事業承継問題を解決する糸口を示す大きなヒントとは

事業承継問題を解決する糸口を示す大きなヒントとは

株式会社日本創生投資CEOとして、中小企業に対する事業再生、事業承継に関するバイアウト投資を行う傍ら、株式会社中小企業活性の取締役副社長を務め、事業再生支援、コンサルティングなどで幅広く活躍されている三戸政和(みとまさかず)さんに、ベストセラーの著書『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』や投資について、とことん聞き取らせていただきます。

社会的なインパクトのある生き方をする

― 著書『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』が、今ずいぶん売れています。この中のプロフィールに、兵庫の県議会議員をされて、その後、加古川市の市長選に出馬されたとありますが、どういった経緯で議員や市長選出馬されたのか、そのあたりからお伺いします。

1回きりの人生ですから、社会的なインパクトのある生き方をしようと考える中で、政治家が一番それにふさわしい生き方ではないかと思って、県会議員になったわけです。しかし、議会というのは、最後は多数決で物事が決まっていきますから、マジョリティーにならないと、自分の考えていることが達成できません。それで県議よりも、首長とか市長のほうが比較的、意思決定ができることが多いし、同じ地区の市長選挙に出ました。

― その加古川市長選は落選という形になりますが、選挙前の勝算はどうだったんですか?

勝算というのはなかったですね。県会議員もそうですけど、両方とも五分五分、勝つか負けるか見当もつきませんでした。市長選のほうは惨敗に近かったですね。

落選から2年後、30億集めて起業

― 市長選の2年後には会社を立ち上げられて、現在は株式会社日本創生投資のCEOになられていますが、自分で会社を設立するきっかけは何だったんでしょうか?

もともとベンチャー投資をやっていましたから。いずれにしても、どこかで何か、自分でやろうって思いはあったので、いわゆる起業家の行動、思考パターンで、何をするかなって考えていましたね。

ゼロからではなく、基本は事業承継で

― 著書『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』の柱は、基本的には事業承継ですよね。事業承継は肌で感じる問題ですか?

本に書いてある通りですけど、かなり多くの会社がいつ廃業になってもおかしくない状況です。後継者がいないといったことも大きいですね。実感としてもそんな会社は多いですから、そのあたりをどういう形で、こう解決していきましょう、ということになります。それと中小企業の事業再生、その2つが大きなところです。中小企業の事業とうまく継承していくような形です。

― 実際に、事業継承に関する案件は、相当動いているものなんでしょうか?

上場している中小企業のM&Aの仲介ですけど、たとえば日本M&Aセンターさんとか、M&Aキャピタルさんとか、ストライクさんとか、その主要3社の業績とか案件数を見れば、相当数が動いているのがわかります。相当なポテンシャルがあるという気はしてます。実際に、その3社のPERでも、60倍、70倍を超えてます。機関投資家も含めて、そういうマーケットへの期待値は大きいんじゃないかなと思います。

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事業承継問題が表面化

― たしかに、ここ3、4年くらいから、その事業承継問題はかなり表面化してきてると感じています。私の知り合いはふつうの会社員だったんですけども、社長が引退して、そのまま承継みたいな形で経営権を譲ってもらいました。そんなケースはいいんですけど、この本にある飲食の話のように、ゼロ・イチ起業にはリスクがあるということですね。

私も投資先に飲食の会社があったんですが、飲食を本業にしている会社は別として、副業でそれをやると日々のメンテナンスが必要で、水商売とはよく言ったものだと思いますが、いわゆる水が流れていくような状態で、常に毎日毎日、事業が動いてるような。そこをしっかり管理できないと難しいです。やりやすそうに見えるから、脱サラでやろうとか、どうしても軽いノリでやってしまう。

だから、それはちょっと違いますよと、そういうところを書かせてもらったつもりです。それを十分わかったうえで、さらに能力とか知識が必須であることを認識できて、本当にそれをやりたいというのであればいいんですけど…。飲食に限らず、起業は安直な考えでは難しいです。私はこの本でそうもお伝えしたかったんです。

― 事業承継の問題は表面化してきているとは思いますが、まだまだその認知、認識は一部の人たちを除いて、浸透しているとは言えません。そのあたりを、今後どうしたらいいんでしょうか?

