部下も「叱られる」ことに慣れてないのです。 私も長い職場経験で、叱り上手な上司をみたことがありませんし、私もかつては激怒しながら叱った経験が何度もありますが、その結果が良かったことは数えるほどしかありません。部下が退職してしまう遠因になったこともあります。

どうすれば相手を傷つけず、効果的に叱ることができるのか。理想的には「優しく叱る」ためにはどう叱ったら良いのか。そのコツについて、私は管理職向けのセミナーやコーチングなどで、「かりてきたねこ」と表現して紹介しています。これは、次のとおり叱り方の7つのポイントの頭文字をとったものです。

か … 感情的にならない
り … 理由を話す
て … 手短に済ませる
き … キャラクター(性格や人格)に触れない
た … 他人と比較しない
ね … 根に持たない
こ … 個別に伝える

ひとつひとつ、解説していきましょう。

「か」感情的にならない

「怒る」と「叱る」は違います。部下を叱ろうとするとき、感情をそのままぶつけてしまうと、それは単に「怒る」だけになってしまいます。すぐ感情的にならず、まずは自分が部下のどんな行動、態度を改めてほしいと思っているのか、冷静に客観視することが大切です。

「り」理由を話す

客観視したうえで、なぜ叱るのか、相手に「理由を話す」ことも大切です。理由や目的を明確にせずに叱ってしまうと、部下に「上司に八つ当たりされた」「嫌われている」などといった誤解を抱かせてしまいます。

「て」手短に済ませる

くどくどと同じことを繰り返したり、芋づる式にそのほかの不満を並べたりするのもよくありません。叱るときはポイントを絞って「手短に済ませる」こと。そのためには、話を切り出す前に「10分ほど話したい」などと終わりを決めておくのも有効です。相手も「10分なら」と話を聞く体制に入りやすいですし、自分も「短く済ませよう」と意識するので、余計な叱責をせずに済むはずです。

「き」キャラクター(性格や人格)には触れない

部下の行動やミスを指摘はしても、「キャラクター(性格や人格)には触れない」ようにしましょう。とくに、その人のキャラクターを否定するような言い方は反発を招きます。たとえば、会議に遅刻することを「君はだらしがないから遅刻するんだ」と言ったり、ケアレスミスを「あなたはいつも不注意だ」と言ったりするのはNGです。

また、主語を「君」や「あなた」など2人称にすると、叱られているというより、責められていると感じる場合もあります。「【私は】君の遅刻が残念だ」「【私は】あなたにきちんと確認してほしいと思っているんだ」など、主語は「私」にして話すように意識するといいでしょう。

「た」他人と比較しない

他人と比較して叱られれば、誰でも自尊心が傷つきます。できている点を認めたり、褒めたりしたうえで、「(遅刻やミスなど)できていない点を改善すればもっと評価できる」といった言い方で伝えるといいでしょう。

「ね」根に持たない

部下を叱ったら、そのあとも引きずらず「根に持たない」こと。ミスをいつまでも覚えていて、ことあるごとに責めたり、懐疑的な態度を取ったりすれば、部下は「いつまでも許してもらえない」「自分は信頼されていない」と感じてしまいます。

「こ」個別に伝える

「周りに配慮して、個別に伝える」ことも大切です。同僚や後輩のいる場で叱ると、貝のように口を閉ざしてしまったり、歯向かってきたりすることが多いものです。叱るときは会議室などほかの人がいない場を設けるようにしましょう。

本の読者の方も言っていましたが「かりてきたねこ」で叱るなら普通には社員は辞めないと言っていました。この「かりてきたねこ」は地方の鉄道の会社が社内ポスターにしたくらい評判が良いです。

デキる経営者の共通点は、聞くのがうまいこと

世界のトップ企業の社長へのコーチングで有名なマーシャルゴールドスミスが言うには、すごい経営者の共通点というのは、しゃべるのより聞く方がうまいと。それを聞いて、なるほどなと思いましたね。私も東証の一部上場の社長さん含めて、経営者のコーチングをもう10年前からしているんですが、本当にデキる社長さんたちは、聞くのがうまいです。自分の自慢話とか苦労話とか一切言わないし、逆にその人格や経営方針からは教えられることが多いぐらいで。

