OLとシンガーの両立を経て、2016年12月25日にシングル「時を超えて」をリリース、そして現在はビリーバンバン、チェリッシュ、狩人等が出演する「夢のスター歌謡祭」で、コーラスとして多くの有名アーティストのサポートにも携わる実力派シンガーLumi(ルミ)さんに、夢を形にしていった経緯や、その時の苦悩などのお話を中心にプロの流儀をとことん聞き取ります。
大切な人に対しての想いを歌にのせて
ー 今回インタビューをさせていただくにあたって、歌を聴かせていただいたのですが、歌い出しの部分で一気に引き込まれて“ゾワゾワ”っとくる感覚がありました。
ありがとうございます(笑)。
ー いきなり歌の話になってしまいましたが、どうしても一番初めに伝えたかったので(笑)。それでは「シンガーLumi」誕生までの経緯をお聞かせください。
地元愛媛の高校卒業後、大阪の専門学校に通い20代前半の頃上京しました。当時は歌に関係のないアルバイトをしていたのですが、たまたま結婚式で歌うアカペラシンガーの求人があったんですね。子供のころ祖父母が同じ敷地内に住んでいて、よくカラオケセットで演歌を歌ったりしていた。ずっと歌が好きだったんです。それでオーディションを受けたら合格して。それがきっかけで7、8年くらいアカペラの世界にいました。
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アカペラOLシンガーとしてのスタート
ー アカペラのお仕事がメインだった?
アカペラのお仕事は結婚式など土日が多かったので、平日は他のお仕事を続けながら週末はアカペラで歌う、そういう生活でした。
ー OLシンガーの誕生ですね。いまはプロシンガーとして活動していらっしゃいますが、何か転機があったのでしょうか?
所属していたアカペラの事務所は2年ぐらいで辞めたんです。そこから女性4人でグループを組んで歌っていたのですが、1人、また1人と減っていって…。私は姉がいて、姉と2人で歌ったりもしながらなんとか続けている、そういう感じでした。
そんな時、父が病気になったんですね。もともと父は目が不自由で、両親は愛媛に居ましたから、これはもう地元に帰るしかないかなと思って。ただ、ダメ元で「よかったらこっちにくる?」って聞いたら、父が「都会?1回住んでみたかったんや!行く行く~」っていう感じで、逆に両親が東京に出てくることになりました。
父の前向きな姿を見て受けたオーディション
本人が一番辛いはずなのに、病気になっても前向きな父の姿を見て、「自分も歌を前向きにやってその姿を見せたい!」と思い、たまたまカラオケ店で目に入ってきた“OL Singerオーディション”を受けたのです。
そこで合格して、配信デビューすることになって。オーディションの募集があったころは仕事としてはほとんど歌っていなかった時だったので、人生何があるかわからないなと思いました。
ー もう歌は諦めようと思っていた?
思っていました。でも、諦める勇気がなくて…
諦めるのにも勇気がいるじゃないですか。私はとにかく歌っていたいなと思って。だから、ライブの機会があるときには「どんなライブでも絶対に休まない。」「一度決めたことは絶対にやる。」そういう気持ちだけでやっていました。でも、今思うと続けることって大事だなと思います。
想いを作詞家に伝えてできた曲
オーディションに受かった後、「どんな曲を歌いたいですか?」と聞かれたときに、私がこのオーディションに受かったのは、前向きな気持ちをくれた父のおかげだなと感じていましたし、家族にも感謝していましたから「家族や大切な人に対しての想いを歌いたい!」と、その気持ちを作詞家の方にお伝えしたのです。
ー それでできたのがこの「時を超えて」なんですね。
ラブソングだと歌える年齢が限定されてしまうこともあるけれど、家族の歌だったら10年、20年、30年後も歌える。私は「この曲だけずっとエンドレスで歌ってもいいな」と思っているんです。
[adchord]時を経たからこそ歌える歌がある
昔はプライベートなことをおおっぴらに明かすのは、ステージに立つ人間として自分の中で抵抗がありました。勿論今もその気持ちはあります。でも、年齢を重ねてきて、経験してきたことが全部今につながっているんだ、と思えるようになってきて。20代の頃の自分には歌えなかった歌かもしれません。
ー 20代の時と今と、歌に対する思いや感じ方が変わったということですか?
