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LCCの立ち上げに貢献した元国際線チーフが伝える、壁とギャップの乗り超え方

LCCの立ち上げに貢献した元国際線チーフが伝える、壁とギャップの乗り超え方

全日本空輸株式会社(ANA)で国際線チーフを経験後、スカイマークエアラインズ株式会社の立ち上げにも貢献するなど、華々しいキャリアをお持ちの石川利江(いしかわみちえ)さん。現在石川さんが講師を務められる企業研修は年代性別問わず高い評価を得ています。迷える受講生の心をわしづかみにする石川さんが放つ「前向きな言葉」の輝きの秘密、とことん聞き取らせていただきました。

石川利江

自分で決めて動いていける人を育てたい

私の目指しているところが「こころ豊かに美しく生きる」ということ。どんな状況下にあったとしても、自分で考えて動いていけるひとを育てていきたいなと思いを持って、いろいろな企業さんにお伺いして、人材育成・社員育成の講師をしております。

今の傾向として、全ての人がというわけではないのですが、決められたことはちゃんとする、そして、教えてもらったことはちゃんとする。でも、何か突発的なことが起こったときに判断は出来ても、一歩踏み出す勇気がない、という人が多いなと感じています。

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できる・できないよりも行動した理由を説明できるかどうか

その背景には、責任を取りたくない、責められたくないといった気持ちがあると思うのですが、自分のやることに対し「自信がない」とも感じられて、とても悲しいことだなと思っています。そうじゃなくて、ちゃんと自分で考えて行動して、「わたしはこういう風に考えて行動しました」という理由をちゃんと説明できれば、そのときそれがベストだと思ったのであれば、それはそれでいいと思います。

もちろん後になってみて、「それはこういう風にできたんじゃないの?」ということはいくらでも言えるかもしれないけど、その瞬間の自分の行動の理由をきちんと説明できることが大切だと思います。そうすることが出来れば、それを批判する人に対して、「じゃあ、あなたならどうしたの?」と、聞けると思うんですよね。だから、怖がらないでほしいと思いますし、自分の決めたことに自信をもっていってほしいなと思って企業研修をしています。

石川利江

企業研修の講師になるまでの華々しいキャリア

― 会社のお名前が「Be-Jin」ですが、石川さんの研修を受けられる方は女性が多いのですか?

女性男性問わずです。これから管理職になる方や、現在管理職をされている方もいらっしゃいます。もちろん新入社員の方もです。いろいろな階層の方々を対象にしています。

― 石川さんは ANAの国際線のチーフという、すごいキャリアをお持ちですよね。

冷静に見ると「すごい!」と思いますよね(笑)。全く自覚はなかったのですが、自分の経験がすごいんだ!」ということは講師になってから気づかされました。私たちの入った年というのは、国際線の定期便がちょうど出来た年だったんですね。最初、国内線にいたんですけど、すぐに国際線に異動になって、気づいたらチーフになっていました。時期的にANAが国際線を開拓していこうというタイミングで入れたので、いろいろな経験をさせてもらえたんだと思います。

わからないなりに自分たちでやっていくという経験

― 現在研修でお伝えされているのは、ANAでキャビンアテンダントをされていたときのご経験も多いのですか?

それもありますが、ANAのあとで入ったスカイマーク。ここは立ち上げから入ったんですけれども、そこで学んだことのほうが私には大きかったかなと思っています。多分、ANAの経験だけでいくと、今の「企業研修の講師」というお仕事は選んでいなかったかもしれないですね。

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スカイマークに入って立ち上げを経験したことで、会社ってこういう風にできていくんだ、とにかく就航させるんだという熱い想い、これまで経験したことのないことを経験したことが今の自分に確実に繋がっています。それは大変でしたよ、何か一つのことを進めるにも、国土交通省に行って許可もらって、みたいなことをする。この繰り返しだったでした。

そこでのやり取り、どうやって壁を切り崩していくのか、どうやって勝負に出るのか、そういうことのなかで学んだ、わからないなりに自分たちでやったことの中から学んだことのほうが、今の私の「チカラ」になっています。