それは簡単ではなくて、まだ時間がかかると思います。どうしても、日本の中小企業は家族経営の延長みたいなところがあって、従業員も含めて、この会社が自分の人生なんだと思い込んでいる社長さんがほとんどのように見受けられますね。2世、3世もその感触をなおさら受け継いでいる傾向にあって、他へ承継となれば、それこそ会社の身売りといったイメージにとらわれてしまう。だから、今後、そんな負のイメージをどれだけ払拭できるか、また一方で、事業承継の成功例をどれだけ結果として表せるか。タマゴが先か、ニワトリが先かではないですが、そこが一番重要なポイントかと思います。

しかし、それはそれとしても、今、少しでも仕掛けていく必要を感じていますし、円滑に進めていかないと。そういう努力が必要だから、こういう本を出したんです。今の社長さんも5年、10年経てばそういう年齢になるし、今のうちからそういった知識を蓄えて、いずれどこかで意思決定をする。そういう流れで進んでいくんだろうと思います。来年、再来年から一気に加速するとは思えないですが、知識を持ってもらう、実績を積み重ねる、この2つが両輪となってうまく走っていければいいなと考えているんです。

この本は会社を買う側の視点から

― 事業承継が表面化して、この先どうなるんだといった今、この本はそれにドンピシャリの出版ですけど、これはけっこう狙ったタイミングなんですか?

いや、そこまでは考えていませんでした。実際にファンドをやっていて、そういうニーズが多いと感じていましたし、それに自分がやってきたことを書いてあるだけで、そのノウハウをみなさんに理解してもらって、実行できる人が少しでも増えたらいいと思っただけですね。

これまでは、中小企業のM&Aの仲介会社さんが出すような、会社を売る側の本はけっこうありましたが、この本はテイストが変わっていて、買い手側の視点から書いた本です。ただ一方に大廃業時代があって、また一方で大企業のサラリーマンは今後、どうやって生きていくのか。

大企業の東芝、あれだけ大きな会社で安定していたところでもリストラとか、会社自体が危うくなって、本当に能力のあるサラリーマンはどうするんだみたいな問題があります。それは話してきた承継とは別軸の問題ですけど、この2つの軸をうまく組み合わせれば問題解決になるのではと思っています。

― 会社を仕込むためというか、その会社を買う側、仕込んでいくのは40代とか50代から仕込んでいくのがいいよと書かれていると思うんですけど、買う側としては?

買う側ってのは実は20代、30代なんですけどね。この先、大企業でも先が見えないって、20代、30代でも感じているんですよ。でも、実力で言えば40代、50代です。経験とか知識が違います。今の40代は超氷河期の採用だったんで、優秀な人材をそろえることのできた年代で、50代は企業に余裕が相当あって、いろんな研修プログラムを組めた時代でした。そういった時代の人は実力も経験値もあるので、社長になるのは当然ですが、すべての人がそうなるわけでもないので、50歳になればいろいろ考えることもあって、そのタイミングで会社を探していけば、人脈もあるでしょうから見つけやすいと思います。

― 大企業で働いてきた人は、「10とか100とかが出来上がっている中の一部をつくり上げてきたプロ」ということも書かれていたじゃないですか。そこの部分を読んだときに、たしかにその通りだなと思いました。

ゼロ・イチで事業を起こすのと、1-10やるのと、10-100やるのとでは、やっぱり能力の違いってありますよね。ゼロ・イチのほうが、より能力が必要だという意味ではなくて、求められる能力の質が異なるんですよ。それぞれの得手不得手だったり、タイミングだったり。その人の向き不向きを別にして、今、40歳・50歳のサラリーマンの経験からすれば、中小企業の業務改善は十分にできると思いますよ。

― 数字がけっこう具体的に出てるじゃないですか。休廃業、企業解散、こういうのは帝国データバンクで普通に見られる数字なんですか?

マクロデータなどは出典に書いてある通り、国もそうだし地方公共団体もそうですけど、今の中小企業の廃業とか、大きな問題のデータもたくさん集めています。中小企業庁も、中小企業の問題についての対策なんかを特集したり、金融庁でも地銀と中小企業との関係の中で、事業承継しても後任者をどうするんだといった問題を、もう少しクリアにしようと金融庁主導で地銀に指示を出しています。

情報を集めることが大事

― 実際に事業承継で会社を買います、売りますとなったときに、だれに、どういうことを相談すればいいか、おそらくほとんどの人がわからないと思うんです。相談相手をどういう目で見極めたらいいんでしょうか?

