コンサルタントとしスタートさせたキャリアに3年で自ら終止符を打ち、10年間で8社の転職を経験。一流と言われる多数の企業で、数々のプロジェクトを成功に導いてきた。現在は、経営コンサルタント・経営者のサポート・顧客向けのコンサルティングなどに従事。主に仮想通過、ブロックチェーン、オンラインサロン等の業種の企業をサポート。フリーになって2年となる。著書『どんな会社でも結果を出せる「仕事の型」』にも書かれている、仕事を進めていく上で必要な”型“とは?村井庸介(むらいようすけ)氏にその流儀をとことん聞き取ります。
仕事の質にこだわりぬいたからこその転職
ー 現在のお仕事内容をおうかがいできますか?
個人事業主として、複数のベンチャー企業の経営支援や、企業が抱えるお客様向けのコンサルティングなどをしています。主に関わっているのは、仮想通過、ブロックチェーンなどの領域の企業。それから“オンラインサロン”ビジネスの立ち上げのサポートをしています。フリーになって働き始めて、ざっくり2年くらいになりますね。
ー もともと仮想通過やブロックチェーンなど、ネットビジネスに精通されていたのですか?
ネット系の企業での経験もありますが、どちらもたまたま知人がやっていたので、”呼ばれた”のがきっかけです(笑)
ー 村井さんの著書である「とんな会社でも結果を出せる「仕事の型」を読ませていただいています。まず10年間で8社転職されたことについてですが、コレ、すごくないですか?(笑)
ムチャクチャですね(笑)
終身雇用が決め手?
ー しかもですよ、勤務先が軒並みすごい企業じゃないですか!? 8社転職された理由と、これだけの企業に転職できた秘訣というのは何かあるのでしょうか?
各社で、それなりの成果を出すということだけは意識していたので、それが各社の採用につながったのでは?と思うのですが…。もともと転職ありきの人生を送るつもりはなかったんです。新卒で外資系のコンサルティング会社と野村総研の両社から内定をもらい、野村総研には中長期で働ける企業風土・組織環境があるからでした(笑)
[adchord]大学時代に仕事を回す醍醐味を体験
大学4年の時に、NPOや学生団体で就職支援の教育サービスを立ち上げ、セミナー等を行ったりしたのですが、そこでお金を稼ぐ楽しさや、トップとなって組織を変えていく事の醍醐味を体感しました。野村総研に入り、コンサルタントの仕事自体には醍醐味があるのですが、ギャップとして感じたのは、レポートを中心にアドバイスにとどまっているだけのような気がして…。
アドバイスするだけでなく、ビジネスの前線で自分が本当に結果を出せるのかというところに悩み出しまして…。そこで3年目に転職を考えて、そこから転職の人生が始まりました。その頃は、今の自分にはこれが足りないのでは?という衝動に常に駆られていましたね。
ー 慶応法学部ご出身ですよね。選択肢として法律関係のお仕事に就くというのはなかったのですか?
いやー、全く考えてなかったですね。大学4年間、慶應高校の水泳部のコーチをしていて、そもそも勉強していなかったんです(笑)
求める仕事と現実とのギャップ、そして自問自答
ー 野村総研の次はどちらの企業でしたか?
リクルートです。半年位の期間ですね。いい意味で色々な勉強になりました。新規事業などを企画立案するような部署を希望していたのですが、実際に配属されたのは「求人広告売って来―い!」という営業の最前線みたいな部署でして…。そこでは売ることができない自分や、話を聞いてもらうのになぜこんなに時間がかかっているのだろうという、各所で通用しない自分を知りました。
しかし、なぜコンサル会社を辞めたのか?というところに立ち返った時に、このままずっと営業を続けていていいのだろうかという疑問がわきてきまして…。その頃に、ドリコムという会社で、部長の下で戦略を考えて組織を変えていくという職の紹介を受けて、そちらに飛び乗ってしまいましたね。
3社目で幅広くやりがいを見出す職に
ー 一流企業で実績を出していると、そういう話がどんどん来るものなのでしょうか?
