3億円の借金から50万部を超えるベストセラー作家となった背景とは?

3億円の借金から50万部を超えるベストセラー作家となった背景とは?

ベンチャー企業を立ち上げ、上場一歩手前までビジネスを構築するも、急激な業績悪化から3億円の借金を背負い、そこから累計50万部(2018年5月現在)を超えるベストセラービジネス作家となるなど、大きく人生を揺り動かしてきた背景には、圧倒的な読書数と本との関わりにあった。失敗と成功の味を知る、サンライズパブリッシング代表の水野俊哉さんに仕事の流儀をとことん聞き取らせていただきます。

3億円の借金

ー 3億円の借金…我々にはとても想像ができない額なのですが・・・その背景について伺ってもよろしいですか?

1998年にベンチャー企業を立ち上げて上場しようとしていたはずが、資金を集めすぎたんですよね。集まってしまった。急拡大していくのに合わせて「IPOすれば資金を返せるだろう」っていう一心でやたら資金を集めすぎた結果、頭打ちになってきたんです。

売り上げが上がらなくて、それを埋める形で資金を集めてっていう、いわゆる自転車操業的な部分もありました。それで会社の負債、負債といっても出資とか全部含めてですが、3億円という額になってしまったんです。今思うと時間がなさすぎた。余裕がなくてゆっくりと物事を考える時間がないまま走りすぎていたように思います。

ちょっとした角度の違いだったはずが取り返しのつかない結果に

ー その頃はどんなお仕事を?

メインは媒体事業、webメディアです。その事業がどのぐらい利益がでているのかとか、そういうことに向き合えていなかった。人が増えていろんなこと、トラブルも含めてですね、そういうことが起こったっていうのもあるんですけど。果たしてそんなに人が必要だったのかな、と。

例えば、毎日いろんな打ち合わせをしていて、いろんなところを飛び回っていたんですけど、効率がよくなかったんですよね、今思うと。いろんな求人媒体の営業の人が来ていてお話をしたり、そうかと思えば面接をしていたり、媒体で使うモデルさんのキャスティングとかも自分でやっていました。営業もするし、社内でやっている製作物の確認もするという感じで、会社をとにかく無我夢中でやっていた。

いまでも、若い、ベンチャーとかやってて忙しそうな人がいますけど、そんな感じでしたね。そんな中で、岐路が、うまくいく方といかない方があると思うんです。最初はちょっとした角度の違いだったのかも知れないですけど、そのズレがどんどん進むと、気がつくと帰れないポイントを越えてしまっていて。で、一回ジ・エンドになってしまったわけです。

最高の読書環境は監獄

ー 少しのズレ…わかります。そこからどう今の立場を築かれたのでしょうか?

そこから2年ぐらいは債務整理をしながら経営コンサルタントをしていました。

僕は「最高の読書環境」について、それは監獄じゃないかと思っているんですね。要は、もう収監されてしまうと飲みに行くこともできませんし、誰かに誘われることもないし。2008年の自分は、今思うとそれと同じような状態にありましたね。ちょうど、『成功本50冊「勝ち抜け」案内』(光文社ペーパーバックス)を書いてくれって言われて。40日間くらいはほとんど外出もせずに、そのときは1日2冊書評をすると決めていたので、読んで、力尽きて寝て、夜中にガバっと目が覚めて、また読んで、ちょっと書いてっていうので。

髪を切りに行ったりとか、最終的にはコンビニに行くくらいしか外出しないみたいな、そういう他のことを一切考えずに、成功本みたいなのを読み続けて。そうすると段々なんか頭の中がもう、成功本の中の成功者みたいな脳になってくるんですね。たまたま道を歩いていると、世界平和のことを考えて涙が出てきたりする。そのぐらい入り込んで書いたら、たまたまその本が売れまして。執筆に専念します、って話でいったん本を書くのに専念することにしました。

なので、コンサルタントをしていたと言っても、2010年くらいまではほぼ執筆オンリーの生活を送っていましたね。人前にもあんまり出たくないなと思ってしまって。ただ、出版セミナーみたいなのものは2009年くらいからやっていて、それ以外は、生活の8割から9割は執筆をしている状態になっていました。

ー どんな本を書かれていたんですか?

その頃はですね、最初の本も「50冊を書評する」とかっていう本で、次の本でも51冊書評して、その次も講談社から「投資の本を50冊」っていうやつで…以降も50冊とか100冊とか、「ビジネス本作家の値打ち」(扶桑社)にいたっては、232作品を採点するみたいな、今思うと完全に労力とリターンがあっていない(笑)。大量に読んでいたので、よく「なんでそんな早く読めるのか」っていう風に聞かれていたんですけども、多少のコツはあると思うんですけど、たぶん大食いとかと一緒で一定のペースで読み続けるしかないんですよね。

時間は自分で作るもの

ー ビジネスや執筆に直結させる本の読み方を身に着けた?