どうやって壁を切り崩すか自分で考える

― 初めてのこととなると前例がないということで、壁は厚そうですね。

はい。認可が下りないと前に進めない。当時、航空会社が新しく立ち上がったのは、スカイマークが35年ぶりだったんです。それまで基準は全部、既存のJALやANAでした。そこと同じことをやっている分には、認める側も判断を迷うことがないんですよ。でもちょっと違うことを提出すると、誰も判断できなくて。

だから「安全装置も理にかなっていますよ」「コスト面でも大丈夫」「それに見合うような訓練もちゃんとやっていきます」といった説明を全部して、まず窓口となるところを切り崩す。でも窓口を切り崩しても後ろがいますから、そこをさらにどう切り崩すか、そういうことの日々、繰り返しでしたね。

石川利江

― 今となっては一般的になったLCCの最初ってことですものね。

ほんとうに就航できるのかというところから、そこに至るまでの約半年間、この経験が人生のなかでもかなり濃密で、同じことをもう一回やれといわれたら絶対にやりたくない(笑)というくらいの経験でしたね。

ジェネレーションギャップの埋め方

― 研修をされている中で、どういった悩みが一番多いですか?

やっぱり人間関係ですね。結局どんな悩みも最終的に人間関係に行き着くのですが、管理職の方だと、世代ごとの価値観というものが大きく変わってきている中で、自分が今までやってきたことをどうやって下の人に伝えたらいいのかということとかですね。

― ジェネレーションギャップみたいなことでしょうか。

そうですね。私も若い時に、先輩から“宇宙人”と言われていたので、確かに価値観や考え方は世代によって違うとはいえ、私だって若い頃上司や先輩に言われたことは「どうでもいいじゃん、そんなこと」と思っていたし、「なんで毎日おんなじことやらなきゃいけないの」「なんでこんなこと下の人間がやらなきゃいけないの」などと思っていたので、それは若いから違うというものではなく、組織で生きていく中で先輩に教えられたからわかるようになるのですね。

口だけの先輩のいうことは絶対聞かなかったんですけど、口だけでなくちゃんと実行している先輩を見ていると、自分の目指すことや仕事をしていくためには、やっぱりそういうことをやらないと行き着けないのかなということを学びましたね。

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「察して」では、察せられない

― 先輩の背中から学ぶみたいなことも必要ということですね。

ただ、上に立つ人がやらないといけないのは「察してね」は通用しないことを理解すること。ちゃんと伝えるということですね。なぜこういうことをしなければならないのか、これをすることによって、どういったメリットがあるのか。丁寧に一から教えていかないとダメなんですよね。「面倒くさい!」と感じるかもしれませんが、面倒なことは大切なこと。最初の時間を惜しまないで欲しいですね。年代ももちろん違うし、持っているものも全部違うので、そこはやはりしっかりやっていって欲しいと思います。

あとは、人間関係の悩みでいうと、上とのかかわり方ですね。「プレイング・マネージャー」という言葉があるように、部下の気持ちを考えたり部下を育てたりという余裕がないほどに、自分の業務に追われている。業務をこなすことが仕事だと思っているので、部下後輩の育成まで面倒見きれていない。自分のチームメンバーに全く興味がないんでしょうか。

そういう方が上にいると、相談しても、言われたことだけやっていればいいといわれてしまうとか、提案をしても判断をしてくれないとか。そういった悩みはよく受けますね。

「言われたことしかできない」のではなく「言われたことはちゃんとできる」。

― でも一方で、今の若い子たちってすごく素直だなって思います。

そうですね。私はスカイマークで、人を育てるという教官職の立場についていたので、新人を育てるのに私なりの苦労はしてきたのですが、例えば、「OJTトレーナー研修」という研修の中で、一部の受講生の方から受けた言葉で「新人は言われたことしかできないよね」というのがすごく悲しかったんです。そうじゃなくて、言われたことはちゃんとできる子たちなんですよ。

