女性リーダーとして政治家としてチャレンジを続ける

女性リーダーとして政治家としてチャレンジを続ける

子どもの頃からボランティアが身近にあったという高橋野枝(たかはしのえ)さん。活動を広げていくなかで、あるとき自分にリーダーシップがあること、国会議員に向いていることを知らされたといいます。困難なことに挑戦し、「やらない」ということを選ばない、そのポジティブな生き方は、どこからくるのでしょうか。社会のため、弱い者のために、日々活動を続けていらっしゃる高橋さんの、女性リーダーとして、政治家としての生き方をとことん聞き取ります。

実力が発揮できる場所は会社じゃない

ー 高橋さんは会社に就職された時、いろいろやりづらかったということですが?

事業内容は大好きだったのですが、どうしても能力をもて余すという毎日が続きました。会社というのは事業の範囲で利益を出すことが目標です。私自身は、社会全体を良くしたいと考えているので、新入社員なのに生意気だったと思うのですが、自分が考えてることのほうが、会社の事業内容より大きいという状態が続いたんです。

ー それで上司の方と衝突されたりとかは?

衝突するというより、仕事中は自分を出さないことに徹していましたね。ふつうに過ごすけれど、「ここは自分の実力を発揮する場所じゃないな」って。自分が力を発揮したら、会社も私を扱い切れず迷惑だろうなって。

ー そういう状況って苦しくありませんでしたか?

自分だけ違うというのは、日本の企業社会の中ではやりにくかったですね。

いつか力を発揮できるときが来る

ー 会社の枠で生きていくのは楽かもしれませんが、無理やり自分を枠に閉じ込めていく事がすごく窮屈だったと…

窮屈ですし、枠に当てはまらない、押し込めても押しこめられないというのはわかっていました。それに、いろいろなボランティア活動の先輩から、自分の殻を打ち破ることの重要性や、組織の枠組みをこえて、社会に奉仕するという考え方も習っていたので、会社の外で自分がいかせる場や時期がくるんじゃないかとも思っていました。ただ自分がまだ20代で若かったので、今ではないし、会社でもないっていうことぐらいしか分かってなかったですけど。

ボランティア活動で実感した、リーダーシップの大切さ

ー そのあと、ボランティア活動のほうに関わっていかれますが、どういう想いでなさっていたのでしょうか。

小さいときからボランティア活動が身近にありました。ピアノ教室では、クリスマスになると高齢者の施設などに演奏に行ったりしていましたし、ふだんの生活とボランティア活動が一体化した生活をずっとしてきていて、ボランティア活動のほうが自分の性には合ってるなと思っていました。

ただ若かったので、キャリアチェンジするとか、そういったことはわからなかったですし、自分が稼ぐのと社会奉仕は別だと考えていました。

ー ボランティア活動ではどのような学びがありましたか?

仕事は上下関係ができているので、言われたことはやりますが、ボランティアは有志の集まりなので、作業を皆で分担しても、やるって言ってやらないことも起こりえます。会社のようにはうまく進まないので、それぞれの資質ややる気、組織の運営はみんなの腕にかかっているんだと思いました。もし社会的地位のある人が、ボランティア活動していても、その社会的地位は関係ない。そこが難しいし面白いと思いました。

ー そこでリーダーシップを取る人が重要なのですね。

会社だったら、嫌でも毎日仕事に来ますが、ボランティア活動ではそうはいきません。「楽しくないな…」と思うメンバーがいたら、次は来ないかもしれない。リーダー的な立場になったとたんそれに直面しますよね。

社会のためというだけではなくて、全員が楽しくて「またやりたい!」と思ってもらわないと、そのボランティア活動は続かないのです。そこがリーダーの腕が問われるところかなと思いました。

ー そのリーダーシップというものにはだいぶ苦労されて、悩んだり考えたりされたのですか?

日本ではリーダーシップ教育をしないので、「会社だったらうまくいくのに」と思うことがたくさんありました。自分の社会的地位や、年齢に関係なく、お互いの人間性に惹かれてまた一緒に活動しようって思ってもらえるような、真の意味でのリーダーシップを求められるのですが、そのときにはまだ、リーダーシップが何かもわかっていなかったし、自分にリーダーシップがあるとも思っていなかった。周りをみても役職がある人がリーダーシップがあるとは限らないなって、失礼ながら感じていましたね。

一方で、肩書きはなくても、近所のおばちゃんとか、誰もが相談しに来るような人もいる。リーダーシップは、本当に肩書きや年齢には関係ないと思いますね。

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国際ユース会議で気づいたこと

ー ボランティアをやりながら、リーダーシップのための具体的なアクションとして、ユース会議に参加されたということですが、そのあたりのことを伺えますか?