相談相手はだれに聞いてもいいんじゃないかなと思います。まずアクションしてみないと始まらないんで、ゼロ・イチの起業にも近いところがあるんですけど、いろんな人に聞きながら、いろんな方法を採りながら、とりあえず情報を取るってことが大事だと思うんです。そのうえで自分自身で意思決定することが大事です。

相談相手がたとえば中小企業に関係した人であれば、この承継にはこんな課題を解決する必要があるとか、先行きの不安なところとか、銀行との対応がどうとか、いろんな情報を得られると思うんです。聞いた話が100で、1しか参考にならなくてもいいんです。そうしたところから始まって、いろんな情報を得たうえで、ある程度の方向性が出てくるものなんです。

とにかく、いろんな人に尋ねてみることです。当然、ヘンなブローカーや、詐欺まがいなものに投資する危険もありますが、そういう失敗を回避するには、得た情報量があればあるほど、危険を察知することができます。ですから、とにもかくにも情報量、情報を取ることに尽きると思っています。

トライアスロンと経営者

― トライアスロンをされていると伺いましたが、経営者は体を鍛えろみたいな本が売れましたが、本当にそう思いますか?

そんなことはないと思いますけどね。人それぞれで、どっちが正しいといったことではないですよ。トライアスロンの場合、3種の競技だから、それぞれの競技の中でいろいろアタマを使わないといけないこともあるし。まあ、そうやって体を動かしてるせいか、あまり故障はしませんね。

それぞれの方がいろんな意味合いでやってるんだと思いますが、セルフコントロールとか自己管理能力がけっこう大事なんで、そこが楽しいって思う人もいるんじゃないかな。私はコミュニティが楽しくて、トライアスロンのメンバーと、旅行半分、レース半分で楽しんでます。

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中小企業再生に向けてノウハウを公開したい

― 承継、ゼロ・イチ起業に限らず、結果を出していくのに、今までどういうことを意識されてきたのですか?

私の中では、結果が出ているかどうかは、まだ何とも言えないんで…。ただ言えることは、やっぱり、やり抜くことだと思います。最後までやり切るかどうかですね。この本に書いた通り、「やり抜く力」です。それと裏表で、やらないことを明確にすることも大切です。

― 投資の判断基準はどういったところにあるんでしょうか。おそらく数字だけではない部分も大きいと思いますが。

まあ数字は当然、投資家の判断のうえで相当な割合であることは事実ですが、だけどそれだけではなかなか難しい。たとえば、社会的にグレーだけど大きな利益を出してる会社に投資して儲けよう、そんな考えはやっぱり違うと思うんです。例えば、食品関係に投資しようとして、そこが産地偽装して儲けてる会社だったら、それはイヤですね。そういった難点のないベストなものは楽しくて、ワクワクして、いいよねって思ったものに投資するんですけど、われわれはベンチャー企業ではないんで、そこだけ投資してても案件数的になかなか難しい。

要は投資のタイミングでの、いろいろなスキームをつくっていきましょうとか、われわれとしても出来るなとか、自信が持てるなってところじゃないと投資はできないです。それは結局さっきのやり切る力と近いですけど、ピンとこないヤツをやってもそれはたぶん難しいです。それは自分たちでもやり切れないですね。

明確に線を引いて、ここからはやります、ここからはやりませんということじゃなくて、そこはその会社の経営陣と話をして、商品を見て、事業を見て、いろんなものを見ていく中で、しっかりリターンを確保できるかを見極めたうえで、やる、やらないの最終的な判断をします。

― 最後に今後のビジョンとか、みなさんに伝えたいことがあれば。

今後のビジョンは、この本を書いたのもそうなんですけど、中小企業の再生に向けてノウハウを蓄積したい、そのノウハウを公開していきたいと思っています。もちろん、われわれも儲けますけど、それだけではなくて、今ある、これから起こるであろう問題を解決できる人たちを増やしたいと考えています。10万社の中小企業が問題を抱えていると言われる中で、われわれが積み上げたノウハウを公開することで、解決方法に気づいてもらって、そう実践できる人を増やしたいと。

われわれ自身の可能性や規模ばかりを追求することは全然考えていません。この大廃業時代に、中小企業の社長さんの平均年齢が相当に高齢化していて、あと10年、15年の間にどう手を打つかがファンドの使命なんです。そういう意味では、事業承継というわれわれの使命は、ある程度、期間限定なのかもしれません。この期間限定は本当に短い時間です。その短い時間の中で、今までお話したような活動ができればいいなと思っています。

【略歴】
三戸政和(みとまさかず)
株式会社日本創生投資代表取締役CEO

1978年兵庫県生まれ。同志社大卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして、日本、シンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や、投資先にてM&A戦略、株式公開支援などを行う。2011年、兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年、地元の加古川市長選に出馬するも落選。2016年、日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生、事業承継に関するバイアウト投資を行っている。また、事業再生支援を行う株式会社中小事業活性の代表取締役副社長を務め、コンサルティング業務も行っている。
著書「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門」(講談社+α新書)がベストセラーになるなど注目を集めている。

株式会社日本創生投資