今コーチング目指してる人は日本では多くて、結構若手の経営者や起業を目指すひとなんかもコーチングの研修会とかにも行かれてる人がいると思いますけど、管理職向けのコーチングってすごく勉強になるし、結構面白いと思います。セミナーの勉強だけでなく、コーチングを実際に3回でも、5回でも良いのでプロから受けてみるのが早道だと思います。すごく奥が深いです。

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カウンセリングマインドとコーチングマインド

私は今、コーチの資格とカウンセラーの資格を持っています。心理的な相談を受けるのがカウンセリングで、コーチングは、もう少し元気のある人に、より元気になってもらうとか、自分で夢を持っているけど方向性が見えない人に対して、話をしていくというものです。どちらも、あれやれこれやれと言わず、話を聞く、傾聴というところがベースなんですね。

コーチングだけではうまくいかない

スモールビジネスを始めようとする経営者って、割とコーチタイプが多いんですよ。ビジョンもはっきりしてるし、馬力もあるし、「俺についてこい」みたいなコーチはうまい。でも、「君はそんな風に悩んでいるんだ。わかるよ!それはほんとにつらいよね。」みたいな、カウンセリングができないんです。

中小企業とかベンチャーって、順調に成長の途中ですと社員も一緒に喜んでついてくるんです。だけど、やっぱり大企業と違って、どうしても途中でうまくいかなかった時に、経営者もカウンセラーの役割ができないと、会社がバラバラになってしまう。そこのところをうまくやってほしいなと思うわけです。多面的な見方ができないと成功が遠ざかる。

そういった意味ではスモールビジネスを目指すとか、自営業で独り立ちするときには、勉強しなきゃいけない量ってものすごくありますね。このときもコーチをつけているのと、無いのではかなり違ってくるのですが、その発想が日本には無いのです。

コーチとカウンセラーの両刀使いがニッチ

今これだけメンタルとかストレスとか言われていますけど、実は心理カウンセラーって資格は取得してもほとんどそれだけでは食べてけません。色々なところで認定をだしてもう何万人もいますから。

だからやっぱり、産業カウンセラーとビジネスコーチの両方ができるとか、そこまでやればニッチになるので、私みたいに、大企業の社長や役員クラス、もちろん中小企業の役員もいますが、そういう職場でのキーマンみたいな人にもコーチすることができるようになる。これはニッチだからであって恵まれているケースです。

カウンセラーをひと通り勉強するのに5年、実践で活用できるようになるには、さらに5年はかかるし、コーチングもなんだかんだ私もプロになるまでは15年はかかってますので。そこはやっぱり資格をとってからも経験が重要ですから時間はかかります。10年やると、やっと見えてくるみたいなことありますね。

ただ今申し上げたように、コーチもカウンセラーもそれぞれで大勢いるんで、そこを両方やる。そこが今、企業でカウンセラーやコーチとしてプロでやるには一番求められていますし、私がお勧めしたいなと思っているところです。どちらかのプロはいるのですが、両方とも使い分けられるプロの人って日本でも数えるほどしかいなくて、ただ、逆に言うとニーズは膨大なので、そういう人がこれから日本で増えて欲しいなと思ってますね。また私もそういう意思のあるひとには、コーチになって指導もしていかなくてはいけない役割があると思います。

スモールビジネス立ち上げる時にも、そういうニッチをどう探していくかというのは、大切なことだと思います。

【略歴】
渡部卓(わたなべ・たかし)
産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ。
帝京平成大学現代ライフ学部教授、(株)ライフバランスマネジメント研究所代表。

1979年早稲田大学政経学部卒。モービル石油入社後、コーネル大学で人事組織論を学び、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBA取得。
1990年日本ペプシコ入社、AOL、シスコシステムズ、ネットエイジを経て、2003年(株)ライフバランスマネジメント設立。
職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策の第一人者であり、講演・企業研修・コンサルティング・教育・メディア等における多数の実績を持つ。
『メンタルタフネス経営』『折れない心をつくる シンプルな習慣』『折れやすい部下の叱り方』(日本経済新聞出版社)、
『明日に疲れを持ち越さない プロフェッショナルの仕事術』『はたらく人のコンディショニング事典』(クロスメディア・パブリッシング)ほか著書・監修書多数。

株式会社ライフバランスマネジメント研究所

渡部卓出版書籍一覧