そうですね、自分の場合は仕事だったっていうのもあるんですけど、とにかく片っ端から気になったものは全部買って、例えば、今の仕事のメインは会社の経営なので、経営っていうかオーナー的な感じなんですけど。だからあんまり書いたり読んだりする時間ってないんですね。だけど移動中とか、トイレの中とか、夜中に目が覚めたときとか、お酒を飲みながらとか、あるいは一人でご飯を食べているときとか。時間を見つけようと思えばいくらでも見つかるじゃないですか。

今朝もホテルのチェックアウト前に1時間くらい、スタッフの方に来てもらって、資料を確認しながら打ち合わせをしていたんです。時間を見つけて使うのはすごく大事だと思いますね。だから、本で言うと、いっぱい買っておいて、週末でも、夜仕事が終わったあとでも、通勤時間でもいいから、時間を作って読むといいんじゃないかなと思います。

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成功している人は本を読んでいる

ー 本は人生において重要な転機をもたらしてくれるものだと考えていますか?

僕が会うお客さんってものすごく成功している方が多いんですけど、やっぱり本を読んでる方の率が高いですね。今はそのお客さんの本を出版するお手伝いをしているので、編集者の方とも会うんですけど、正直編集者のほうが本を読んでないです。忙しいとかに負けちゃって。一方、お客さんの方が忙しいはずなのに、話していると本を読んでいるんですよね。だから読書の費用対効果は高いと思います。

古典は原液のようなもの

―そうですよね、1500円でその人の体験を疑似体験できたりしますもんね。自分に合った本を見つける秘訣ってありますか?

1つは他の本を紹介している本を読むこと。自分もそういう本を書いているんですけど、どういう本がいいのかなっていう指標になる。もう1つは読みやすい本を、1500円くらいで売っている本とかって1時間もあれば読めるので、そういう本の中で書店で目に付いたものを買って、面白いな、合うなって思ったらその人の本を読んで、その人の本で紹介されている本を読んで…っていう風に広げていくような方法ですね。

あとは古典ですよね。誰もが知っていて1回は読もうと思うんだけどあまりの分厚さにビビッて読むのをやめてしまうような、そういう本って、極端なことを言うと50冊、100冊分くらい読むくらいの価値があると思います。そういった、古典と呼ばれるような本に書かれているエッセンスを薄めて、1テーマで書いてくれているのが現代の本、みたいなところがあるので、つまり古典は原液みたいなものじゃないですか。とは言え、いきなり古典を読むのはしんどかったりすると思うので、最初は書店で目に付いて気になった本を読み始めて、それが一巡したら、ぜひそういう原点にもチャレンジして欲しいなと思います。

好きなものだから、断つ

ー なるほど。薄いところから濃いところに流れていくの、大事ですよね。

あとは、小説とか漫画とか雑誌とか、場合によってはインターネットとかを、ある一時期やらないっていうと決めて断っちゃうとかですね。結構極端な方法になりますけど、自分もビジネス書の本を書いていて、いっぱい本を読まなくてはいけなかった何年間かって、漫画とか小説とか読まないようにしていたんですよ。

もともとは好きなんですけど、どうしても物理的に読む時間って限られている。しかも下手をするとそっちの方が面白かったりするので、だからある期間は断っていた。小説が好きな人だったら今までに小説もいっぱい読んでいるだろうし、漫画が好きな人は漫画もいっぱい読んでいうから、その時期読まなくてもかなり読んでいるはずなんですよ。だから、今まで読んでいないジャンルを読む時に一時期断たないと、もしかして読む時間が取れなかったり、興味とか関心が移ってしまって、集中できないんじゃないかなと思って。

一般常識を疑うことを恐れるな

ー 3億円という借金から復活されてきた水野さんですが、失敗をしないために注意した方がいいと実感したことは何かありますか?

失敗しないために注意するってことで言うと、「世の中で言っていることって、正反対のことが多いんじゃないかな」ということですね。さっきの、たとえば会社を作ったらどうするかっていうときに、言われることって、まず「オフィスを借りに行きなさい」とか「求人広告打ちなさい」とかじゃないですか。

でもそれは僕の実感では反対だなと思っていて。それで今は、携帯も使わない、見ない、出ない、かけない、オフィスもない、従業員もいない。日本人って、そのコスト感覚とか収支の感覚とか、お金に対する感覚がすごい欠けていると思うんです。単純に失敗しない方法って、赤字にならないということなのに、日本では逆のことを教えてる気がしていて。

ー 余計なところにお金かけちゃうんですよね。

良かれと思ってというか、そうしなくちゃいけないと思ってね。まあ、一般的に言われていることは疑えということですね。というか、9割くらい間違っているんじゃないかな。だから、私はそういうアドバイスと反対のことをやるようにしています。

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「ダメ」の判断はお客さんが教えてくれる

ー 痛い目にあったときのリカバリーの仕方って何かありますか?