結婚したというのも大きいかもしれないですね。結婚してもう10年経つんですけど、今回こういうチャンスをいただいたときに、相手に合わせてどうこうではなく、自分の人生として考えてそれを理解して応援してくれる人がいた。
生きてきた証が声にのる
ただ、結婚してると言うと「一人で頑張っている人より楽している」という感じで見られることもあると思うんですね。でも、「人と向き合って生きているんだね」って安心してくれる人もいる。私は本当に人が好きだし、生きてきたこれまでのことすべてが声に乗っていると思っているので、そういうものもさらけ出して、私自身を応援してもらえたらうれしいなと思います。
モチベーションの両立という壁
ー シンガーとして日の目を見るまでの間、辛いこともあったのではないですか?
ОLとしての仕事をずっと続けていた時は、モチベーションの両立という意味では辛かったですね。仕事って、歌や演劇と少し違って目に見える形で成果として出やすかったり、頑張りを認めてもらえる機会というのは多いと思うのですね。そういうことが普通の生活で重なると、もう歌は趣味でいいや、自分を認めてもらえる世界で頑張ろうって思ってしまうこともありました。
その他には、仕事中って自分を殺してみんなが動きやすいように取り持つことを考える場合も多いと思うのです。でも、歌の世界は自分自身を求められる仕事なので。ОLより歌の割合が増えていったときに、自分は我慢していたんだってことに気が付いたんです。
2つの常識の狭間での葛藤
ー ОLの自分とシンガーの自分の狭間に揺れ動く気持ちがあったと?
なんというか、こっちの世界では常識だったことが、こっちの世界では非常識という、“はざま”をすごく経験するんですね。ツアーをガーっとやって会社員に戻った時、「え、ちょっと、大丈夫?」って言われたりしますし、歌の方に居るときは「私も同じでいいです」とか言うと「自分ないの?」って言われたり。
歌の活動が増えていくと、自分自身っていうのが求められるし、すごく出てくる。今はだいぶ落ち着いてきましたけど、最初はバランスの調整というか、そういうことが難しかったのを覚えています。
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届ける大切さ
ー 今、歌うときにどんなことを意識していますか?
私はシンガーソングライターの方と違って、作詞作曲をお願いしているんです。勿論自分で作詞作曲した曲もあります。でも、私はシンガー色が強いと思っています。曲を作っていただいて、その歌詞を理解して、その世界に入って伝える。ある意味女優さんみたいなところがあると思うので、「上手だね」と言われるより「心にしみた」と言われることが嬉しいです。
聴いてくれる方が癒されたり、自然と涙がこぼれたりするような、フィーリングを大事にしたいと思っていますし、伝えたいっていう思いや気持ちを曲に乗せて届けるっていう感じです。
ステージで心がけていること
ー 冒頭でも触れたのですが、歌を聞かせてもらったとき、歌い出しで一気に引き込まれるような感じになったのですが…
ありがとうございます(笑)。私のことを知らない人が聴いても「おっ」と思ってもらえるような歌を歌いたいと思っています。そのためには、生で聴いてもらうのが一番いいと思うので、これからも全国様々なところでツアーもしたいですし、セッションもしていきたいですね。
MCではたくさんトークをして、笑ってもらって、曲で世界観に入ってもらう。最終的に帰るときに本当に楽しかったなって思ってもらえるステージを目指しています。
柔軟に音楽を楽しむことで世界が広がる
ー セッション、楽しそうですね。
もともとアカペラ出身で、ミュージシャンの方とのつながりがあまりなかったので、昔は「え?なに?こんなことも知らないの?」って言われたらどうしよう、みたいなコンプレックスがあったんです。食べず嫌いというか、偏見というか。
でも今は「知らないので教えてください!」とか「間違えた!ごめんなさい!」みたいな、柔軟に、本当に純粋に音楽を楽しむっていうことをできるようになりました。たとえうまくできなくても、私自身が楽しく歌っていれば、そのセッションをしてくださる方とかもお互いに刺激しあいながらできると思うので、あまり格好つけずに楽しむ、みたいな。
体育会系シンガー!?
ー 精力的にライブ活動をされているんですね。
体育会系シンガーですから(笑)。ツアーがないときは、毎週水曜日に六本木の「L・BAR」で歌っています。20時頃から23時半頃まで、30分のステージを4回。ここではカーペンターズだったり、ホイットニーヒューストンだったり、みんながどこかで聴いたことがあるような有名な曲をセレクトしています。
ー 「体育会系」というワードが出ましたが、Lumiさんは学生時代、砲丸投げをされていたんですよね。インターハイにも出場されたとか?