一度転職活動を始めると、登録した人材会社や企業から色々なお誘いが来まして…。それでたまたまおもしろそうだと思った企業に飛び込んできました
- 転職するほどにキャリアや条件が落ちていく場合もあるじゃないですか?でも村井さんは、きっちりとキャリアアップにつなげていらっしゃいますよね。
きれいなキャリアアップというよりは、年収だけ見るとV字型でして、1度下がっていったんですよ。やれる仕事の幅は増えて面白かったんですけど。
目の前の課題をクリアしていくことで上向いた仕事の質と年収
ドリコムという会社は、200~300人の小規模な会社で、コスト削減など様々なプロジェクトを自分主導でやらせていただいて、達成感はありましたね。その次の会社は上場を目指していた80人規模くらいのところで、経営企画の責任者として参加しました。あと半年で資金繰りがヤバいみたいな状況にも直面して、会社の全体感を見ることができたのは、大きな経験になりました。
その後、グリーという会社に就職して年収が一気に上がり、その後は年収的には上がったり下がったりの繰り返しでした。そこからは、課せられる仕事と年収の関係はいい具合に比例していきましたね。
企業に何かを求めない、期待しない
ー そのような状況を経て、2年前に独立されたわけですが、きっかけは何だったのですか?これだけのキャリアを積んでいれば企業からは引く手あまただったと思いますが。
さんざん転職を経験したので、転職先に何かを求めるのはやめようと思いました。職場に期待をし過ぎでしまうと、期待と現実のズレを埋めるべく、また別のところへ行きたくなるので、それならばフリーランス的な立ち位置で、必要としてくれている企業さんと仕事をしていくという方が、お互いにいい関係でいられると思ったわけです。
半年のプロジェクトと決まっていれば、それが終われば笑顔でお疲れさまでした、となるわけですが、企業に就職して1年で辞めて転職してしまうと、「なんだもう辞めるのか!」ということになってしまいますから(笑)
仕事では常にアグレッシブに
ー 著書を読ませていただくと、ものすごく確立されたロジックを持っていらっしゃることが分かります。長く企業に在籍されていると、色々なものが見え過ぎてしまうのかも…という印象を受けました。
そうかもしれないですね。会社の状態が安定してきて、着々と日々のことをやっていけばいいというタイミングになると、現状より新しい何かを求めてしまうのです(笑)
メガネスーパーの時もそうでしたが、あと1年後に上場廃止で倒産かもしれないという状況の方が、あれもやれるのではないか、こういう事もできるのでは?と集中力が出ますね。
常に課題とゴールを意識して
ー 次にこの手を打とう、こういう施策でいこうという考えはどのように生まれてくるのですか?
もともと自分の中にアイディアの引き出しをたくさん持っている方ではないので、外で人と会い、話をする中で見えてくることが多いです。メガネスーパーの例でいうと、全国に300店舗あり、現在はシニア向けの目の健康管理に力を入れているという状況を知る中で、健康保険組合を受託している会社に対して、ポイント制で買えるしくみを提案するというアイディアが出てくるという感じです。
会社のゴールと今の課題を認識しておけば、打合せをしているうちに話が進んでいくというパターンが多いですね。ゼロからアイディアが湧き出るタイプではないので、アンテナを張っていれば、あとはハマる瞬間を待つという具合いです。
得意分野を生かしつつ、アンテナを張る
ー 普通の人はその瞬間を見つけるのはなかなか難しいと思います。どんなことがポイントになってきますか?
ある程度のビジネス経験はおのずと必要になってきますが…。メガネスーパーの例でいうと、今年のうちに30店舗分くらいの売り上げがあれば赤字が解消されるという数字が出ていたとすると、考えられることが見えてくるわけです。ここでは野村総研で培ったことが役に立ちましたが、既存店で売り上げを上げるか、店舗以外で(顧客を)呼び込む方法を考えるしかないと。第三の謎の新規事業があればいいのですが、そういうのは大抵コケますので(笑)。
自分は店舗の人間ではないので、店舗以外のところで呼び込む方法とは?というところだけを意識して考えました。広告宣伝を打つのかなど、選択肢として何があるんだろうというところを自分の中で組み立てていき、それを具体的な選択肢として落とし込んでいくわけです。
今回の場合は、友人があるJALに勤務していて、自分もJALカードユーザーでした。特にコンタクトレンズはどこの店舗で買っても正直それほど差があるものではない。それなら人気のマイルがたまる店で買う方がいいのでは?と単純に考え、友人経由でカード担当に企画を持ち込んだわけです。
[adchord]ゴールと解決方法を”型”で考える
ー 結果を出されている方と言うのは、きっちりと分析されて何が自分に必要なのかということを明確にされますが、結果につなげられない方は、何を求めれば良いのか本人も分かっていないということがありますね。コンサルティングを行う際、重点的にヒヤリングを行うポイントというのはあるんでしょうか?