なにもしなければリスクはないんですけど、チャンスは試した方がいいと思います。いろいろ試すってことですね。ただ、ダメだと思ったらすぐやめる。そのダメって言うのが結構シンプルで、なんかやったときにお客さん来るかどうかですね。

ー もうこれは本当に生の声、現役だからこそ言える一言ですね。

お客さんが教えてくれるっていう感覚かな。変なことに固執している人って、ダメな理由っていうのを、もっともらしいこと言ってるんですけど、とどのつまり、お客さんが来てないとか、売り上げが上がらないっていうことに尽きる。うまくいくビジネスって、市場にリリースしたとたんに、あっという間にニーズを集めてぐわーっと伸びていくじゃないですか。そうならないんだったら、やめた方がいいと思うんですよね。損切りを早くするっていうことでしょうかね、何事にも。そこは割とドライですよね。

成果報酬主義でお互いが幸せになる

―水野さんは、一般的な組織構成ではない形態でビジネスを進めていらっしゃいますよね。その基にはどういったお考えがおありなのでしょうか?

極端な成果報酬主義ですよね。例えば、もともと自分と知り合いで、何年間も一緒にサッカーとかやって無職だった人がいるんですね。彼は今20代なんですけど、この出版社の営業を始めて、年商で5000万円になった。基本的な考えとしては、売り上げが上がったら、3割は会社に入れたとして、30%ずつ分け合う、相手にもそれくらい稼いでもらおうっていう。例えば年間1000万で囲ったりすると、必ず労使の関係が生まれます。もらう方からすると少しでもやることが少なければいいですもんね。

やって、出来た分を渡すっていう風にするとすごく一生懸命になれますし。ほとんどがそういう、プロフィット部門っていうのか、必ず関わって仕事をやった場合にゼロだったところから売り上げが発生して、通常の外注コストよりも安くなっている分利益になる、みたいな、一人頭の利益率みたいなものがお互いにちゃんと発生するようにしています。赤字が垂れ流しになるような部門は早めにどうにかする。とどのつまりはそういうことですよね。

あんまり儲かっていない出版社があったとしたら、多分、在籍している編集者が作っている本が、一人頭のコストよりも売り上げが少ないということなんですよ。だから赤字になっているわけじゃないですか。例えば、ビジネスの本を作って1億円儲けた編集者がいたとしたら、3000万円渡せばいい。で、それを作れない人は自然といなくなるようにしていればっていうことですね。

編集のアシスタントの方がいたとして、出社しないで、僕と合うのも週に1回あるかないか、1、2時間とかの打ち合わせで月に20万くらい発生するとなると、OLで勤めに行くよりもいいじゃないですか。じゃあこちらが損しているのかっていうと、外注するときにかかるコストよりもだいぶ抑えられているし、なおかつクオリティが高い、みたいな。そうなるように調整していく感じです。

リクエストはいろいろ出すんですけど。こういう風にしてほしい、とかこういう風にやろうとか。それがうまく合わさってくるとお互いにストレスがない。結局一緒にいなくてもいいし、顔も合わさなくていいからストレスもたまりようがないんですね。いま向こうでも一人、うちの編集統括の人間が別の打ち合わせをしているんですけど、彼も大手出版社の役員だったんですよ。で、来て1年ぐらい一緒にやっていて、なんであの人はあの会社を辞めて水野さんのところにいるんだろう、よっぽど給料がいいんですか?とかそういうこと聞いてくる編集者もいるんですけど。基本的に仕組み的には、給料は高くなるようにはしています。

それが今できているかは別として、仕組みとしては編集者の人では普通には稼げないような金額が発生するような仕組みにはなっている。それが獲れるように、チャレンジして欲しいと思っています。

自分ひとりで出来る、でも人とやればもっと出来る

ー 一度失敗した時に人を増やしすぎた、とお話がありましたが、そういった経験を踏まえて今の形を構築されたということですか?

基本的に一人でいいんですよね。自分一人でできるようにしているので。誰かと関わる時には、その人に関わったことによってこっちも1000万、2000万売り上げが増える、それでいて労力は増えない、向こうにも関わったことによってそれだけの、同じぐらいの額が増える、そういう関係じゃないと関わらないですよね。

程よい距離感をつくる

―スタッフの方とのコミュニケーションはどうやってとられているのでしょうか?