インターハイは予選で落ちてしまったんですけど、ただ、最終的な記録が全国の高校ランキングトップ10、確か5位に入っていたんですよ。四国では1位でしたね。砲丸投特級も持っています(笑)。中学時代はバスケ部に所属していて、やっぱり体育会系な感じで。
全国高校ランキングトップ10入り!
ー すごい。その頃培ったものが今に生きている?
コーラスとしてツアーのお仕事をしていると、朝から晩までの長丁場だったり、長距離移動が続いたり、体力が必要ですからそこは培っておいてよかったですね。あとは筋力。横隔膜は若い時に鍛えるとすごくいいと聞いたので、今に生きているかもしれません。あとは日々の努力。忍耐力も鍛えられました。
ー CD「時を超えて」のカップリング曲「A rose petal」でも、力強い歌声を披露されていますね。
この曲はCD化するにあたって「どうしてももう一曲入れたいな」と思って、私が日本語で作詞をして英訳してもらい、親友でもある宮島知穂さんに作曲をお願いしました。カップリングというより、両A面シングルという感じです。
ほぼ一発録りで素晴らしい楽曲が出来上がった
宮島さんが弾くピアノと一緒にレコーディングをしたのですが、二人の魂を注ぎ込み、ほぼ一発録りで仕上がりました。この曲は「時を超えて」とは真逆の歌詞なんですよね。ダメな男性を好きになってしまって、ついていくけどいつまで経っても変わらない男性に愛想をつかすっていう(笑)。
ー ぜひ合わせて聴いていただきたいですね。
これまではコンサートだったり、イベント会場での販売だったんですけど、今はAmazonでも販売していますので全国どこからでも買えます!「Lumi 時を超えて」で検索していただければ出てきます。
人とのご縁を大切にする
ー では最後に、これまで歌い続けてきた中で変わってきたこと、これから大切にしていきたいことを教えていただけますか?
「人との縁」というのをすごく感じるようになりました。大事だなと思って。今、ビリーバンバンさんやチェリッシュさん、狩人さん…私たちの親の世代の憧れだった方々と一緒にお仕事をさせてもらっています。父は上京して2年で旅立ってしまいましたが、月に1度のカラオケをとても楽しみにしていて、ビリーバンバンさんの歌もよく歌っていたんですね。
だから今の私を見て、きっと喜んでくれていると思います。そういう風に、ずっとどこかでつながっている。今回の取材もそうですが、どこでどうやってつながっていくかわからないじゃないですか。だから「一つ一つのご縁を大切にしよう。」そう思っています。
編集後記
非常に明るく、パワーに満ち溢れた方でした。本人曰く、「見た目とは違い、実はとても乙女」だとおっしゃっていたのが印象的でした。確かに家族に対してもそうですが、人に対してとても愛を抱いている方だと感じたのは、「そういう乙女の部分の表れなんだろうな」と思いました。
きっとその愛の裏側には、Lumiさんが今まで培ってきた経験や想いなども含めて、本当に歌に対して真摯に向き合ってきたからこそあふれ出るものだと強く感じます。
CD「時を超えて」ぜひ一度お聞きいただくことをお勧めします。私は歌い出しを聞いたとき“ゾワゾワ”っと一気に引き込まれスーッと染み渡る歌声に魅了されてしまいました。
【略歴】
Singer Lumi(シンガールミ)
2014年OL Singer Lumiとして「時を超えて」で配信デビュー。その後の様々な運命的な出逢いにより、2016年12月25日シングル「時を超えて」をリリース。
高校時代は砲丸投選手でインターハイ出場、全国ランキングトップ10入りという経歴を持つ異色のSinger。軽快なMCと力強く伸びやかな歌声には定評があり、都内でのLive活動の他、毎週水曜日に六本木L・BARでのレギュラー出演中。
2016年6月より、チェリッシュ、狩人等が出演する「夢☆ポップスコンサート」10月より「夢のスター歌謡祭」にコーラスとしても参加している。2017年3月には、ビリーバンバン45周年コンサートにもコーラスとして参加。ベストセラー漫画「ザ・シェフ」の原作者、剣名舞氏が代表を務める、剣名プロダクション提携アーティスト。
(この記事は2018年3月にインタビューされた内容です。)
CD:時を超えて / A rose petal
Lumi (アーティスト), Han San Wong (作曲), 宮島 知穂 (作曲), 宮島 知穂(A rose petal) (演奏)
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