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オーダースーツ業界にイノベーションを。ヴィクトリースーツが生まれた思いとは

オーダースーツ業界にイノベーションを。ヴィクトリースーツが生まれた思いとは

1000人以上のエグゼクティブを顧客にもつmuseのスーツは「ヴィクトリースーツ」と呼ばれている。自己実現を叶えるスーツとは?夢を見つける方法とは?高級オーダーメイドスーツを扱う株式会社museの代表取締役、勝友美(かつともみ)さんの、熱い思いをとことん聞き取らせていただきました。

営業は「バカ正直」になればすべてうまくいく

「目的買い」の世界へ切り込む

元々ファッション業界で20代の頃から働いているんですけど、既製服の販売員から始まり、そのあと海外の事業でヘッドハンティングを受けて、スタイリストの仕事をしました。販売もして、スタイリストもして、じゃあ次のキャリアアップで何を?と考えたときに、自分は「作る、縫う」ができないということに気づきまして、じゃあオーダーの業界に入ろうということで入ったのが始まりなんです。

オーダーメイドの仕事って既製服と違い、衝動買いではなくて「目的買い」なんですよね。お客様は時間をわざわざ作って来られます。今までファッション業界で培ってきたものとは違う仕事のやり方を知ることで、自分をアップデートしたいなと思って始めました。

オーダースーツ業界の原点回帰

― 高級スーツでいくぞ!と決められた理由みたいなものはありますか?

100%日本縫製ということにはこだわっていますが、弊社のスーツは決して高価なものではないと私は思っていますし、高級スーツでいくぞと決めたわけでもないんです。これは原点回帰というか、オーダースーツ業界は本来なら目的買いのはずなのに、ヒアリングをする時間や縫製を簡略化して、価値を下げることで価格が下げられて、世の中にばら撒くということをやってしまっているんです。

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価値を下げて、2着で3万円ですよ、5万円ですよ、オーダーですよ、と謳っているお店がたくさんあるんです。もちろん、そのクラスのものを求められる方がいるのでいいと思うんですけど、本来の在り方としてはやっぱり悪循環だと思うんです。

― オーダーというと、その人のための特別な感じがしますもんね。

「オーダースーツって一度は経験したいと思っていたのに、なんかぱぱっと測られて終わった」とか「どんなものを作りたいのかもヒアリングされずに、ただネイビーとかグレーとか、もう既製品としてお店に飾ってあるようなスーツを提案された」といった、顧客満足度の低下というものがすごく起きていたんですよ。私が当時働いていたお店でもそれが起きていました。

オーダースーツって、もっともっと人と話す必要も時間もあるはずなのに、お客様の役に立てていないなと思ったし、職人さんの技術力の低下、技術を伝承できていないという現状も、「このままじゃだめだよね」と思っていたこともあって、このやり方を始めたんです。

勝友美

オーダースーツ業界にイノベーションを

今後は価格競争じゃなくて、価値競争の時代になっていくはずですし、弊社のスーツは100%日本縫製で半分以上手縫いです。1㎜単位までこだわって採寸をして、1着のスーツを仕上げるのに70人以上の人の手が入ってるんですよ。

― それだけ多くの人が関わってることを知れば、20万円以上という金額は決して高いとは思いません。

普通のお店で作ったら、50万円とか80万円で売ってもいい価格のクオリティのものを、「ちょっと頑張れば買える」という金額設定にすることで手に取ってほしいという気持ちがあったのです。なので、高級路線でいこうと思ったのではなく、本当に自信をもって販売できるものを提供したいと思っただけなんですよね。

整っていない条件下でも勝ちにいけない会社は続かない

― 東京では六本木に店舗を出されていらっしゃいますが、六本木を選んだ理由は?

六本木でテナントをおさえてくれた社長さんがいて、「どう?」って言われて。でも六本木って一度も行ったことがなくてどんな街かも知らないし、ギラギラしていて夜の街で、外国人が多いというイメージが強かったです。(笑)

青山とか銀座とか表参道じゃなく、六本木。全くスーツに関係がないし、ましてファッションを求めて人が来るという街でもない。正直に言うと「立地の恩恵はまったくないよね」と、お話をいただいたときは思っていました。

― ファッションという視点でいくと、あまり良くない条件を選ばれたんですね?

創業期って与えられる条件は悪いことが多いと思うんです。会社が軌道に乗ってきたら社会的事実がついてきて、お客さんもついて、それでようやく有能な人が会社に入り出して、そこではじめて銀行も資金提供をしてくれるようになるので、最初ってなにもないんですよね。

何もないけど、条件が整っていない中で勝てないのなら、これからどんなにいい条件がでてきても勝てるわけがない。それがあるから勝てる会社なんて続かないと思ったんですよ。だったらもう与えられた環境で勝とう、と思ったんですよね。

新しい価値を作る存在になりたかった

― 大阪で最初始められたときには、すんなりいったんですか?