国際赤十字ユース会議は、スイスで開かれる、国際人道法を教えるキャンプです。私は、その大人側のボランティアとして派遣されました。テントと寝袋をスイス陸軍から借りて、ちっちゃな村の学校の校庭にテントを張って、世界中から集まった赤十字のユースに国際人道法を教えるとキャンプでした。朝ご飯は、村長自らがつくってくれました。

日本から行った青少年も大人も、どちらかというとスイスで夏休みを過ごすという気軽な気持ちで参加したのですが、紛争国からみると、自分たちが読み書きできて奨学金貰ってスイスに来れるって、とても名誉なことなんですね。

責任も重大で、国に帰ったら国際人道法を広めていかないといけない。戦争中はなるべく女性や子どもに手を出さないとか、負傷した人は敵だとしても助けるとかっていう、現実にそのノウハウを伝播しないと国として生き残っていけないんです。

アフリカの代表の青少年は、エイズになってないだけラッキーだから、自分は国を背負う責務があると、若いのにわかっている。日本から行った私たちは、そこに行かないとわからなかった新たな発見をすると同時に、日本ってちょっと甘えてるなって気づきましたね。

リーダーシップを突き詰めると、政治家になる

ー 高橋さんはリーダーシップを海外でたくさん経験し、学んでいたということですが、その辺りの経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。

まず2012年に、JWLIという女性リーダーシップのプログラムで、ボストンに一ヶ月間留学しました。リーダーシップは、主に男性向けに作られているので、ジェンダーの違いということと、人格で引っ張るリーダーシップとは何かということを学びました。

適性検査の結果は、「国会議員が向いている」

勉強しながらボストンのさまざまな体験ボランティアに行きました。その間に適性検査を受けて、帰国前日にフィードバック面談があったんですね。その時まで私は、NPOを作るかNPOを受け継いで、ボランティアで生きていくと思っていたのですが、適性検査では、最低で国会議員が向いているという結果でした。その時「リーダーシップを突き詰めると政治家ということになる」と初めて気づきました。

ー この時に政治家という選択肢が人生の中に入ってきたわけですね。

もう36歳だったので、かなり遅かったと思います。

持てる能力を発揮しないのは、社会的損失だ

ー その後、すぐ政治家をめざしたということですか。

2012年の時点では、国会議員といわれても日本的な考え方じゃないので、受け入れがたくて誰にも言わず、一年間知らん顔をして過ごしました。(笑)

ところが、一年後に米国であった、別のリーダーシッププログラムで、また同じ判定が出たのです。そのときは、「本人が認めることから始めなさい」と。結局自分のリーダーシップの能力を、誰かにあげるわけにはいかないじゃないですか。私が国会議員になりたくないとか、なれないかもしれないというのは個人的な都合であって、持てる力を発揮しないのは社会的損失だということも同時に習って、なるほどなと思いました。

適性があって、リーダーシップの能力があり余って、誰がどんな検査しても最低で国会議員という結果になるのだから、まずその力を発揮するためには自分が認めて、皆に公言することだと言われて…。そのときは自分でも認めましたね。「自分には能力がある」なんて、日本的じゃないのですけれども。

もともとボランティア活動を通じて社会をよりよくしたいから、自分にできること、自分にしかできないことがそうだと言われたら、とんでもない結果ではあるものの、まず受け入れてやるしかないなと思ったのです。それで、今から国会議員になりますということを、皆に言うようにしました。

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国会議員になるため、手探りの道をゆく

ー 政治家のほうにどんどんシフトをしていくわけですが、どういう段階を踏んでいったのでしょうか。

友人や仲間が、政治家を紹介してくれたり、私が成長してなるべく幅広く奥深く考えたり活動できるように、私自身を導いてくれました、心から感謝していています。今までにない道を行くので、周りも含めて手探りなのですが、社会に羽ばたけるように、いろんな機会を設けてくれたりしました。その中のひとつが、2015年にあった旧民主党の女性の全国公募です。

衆議院選挙は対立候補がお手本?

ー 2017年の衆議院選挙に神奈川の2区から出馬されるのですが、神奈川2区というと、自民党が大変強い選挙区ですね。そこに自ら飛び込んでいったというのはどういう心境だったのでしょうか。

自民党の神奈川2区は、実際に活動がとても活発な選挙区です。他の選挙区も実際にみてまわりましたが、神奈川2区は完璧でスキがないのです。ご本人も非常に地道に活動していらっしゃるし、ご本人が留守のときも、地元の議員や秘書やご家族や、支持者が完璧に活動している、自民党の他の選挙区の人たちが修行に来るほど、お手本になっている選挙区なのです。

野党が混沌とした状況にあるなか、身内に手本がないのであれば、敵をお手本にすればいい。神奈川2区は真正面から挑む機会があるので、その後の選挙に向けて成長できるんじゃないかなと思ったのです。

失敗は次の成功へのスタートだ

ー ズバリ聞きますが、勝算があってその選挙区で出られたのですか。

今回は勝てるとは思っていませんでした。

ー 当選にいたらなかったときの気持ちってどうでしたか。

選挙には負けましたが、状況が整っていないなか、想定の何倍もの票がいただけたので、とてもうれしくて、皆でお祝いしたくらいです。残念だったねという人はいなくて「おめでとう!」という連絡ばかりだった。