前述したサッカー仲間の営業の彼とかは、仕事がどのぐらいできるかは未知数というか、普通に考えると社会常識もないし、就職した経験もないわけですから、まずできないと見た方がいいなと思っていたんです。だから、絶対に土曜日のサッカーとかフットサルとかを休むなって話をして。サッカーがなかったらお前との関係もないんだから、仕事はサボってもいいけどそこを休んだら許さないっていう話で。

それからずっと今も、2~3年やってるんですけど。他のスタッフの方とは一緒にご飯食べに行ったりすることが多いですね。自分はおいしいものを食べるのが好きなので、昨日もクライアントさんと取材が終わった後にレストランでご飯を食べて、そこにスタッフとか一緒にいたりとか。スタッフ同士の打ち合わせや、秘書さんと月に1回くらい開催しているランチ会なんかのときも、お客さんとの接待で使うようなお店に一緒に行きます。何の用もないのに人と会うのは好きではないんですけど、おいしいもの食べたりお酒飲んだりするついでに、仕事の話もちょっとだけしつつ、親睦を深めるみたいなのは結構多いですね。

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出版に投資した分以上のリターンを生む

ー 出版社を経営されていて思う、本を出すメリットってありますか?

いま自分自身がやっているのは、なにかのビジネスでうまくいった人に本を出してもらって、投資した分以上のリターンを受け取る仕組みをつくるきっかけにしてもらう。例えばよくコンサルティングとかやっている方いますけど、60万くらいでコンサルティングをやっている人が、本を出したらお客さんが100人きたとなれば、6000万儲かることになりますよね。

『好きなことをやっていればサボる必要がない』

ー 本を読んだ人も、いい相談先を見つけることができる。みんなが喜ぶサイクルが出来ていますね。では最後に水野さんのお仕事に関する流儀を教えてください。

仕事も大事なんですけど、今は1日2~3時間以上は働かないようにしています。普段は妻と一緒に毎日出かけていることが多いので。あとは猫ちゃんのお世話が忙しくて(笑)。自分は2013年に小田原に移住してきて、東京にもスタッフがいたけど、たまにしか会わないっていう形をその頃始めました。

今は企業でもテレワークなどが導入されてきて、週休3日くらいのところも増えてきていますし、それぞれの人が好きなことやってて好きなところにいても仕事ができるっていう形がいいと思うんです。なんで会社に行かなくちゃならないのかなって考えたときに、見張ってなくちゃならないからだと思うんですよね。誰かサボってないかとか。だから、みんな好きなことやってればサボる必要もないじゃないですか。

仕事っていうのがお金を稼ぐためにどうしてもやらなければいけないことで、そうしなければ生きていけないって思っている人が多いと思うんですけど、そもそも生きていること自体が別に仕事するためじゃなくて楽しいことをするためだと思うので、できるだけ、そういう自分がやっていて楽しいことと、仕事が一致するようなライフスタイルにするのがいいんじゃないかなと思いますよね。

ー その一致するようなライフスタイルを手にするためにはどうすればいいのか、気になります。

本を読むことじゃないでしょうか。

【略歴】
■ 水野 俊哉(みずの・としや)
1973年生まれ。
作家、出版プロデューサー、経営コンサルタント、富裕層専門コンサルタント。
ベンチャー起業。さらに経営コンサルタントとして数多くのベンチャー企業経営に関わりながら、世界中の成功本やビジネス書を読破。富裕層の思考法やライフスタイル、成功法則を研究し、自ら見出した成功法則を広めるべく執筆活動を開始。
商業出版を目指す経営者や自営業者を支援する「出版セミナー実践編」は、開講から9年が経過した現在も、受講生の約5割が大手出版社から出版決定という実績を持つ。
現在は自ら立ち上げた出版社2社や飲食店舗のオーナー業の傍ら、執筆やコンサルティング、出版プロデュース業を営んでいる。
国内外問わず富裕層の実態に詳しく、富裕層を相手に単にビジネスにとどまらない、個人の真に豊かな人生を見据えたコンサルティング・プロデュースには定評がある。
著書は、シリーズ10万部突破のベストセラーとなった『成功本50冊「勝ち抜け」案内』(光文社)の他、『「法則」のトリセツ』 (徳間書店)、『お金持ちになるマネー本厳選「50冊」』( 講談社)、『徹底網羅!お金儲けのトリセツ』(PHP研究所)『 幸福の商社 不幸のデパート』『「99%の人が知らない」人生を思い通りに動かす大富豪の教え』(いずれもサンライズパブリッシング)など多数。

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