そもそも、どこを目指したいのかというところですね。野村総研の型でいうと”GISOV”というところで。そこを目指したいけれど、実現できていない課題があって、そのイシューをどのように解決するかということと、解決策のアイディアだけあってもダメなので、誰がいつどのようにすれば解決策が実行できるのかというプランを立てます。ここまでをゴールから逆算で論理的にかんがえていくというプロセスを踏みます。さらに、それを自分たちがやることの付加価値を考えるのがバリューということになるわけですが、大体いつもこれに沿ってお客様にはヒヤリングを行います。
ネットを駆使した新たなビジネスの分野で
ー 独立されてから2年が経ち、現在関わっていらっしゃるのが仮想通過やブロックチェーン、オンラインサロンなど、急成長を見せている業界ですが、オンラインサロンとはどのような形態のものですか?
ざっくりで言うと、インターネット上に一人の先生がいて、そこに複数の人が集まって勉強やディスカッションをする場です。少し前のもので言うと”メルマガ”がありましたが、あれは単一方向のものじゃないですか。ラジオも投稿があるものの方向は単一ですよね。
オンラインサロンは、ネット上で今日は「仕事の型について語り合おう」みたいなテーマを決めて、教師との縦のコミュニケーションもあれば、横のコミュニケーションもあるところが特徴です。ファンコミュニティの一番新しい形がオンラインサロンですね。
ファンコミュニティの新しい形“オンラインサロン”を展開
ー オンラインサロンでは、主にどのような業務をされていますか?
僕自身は、オンラインサロンを運営しているわけではなく、社長の尻たたきをしているんです(笑)。営業は得意な方なんですが、サポート事業はそれほど儲かる業態ではないので、独自商材を企画するべく社長の行動を軌道修正するような役割です。
本当にすごい社長なんですけど、例えば代行案件ばかり取って来ても目標は達成しませんよね、と一緒に経営上の主要な数字に落とし込みをするなどに、社長の得意ではないところをカバーしています。
営業が得意な社長だと売り上げには困りませんが、本当に会社がやるべき事がだんだん見えなくなってくるという懸念が出てきます。
ツールとして期待したい”ブロックチェーン”
ー ブロックチェーンの方についても、ご説明いただけますか?
すごくざっくり言うと、オンライン上で管理されている銀行の通帳ですかね(笑)。例えば、私が例えば佐藤さんに、1ビットコイン(仮想通貨)を送ったとすると、私の通帳には1ビットコインが出ましたよ、佐藤さんの通帳には1ビットコインが入りましたよという履歴が残るわけです。
それ自体をビットコインでいうと9000台くらいのコンピュータで同時に管理しています。1台のコンピュータが故障したりハッキングされたりしても8000台以上のコンピュータでカバーしているわけです。9000台全てのコンピュータを合わせても、銀行の頑強なシステムを作成するよりも安い。安価で、安心・安全というのが、注目されている一つの理由と言えます。
安心・安全がヒットのゆえん
ブロックチェーンと言われる言葉の由来ですが、普通の通帳は最後まで記帳すると新しい通帳になりますよね。ブロックチェーンの場合は、新しい情報へ進む時に、過去の分全てのテータをある記号というか、英数字の羅列で省略して記帳していきますが、これを計算でひも解くと過去のデータが整合するという仕組みになっています。
この一つ前の分の記録を必ず次の通帳に記録していくので、仮に情報を改ざんしようとした場合、次の情報を解凍した時に合わなくなってしまいます。システム上でエラーが出してくれるわけです。本当に改ざんをしようと思ったら、最初の記録から全てチェックしていかないとならないわけで、そういったセキュリティの高さからも、今注目されているシステムです。
機能面の可能性、将来性を考えて
ー 仮想通貨自体が危険なものというイメージを持つ人も多いのでは?