全然すんなりうまくいかなかったですね。先ほどお話したような5、6万のスーツ屋がつぶれている時代ですし、景気の影響もあったとは思うんですけど、一着10万以上のスーツ屋。しかも男性業界のテーラーの世界。おまけにレディースのスーツなんて、日本でフィッティングして作れる人間もいないところを、自分の力で勉強して作れるようになって、「レディースのオーダースーツというところにイノベーションを起こす」なんて言っていたので、周りから見たらビックマウスもいいところ、みたいな状態ですよ(笑)

私の中では見えている景色が、誰にも見えてない状態なので、それを信じてもらうにはあまりにも何も持ってなさすぎて。それでもすでに出来上がっているものを売るのではなく、自分で市場を作る、自分で新しい価値を見出してそれを知ってもらって、訪れることに価値のあるお店を私は生み出したかったんです。

作る側の信念と、買う側の目的をフィッティングさせる

― 最初の大変な状況からどういう風に変わっていったんですか?

目の前の恐怖に心を脅かされない信念の強さが自分にはあったんだと思います。支払がどんなに厳しくても、「お願いします、買ってください」とは絶対に言わない。私がどういう世界を作りたいのか、こういう風になりたい、こういう風にしたいっていう夢ばっかり語っていました。

勝友美

そうしたら、同じような考えを持つ社長さんや経営者の方が、「こんな若い子がそれに人生かけてる」「結構こいつすごい覚悟したな」という感じで見ていてくださっていて。その言葉や思いが口先だけじゃなくて本物だろうなっていうことを信じてくれた方がお客様になって、お客様になってくださった方たちが次のお客様を呼んでくださって、半年くらいで今度は予約がとれないようになりました。

「また会いたい」と思ってもらえる人になる

― 苦しい状況でも、外商のお手伝いをするようなお仕事は受けなかったんですね。

一切行かなかったです。必要な項目だけをささっと聞いて作るスーツ屋に、私はなりたいのではないから。人に何か自信を与えたい、ここで買い物したことで1㎜でもいいから変わった、成功に近づいた、自己実現につながった、そういうスーツを作りたい。だからちょっとおいでよって言われても、私はプロフェッショナルな仕事がしたいので行かないです。

自分の信念を簡単に曲げてしまったら、私の言葉を信じてきてくれたお客様に対して、すごく失礼だと思うんです。私の思いを信じてくれた人たちに不義理な行動は絶対にしない。それを貫いてやり続ける。そうすると、「スーツ屋」としてではなく「勝友美」として紹介してもらえるんですね。

目の前のたったひとりに「出会えてよかったよ」と言って頂いたり、また会いたいと思ってもらえる人になろうと決めていて。そのために目の前にいるこの人に何をしたらいいかということを、しゃべりながらずっと考えています。本当に目の前の一人ひとりがすべてですね。

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スーツを作ることが目的ではない

― お客さんに対して、90分くらいヒアリングするとのことですが、必ず「なぜこのお店に来ようと思ったのか」「どんな仕事をしていて、今どんな状況なのか」「これからどうなっていきたいのか」という3つの質問をするそうですね。

その方の目的がわかったら、「それにはこういう生地がいいですよね」ってお話もしていけますし、そのあとのフィッティングラインを決めているときも、その聞き取った話にピントを合わせながら作ることができます。

ただ、そういう聞き取りの良さを売りにしたいということよりも、スーツを作りに来た目的を、「作る側」と「買うお客様」が共有して共に作るからこそ、ミッション達成ということになると思うんです。

― やっぱりお客様の目的によって、勝さんが提案されるスーツというのも全然違ってくるのですか?

全然変わりますね。目的によっても変わりますし、その方のカラーというか出している空気によっても変わります。

― 例えば「仕事で成功したい!」というお客様だったとしたら、どういった提案になっていくんでしょうか?

仕事に成功したいというのは漠然としていて難しいんですが、その中で何を叶えたいのかによって変わりますよね。例えば営業成績を上げたいのか、社員の信頼を得たいと思われているのか、お客様の層を変えたいと思っているのか。もしお客様の層を変えたいと思っているならどういう層に変えていきたいと思っているのか・・・といったところまで話さないと、わからないですよね。

勝友美

在り方を問う営業の極意とは

― 著書のタイトルが「営業は『バカ正直』になればすべてうまくいく!」という、すごいタイトルなんですが、これはご自身の経験に基づいたことなのでしょうか?