同じことを言っているのに、捉え方でこんなに違うんです。言われたことしかできないんじゃなくて、言われたことはちゃんとできる、という風にとらえ方を変えた瞬間に、可能性が広がります。言われたことはちゃんとできるんだから、あとは経験させてあげて、自信をつけてあげて、こっちからの指示を少しずつ引き算していけば、ちゃんとできるようになるものです。

石川利江

視点を変えれば、目の前の人との関係性も変わる

目の前の人を自分がどう見るかによって、見たことをどう言葉で表すかによって、自分の視点が変わった瞬間に相手との関係性も変わってくるし、相手もそれを敏感に受け取ります。そこからやっていかないと。できないじゃなくて、できる子たち、すごく素直な子たち、ちゃんとやりなさいと言ったら、時間はかかるけど、最後までやる子たちっていう、そこをベースにとらえて、関わる側がぐんぐん育てていくという風に変わっていけば、全く問題なくお互いに育っていきますよね。

プライドよりも、しなやかな軸をもって

― 今の子たちって頭もいいですし、感受性もすごく高い。だから実は上司がバカだとばれちゃうんですよね(笑)

そうです!でもね、そういうのも最初に上司が「バカでごめん」と言っちゃえばそれはそれでいいんですよ。君のその頭脳を私に貸してと素直に言えば。最終責任は自分にあるけど力貸してねと。上司が言えれば全く違うチームに変わっていきます。

― 本当にそうですね。上司が変なプライドもってると、ぎくしゃくしちゃったり。

プライドって何?と思いますよね。邪魔です(笑)変なプライドは持っていても、軸がない。だから変なプライドを持つよりも、ちゃんと軸を持ってくださいねということはお伝えするようにしていて。軸というのは、すごくしなやかにしなっていつつも、ちゃんと戻ってくるというものです。“頑なにそこにある”というのではなく、しなやかで中心に戻ってこられることが大事。

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受け止められる器を作ってほしい

― 企業さんから頼りにされるのがわかります。石川さんの言葉は自信をもたせてくれますね。

その人が思ってきたことは間違いではないし、間違いだと思ってほしくないし、それはそれであなたが考えてきたことだから大事にしてほしい、という前提でいつもお伝えしています。あとは、自分の許容範囲で広げていくことをしていってもらいたいとお伝えしています。やっぱり受け止められる器を早く作ってほしいなという風に思いますね。

― 年齢を重ねていくと、頭がガチガチになってしまっている人もいると思うのですが、そういう人にはどんな風に解きほぐしていかれるのですか?

そういう方たちがご自身の経てきた経験の中で考えていることというのは、すごく大切だから、それはそれでいいのですが、それだけではこの世の中で生きていくためにはやっぱりだめで。

それプラス今の新しい風をどう受け止めて受け入れていくか、そのための受け入れ皿を、もうひとつポケットを作ってくださいねということをお伝えしますね。その方の考え方や価値観は絶対に否定しない。それはその方の歩んできた人生の結晶であり、すごく大切なものなので。新しいものを否定することは簡単。でも新しく受け止めたものと、自分がもっているものを掛け合わせて、足りない部分を満たしたり、新しいものを生み出していったりということが一番求められているので。

人生の選択はすべて自分がしている

― 著書の『私を輝かせる賢い考え方38」にも石川さんが前向きで優しく導いてくれる内容になっていますね。著書の中で一番伝えたかったことはどんなことですか?

キャリアデザインという研修を男女関わらずさせていただいているのですが、「ご自分のキャリアって何ですか?」と聞くと、資格とかキャリア組とか、そういう第一線を走っている人たち、みたいなイメージがみなさんから出てきます。

本の最初にも書いたんですけど、キャリアというのは自分の生き方全部という風に捉えていくと、後ろを振り返ったときに、自分の生き方というか生き様があると思うんですね。その中にはいろいろな選択肢があって、全て自分で選んできているのですが、どうも選ばされたとか、親に言われたからとか、そういう風に捉えてしまっていますよね。

でもそうじゃなくって、最終的に親の言うことを聞こうと思ったり、仕方がなかったかもしれないけど選んだのは自分。だから人って生まれた瞬間から、最終的にはここまで自分で決めてきてるんですよということを認識してほしくて。