仮想通貨は通貨なので、これがきちんと送られましたよ、ということを証明するためにそもそもブロックチェーンが活用されたというのが歴史としてあるのですが…。ブロックチェーンだけをビジネスにするということは、まだデータ処理や更新スピードが遅いなど性能の面で難しい側面がありますね。今は、仮想通貨とブロックチェーンを合わせて使って、それが市場に浸透していく、まだ立ち上がりの時期かなというところでしょうね。
自らの強みを生かして市場拡大を待つ
ー 仮想通貨やブロックチェーンに関するビジネスでは、具体的にはどのような業務をされていますか?
僕がコンサルティングを行っているA社があり、A社の顧客であるB社のためのコンサルディングも、僕が更にやっていというイメージです。僕がブロックチェーンに関わり出してからまだ2年なので、先輩方と比べ業界知識はそれほど深いわけではありません。会社のメンバーと協力しながら、彼らは知識を補充し、一方はコンサルティングのメソッドを活用して、お客様のプロジェクトをより円滑に進めていくという形をとって、お客様の方で仮想通貨を利用したビジネスを立ち上げるサポートをしています。
ー 色々な可能性が考えられる、これからのビジネスですよね?
そうですね。普及するのにまだまだ時間がかかると思いますが…。
ー 僕らは年齢のせいかちょっとついていけないと感じるところもあるのですが(笑)、とても大きな可能性のある市場だとは感じます。
仮想通貨というのは非常に便利なものです。例えば母親がハワイに行ったとします。お金もあまり持って行かず、カードも忘れてしまったので、少しお金を送ってほしいと言ってきたとします。そうした時に、簡単なものですと10秒で10万円相当の仮想通貨が相手の手元にインターネットを通じて届きます。これが銀行送金だと、まず銀行で書類を書いて申請して、中に1日はさんで、海外の銀行が受付処理を終わるまでは引き出せなかったりします。仮想通貨なら、それがほんの数秒で終わってしまいます。
コンサルの強みを生かしたロジカルな“型”の提案
これから先、新たな法律が出てきて今までの利便性が提供できるかどうかは分かりませんが、この利便性だけで、世の中の不便なところを解消できるポテンシャルはあるなと思っています。
ー ご自身の書籍の中でも一番注目してもらいたい部分というのは、やはりGISOVについてですか?
こういうインタビューにしても、進め方の基本形みたいなものがありますよね。仕事って、人に何かを提案することから始まるじゃないですか。それがうまくいくためのコツみたいなものを、野球の素振りや剣道でいうところの型としてとらえた時に、GISOVをきちんとステップを踏んで提案をしていきましょうというのが、みなさんにお伝えしたかった点です。
これが一通りできるようになれば、どんな企業に行っても、(その職場での知識を得れば)社内でも仕事がもらえるし、その企業の代表としてお客様からも仕事をいただけるし、GISOVよりももっといいものがあれば、独自の型を作ってくださいとお伝えします。まずはこれを使って実践してみてくださいということです。
双方のValue(バリュー)をめざして
もう一つ、裏のテーマがありまして、GISOVの最後にValueという文字があるのが好きなんです。お客様のゴールがあって、解決方法があって、それをどのようにしていくかということは、手順書に沿って論理的に考えれば誰でもできることなんです。でも、これをうまくやる人と、できない人がいますよね。自分の不得手な分野の仕事を受けて、これなら他の人の方がうまくやれるという状況になってしまったら、お互いに不幸じゃないですか。
自分がいきいきとして仕事ができ、ゴール達成のイメージもわいて、そうした状況でお客様に喜んでいただくと、リピートの受注も出てきます。自分のバリューは何だろうということを意識して仕事をとるということを、裏テーマとして本に書いてあります。
ー 最後になりますが、読者のみなさんにお伝えしたいことはありますか?
僕の本を読んで、こんなことをやってみましたというような実践結果的なことがあれば、ぜひ教えていただきたいです。僕のホームページがありますので、そちらに僕なりにアドバイスもさせていただこうと思っています。ぜひ、みなさん実践に移してみてください(笑)
【略歴】
村井庸介(経営コンサルタント)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、㈱野村総合研究所に入社。通信業・製造業の新規事業、経営計画策定のコンサルティングに携わる。その後、リクルート、グリー、日本アイ・ビー・エムなどで法人営業・戦略企画・人事の仕事に従事。メガネスーパーの企業再生事業にでは黒字化に貢献。2017年からは仮想通貨・ブロックチェーン関連のコンサルティングを行う。株式会社女子マネ取締役など複数のベンチャー企業経営に関与。