そうですね。営業の本ってどちらかというと、テクニックが書かれているものが多いと思うんですけど、この本にはそういうことは書いていなくて、むしろ「在り方」を書いている本ですね。

人生のターニングポイントで、人って誰かの言葉だったり本だったりいろんなものに頼ろうとすると思うんですけど、私はそういうときに必要なものは、自信と勇気だと思っているんですよ。自信と勇気がないと、結局テクニックを持っていたとしても使えないし活かせない。私はそういうことをスーツを通してお伝えしたいと思っていますし、人に自信を与えられるような仕事をしたいと強く思っていました。

― そういうブレない軸というか、強い想いみたいなものは小さな頃から持っていらっしゃったんですか?

何かをしたいとは思っていたので、人に影響を与えられるような人になりたいなとは思っていましたね。たぶん、サラリーマンは向いてないし、専業主婦にも向いてないし。なんとなく自分の好きなこと・嫌いなこと、やりたいこと・やりたくないこと、そういうのははっきりとありましたね。

夢を見つける前に自分を見つけること

― 若い人も大人も、今ものすごく迷っているひとが多いと思うんですね。そういう人たちにアドバイスはありますか?

自分が何に喜びを感じるのかを知ることだと思いますね。いきなり夢を持つ、というのは難しいです、とてつもなく。「夢はこれにしよう!」といって、持てるものではない。やりたいことというのは明確に見つけるのはなかなか難しいし、使命ってもしかしたらもう決められているのかもしれないなとも思う。

だから無理して夢を決めることより、自分が喜びを感じられるものを持っている会社で働いたらいいんですよ。そうしたらそこで力を発揮できるから。そして力を発揮できること・喜びを感じて仕事をすることが、会社がその人を雇用する価値なので。だから何をやったらいいかはわからなくても、自分がこだわっていることや喜びを感じることはわかるはず。自分を知らないと、夢も見つからないと思うんですよね。

在り方で人を採用する

― 会社側も条件より、その人の想いが会社と合うかどうか、が最終的には大事ですもんね。

本当にそうです。弊社の社員は、みんな同じ夢をみて、同じ方向をみてやっています。それは私が「この指にとまってください」という夢を明確にたてているから。採用条件も、特に服飾経験者を求めているわけではありません。むしろ未経験で、今まで何をやって来ててもいいと思っているんですよ。何をやっていたかよりも、自分が何に喜びを感じて何が好きなのか、に軸が通っているかを見ます。

夢をたてていない会社があまりに多い、と私は思っています。今日何のために働いたのかわからない、目の前の作業や業務に追われている。例えば、何のために木を植えているのかわからない、というのと同じです。でもそれは森をつくるという目的があるわけですよ。その森がどういう形をしているのか教えてあげないで、目の前の木だけ植えてというから植え方間違えるし、水の量や肥料のタイミングを間違えるんですよ。それで仕事がバラバラになり、結局派閥ができていく。

だから会社側も「こういう在り方」の人を採用する、というのを明確にしていくべきだし、自分の夢に迷っている人は自分の中の棚卸をして、答えを見つけるといいと思います。キャリアを変えても「変えられなかったことは何か」ということは、自分と向き合えば必ずでてきます。

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人生をかけて叶えたい夢

― オーダースーツの世界に入ったきっかけは、キャリアのステップアップのひとつだということでしたが、さらにその先があるということでしょうか?

今はもうキャリアのひとつというより、ブランドづくりという夢が出来ましたからそれが全てです。それまでは、何かができるようになったら飽きて次、次ってやっていたんですけど、人生かけても惜しくない夢というか目標を手にしたときに、「これはやばい!」と思ったんですよ。

ブランド作りって、きっと人生をかけても到達できないものだからこそ、人生かける価値がある。そんな感じです。そして、muse百年史を作りたい。百年先まで続くブランドにしたい。自分がいなくなっても生まれ続ける価値を作りたいと思っています。

勝友美

【略歴】
勝友美(かつともみ)
株式会社muse 代表取締役社長

百貨店にてファションにおける幅広い専門知識を習得。トップセールスとなる。国内外でスタイリストとして活躍後、テーラーの世界へ転身。ファクトリーブランド直営店始動に参加。2013年高級オーダーメイドスーツを扱う株式会社museを立ち上げ独立。現在、大阪の淀屋橋と東京の六本木の2店舗を経営。着ると仕事もプライベートも人生の勝者になれるという「ヴィクトリースーツ」ブランドとして全国からお客様が絶えない。

オーダーメイドスーツ専門店Remuse