他責にするのはすごく簡単なのですが、今私がここにいるのは、足りないものや抜け落ちているものもあるけれども、誰のせいでもなく、私のせいであり、自分が選んできたものの結果であると受け入れること。それがありのままの私を受け入れるということ。完全ではない、不完全だから、そこに人間味があって、チャーミングな自分なんだと思うのです。

石川利江

そこから、じゃあ今の自分はどういうことができて、これからもう少しどういうことができるようになりたいのかな、それができたらどう輝いていくのかなということを見つめ直していく。

選択してきたものはすべて自分にプラスになっていく

― 「できる・できない」で考えると、他人と比べちゃいますもんね。

比べるなら他人と比べるのではなく、過去の自分と比べたら自分の成長がすごくわかるはずなんですよ。他人は他人なので、自分らしく歩んでいくということですね。もちろんそれは「できない自分でもいいじゃん」ということではなくて、「これからもっとこういうことができる」と、もっと輝ける自分をイメージして、自分の生き方に責任を持ってもらいたいなという気持ちをこめて書きました。

人間って組織にいると、やりたくないことをわざわざ拾いにいかないといけないときってあるじゃないですか。でもそうやって拾っていったものは何ひとつ無駄なものはなくて、絶対自分にプラスになっていきます。そういうことを伝えたかったですね。

自分がどうなりたいかを描こう

― 他人のせいにしてしまうといつまでたってもそこから抜け出せず、いつまでも悩みますものね。

いつまでも悩んでしまう人は「自分がどうしたいか」が見えていない人が多いです。自分がこういうことをやりたいとか、こうなりたいとか。でもそこで、どうしたいかがわからなくて不安が出てくるということは、本当は何かあるはずなんですよ。それが明確になっていないだけなので。それをちゃんと描ければやるべきことは見えてくる。

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― みんな迷っているんですよね。それでいいのかどうか自信がなくて。

でも迷うから楽しい。私も迷わずにここまで来たわけじゃないし、迷いながら迷いながらですよ。それでも自分でこうしようと決めたからには自己責任だし、たとえ失敗しても、ほかの人に大きく迷惑がなければいいかなって気持ちでやってるし。ごめんなさいって頭さげてそれで終わるならいいかなと。怖がらずに自分で選んだことをぜひやっていってほしいですね。

今後の展望

今はいろいろな企業様に伺って研修を行っているのですが、徐々にそれぞれの企業で人材育成の「内政化」ということをしていっていて、企業の受け継がれている考え方やシステムというものは企業内で教えていけるのがやっぱり一番いいですよね。

「外部講師」には限界があるので。だから企業の中で人を育てていく「社内講師」を育てるお手伝いを少しずつしていっています。そういうところを今後は中心にしていきたいと考えています。もちろん全部「内政化」してしまうと怖いものがあるので、時々外部の人として関わらせていただく部分も残しながら、企業特有のものを伝えていくシステムを作るお手伝いをしていきたいなと思っています。

石川利江

【略歴】

石川利江 (いしかわみちえ)
株式会社Be-Jin 代表取締役

1986年、全日本空輸株式会社入社。約半年間国内線CAとして乗務後、国際線へ異動。国際線チーフとして、乗務員の育成、長距離路線客室全体責任者などを務める。1998 年に(当時)スカイマークエアラインズ株式会社に入社。客室乗員部を立ち上げのために国交省対応、客室乗務員の採用・訓練、指導育成、役員秘書、広報業務を担い、2008 年に退社。同年よりフリーランス研修講師となり、2010年にオフィスBE-JIN を設立。2014 年に株式会社Be-Jin代表取締役に就任。

企業研修講師として、キャリアデザイン、ファシリテーション、CS・接遇研修など多数の研修を持つ。受講者への配慮と温かみの感じられる指導姿勢は評価が高く企業からの信頼も厚い。著書に2018年4月に「私を輝かせる賢い考え方38」がある。

株式会社Be-Jin
石川利江公式ブログ