ー それはすごいですね。それは高橋さんの失敗に対する向き合い方とか、そういうところからきているんでしょうか。

そうですね。高みの見物に甘んじるのではなく、実際に自分自身が一番きついことをやるという選択して突っ込むから、いかに大変かとか厳しいかとか、逆に自分だからこそ成し遂げられたことがわかるのです。これは責任とリスクをとった本人にしか感じることのできない醍醐味です。

失敗や挫折は、次の成功のスタートであって、「しない」より「する」ほうが、その分先に進めます。がっかりしたり落ち込んだりはしないです。

ー 失敗を繰り返していく中で、成功に近づいていくっていうような、そういう気持ちですかね。

失敗や挫折が数え切れないほどあって、成功ってほんの一瞬だと思うんですよね。だから成功したければ、失敗や挫折をいとわないことです。失敗や挫折を積み重ね、自分ならではの肥やしをつくることです。それは成功の礎です。

持てる力を社会に還元していこう

ー 政治家としての原動力といいますか、パワーの源というのは何ですか。

親戚の子どもが生まれつき片耳がないのですが、彼女はとてもやる気があります。一方で、健康で恵まれた生活をしていても易きに流れる、努力してない人も多い。わたしは、その親戚の子はまだ子どもで身内ですが、心から尊敬しています。自分で言うのはおかしいのですが、自分に能力があって、道が開かれチャンスがある以上は、努力を積み重ねることが社会に対する責務だと考えます。

ー 基本的にはご自身の持ってる力を社会に還元していくのが大きなテーマということですね。今後はそのような活動をしていく予定ですか。

もともと自分自身が取り組んできた分野は、女性、子ども、障害者なので、いろいろ条件がそろっていて恵まれている男性よりは、女性や子どもや障害者に焦点を当てていきたいですし、普段からそういう活動をしています。

例えば、立派な組織が一流の施設でやる式典に参加するより、若い人たちが手探りでやってる小さなワークショップや勉強会のほうが私には向いてるし、社会をよくすることにつながっていくのかなと思います。

今は、女性進出の過渡期

ー 高橋さん自身、女性の政治家としてやりづらいなあと思うことはありますか。

たくさんあります。例えば、女性というだけで、言葉は悪いのですが舐められるというか、地方議員でいいんじゃないのとか、秘書やらないのって言われるのですけれど、仮にわたしが男性で偉い人でも、「そういうことって言えたの?」って思うので、暗に男尊女卑というのは多いと思います。

ー 女性の社会進出は、以前と比べると前進したようにも見えるのですが、高橋さんから見てどうですか。

おっしゃるとおりですが、進化し続けているがゆえに、男性も女性も大変なのかなと感じます。例えば、同年代の友人はほとんどが共働きですし、男性も家事をする時代です。家事を子どもの頃から手伝うことが多い女性が、結婚をしたとたん夫に家事の仕方を教えなくちゃいけないということになる。過渡期だから、教えるほうも教わるほうも、ちょっとストレスが溜まっていると思います。

ー 社会が変化していく中でのストレスが生じている段階って事ですか。

日本は男尊女卑の国である一方、お母さんや女性は尊敬されていて、求められている役割も多いです。わたしが提唱する女性リーダーシップというのは、女性が男性に追いつけばいいというのではありません。人材としてみたとき、日本の女性には、しなやかさや、ささやかなところに気がつくなど、男性にはない良さがあります。男性と女性が、お互いのいいところを見つけて、社会でも家庭の中でも取り入れるのがいいんじゃないかなと思います。

キーワードは「やる」ということ

ー 高橋さんの仕事の流儀といいますか、お仕事をするうえで背骨になっている考え方とか、ありましたらお伺いしたいのですが。

自分で毎日唱えてるのは、「チャレンジ、成長、努力」。あとは、「やる」ということ。「やらない」という選択肢はなくて「やる」ということ。

編集後記

ひとつひとつの言葉に重みと説得力があり、高橋さんから醸し出される空気に引き込まれてしまいました。「最低でも国会議員」という言葉に正直驚きましたが、高橋さんのような世界に通じる真のリーダーシップ像を持つ国会議員が増えていくことで、本当に日本が良い方向へ向かっていくのだろうと感じます。

【略歴】

高橋野枝(たかはしのえ)政治家

1974年東京都出身、横浜市在住。立教大学 大学院 異文化コミュニケーション研究科修了。日本の組織社会に限界を感じ、性別や属性に関係なく、誰もがいきやすい社会をつくることを目指す。ともに考え行動する人を増やしていくために、女性のリーダーシップをテーマとしたワークショップやメンタリングを手がけている。2017年秋の衆議院議員選挙に立憲民主党公認 神奈川県第2区から立候補。

日ごろの活動はFacebookに発信中
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