勉強嫌い専門プロ家庭教師が伝える「教える秘訣」とは?

勉強嫌い専門プロ家庭教師が伝える「教える秘訣」とは?

モチベーション理論や記憶法、心理学を駆使し、これまで指導した生徒の成績アップ率100%、第一志望校合格率90%超を誇る、勉強嫌い専門プロ家庭教師の佐々木恵さんに、大人でも活用できる「教える秘訣」をとことん聞き取らせていただきます。

裕福ではなかったからこその母の教え

ー 現在は教育コンサルタントとして活躍されていますが、以前は会社員をされていた?

大学を卒業して、新卒で大手メーカー系経営コンサルティング会社に就職しました。入社してすぐの頃は、社内の各部門のみなさんに話を伺って「こういった活動があるよ」と紹介する、グループ会社の社内広報誌の作成を担当していました。そこから、ホームページやメールマガジンなどの広報活動を行う業務に携わるようになりました。

ー 情報を聞き取って発信するお仕事を担当されていたということですね。そういったキャリアから、どのようにして教育コンサルタントとして独立することになったのでしょうか?

もともと大学で経営学を学んでいて、いつかは一人で何かをやりたいという気持ちがずっとありました。実家が裕福な家庭ではなくて、大学まで行くのは学費の面で苦労もあったと思うんです。そんな中で、母がなぜ大学進学を薦めたかと言うと「何か手に職をつけなさい」という教えが根底にあった。社会に出ても困らないように、家族になにかあっても一人できちんと生きていけるようにと。

ー 学生の頃からそういった気持ちがあったから、若くして独立を実現されたのですね。

そうですね、会社員を2年半やって独立したので、25歳頃のことです。

ご縁の重なりに身を任せた

ー 会社を辞めて独立することに、不安はありませんでしたか?

勤めていた会社は職場環境のいいところだったのですが、「いつか一人で何かやりたい」と考えたときに、いつまでもこの会社にはいないだろうなとは思っていました。独立すると決めて道を模索している頃、たまたま家庭教師をやって欲しいという依頼をいただいたんです。

それで、やってみたら面白かった。その、最初にご依頼くださったお母様が顔の広い方で、人を呼んで下さって広がって。もともと「家庭教師をやるぞ!」という感じでの独立ではなかったので、本当に流れに身を任せた感じですね

「教える」という仕事

ー そもそも家庭教師を依頼されたきっかけは何だったんですか?

そのご家庭が依頼されていた前任の家庭教師が、大学生で、社会人経験のない方だったそうなんです。なので、社会人経験がある人を、ということで声をかけて頂いた。マナーがきちんとしているということで親御さんから喜んでいただけたようです。

ー 最初の教え子の方はどんな方でした?

中学2年生のお嬢さんでした。ちょうど受験を控えていて。

ー そこから今が6年目の年ということですね。これまでの教え子の方は5期連続で第一志望校合格率90%超だとか。すごい実績です。

生徒たちが頑張ってくれたという一言に尽きます。

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子供と家族と共に戦略を立てるから結果を出せる

ー なかなか、頑張ったからと言って結果に表れにくいこともあるかと思うのですが、何か秘訣があるんでしょうか?

まず、どこを目指すのかという目標設定を明確に設定します。そして一緒に作戦を立てます。戦略ですね。こちらにはかなり力を入れます。

ー 受験にも戦略立案って大事なんですね。

これまで担当してきた生徒さんたちは、勉強があまり得意ではない、まったく好きではないというところからのスタートが多かったので、親御さんも巻き込んで、親御さんとしてはどのレベルのところを目指して欲しいと思っているのか、お子さん本人はどうしたいと思っているのかをじっくり聞くところから始めます。指導後によく親御さんから言われるのが「非常に丁寧にサポートしてもらって、メンタル面までケアしてもらって助かりました」と。

信頼関係を作るからこそ頑張る環境ができる

ー 大手の家庭教師ではそこまで手が回らないこともあるでしょうから、そこまでケアしてもらえると安心できますね。
よくメンタル面でのケアがものすごく大事と聞きますが、どういうことに気をつけていらっしゃいますか?

生徒さんの話を徹底的に聞くことを心がけています。勉強に関係ない話もたくさんして、女の子とは恋愛の話で盛り上がったりしますね。恋バナ、愚痴、恋バナ、みたいな(笑)

ー それがあるから信頼関係があって、先生の言葉に耳を傾けるようになる。

勉強しなさいだけでは親や学校の先生とまったく変わらない。そうではなくて「近所のお姉さん」を目指しています。

「近所のお姉さん」というポジション

ー 私の近くにもそういう方が居て欲しかった。

私自身もそう思っていて。「近所のお姉さん」がいたらいいなって。なので、自分がこうしてもらえたら嬉しいだろうなっていう、理想の先生を徹底的に追求しているという感じでしょうか。中高生の頃って、そういう、学校の先生でもない、親戚でもない誰かに話を聞いてもらいたくなるときってあると思うんです。

デリケートな話ですけど、例えば、いじめの問題とかって学校では話せない、親や親戚にも話せない。となると、まったく利害関係のない誰か、それでいて自分よりも経験を積んでいる誰かに聞いて欲しいことってあると思うんですよね。そういう存在を目指しています。企業外のコンサルタントといったところでしょうかね。

ー 確かに子どもの頃、そうだったかもしれない。何か「溜まっているものを聞いてくれる。」そういう場所って重要だったかもしれませんね。

今って特にそういう場所がなくなっているように思います。核家族化も進んでいるし、親戚も遠くにいたり、少なかったりして。私に家庭教師を依頼してくださるご家庭は、圧倒的に一人っ子が多いんですね。一人娘を大切に育てていて、という。

『部下も気づいていない「やる気」と「能力」を引き出す教え方』

ー 佐々木さんの著書に『部下も気づいていない「やる気」と「能力」を引き出す教え方』という本がありますね。小中学生に教えるということと、部下に教えるということは、基本的には同じだとお考えですか?

基本的には同じだと思っています。教える上で一番大切なことは「信頼関係」だと思っているのですが、この事に大人も子どもも違いはないと思うので。著書の中にも引用させていただいたのですが、アリストテレスは人を動かす上で大切な3つの要素ということで「ロゴス」「パトス」「エトス」を挙げています。

ロゴスは論理性、パトスは情熱、エトスが信頼性を指す言葉で、この3つのすべてが揃わないと人が動かない、という論理ですね。その3つの中で何が一番大事なのかと問われれば、間違いなくエトス(信頼性)。教え方の本を読んだりして、ロゴス(倫理性)やパトス(情熱)の部分を補完することはできる。でもやっぱり大事なのって信頼関係ですよね。

最近の世の中って、セクハラが問題になったりだとか、すぐ「○○ハラスメント」になってしまうじゃないですか。それって信頼関係が築けていないからそうなるんじゃないかなと思ったりして。

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戦略的な自己開示

ー 確かに信頼関係は大事ですよね。徹底的に話を聞く、なるほどと思いました。

基本的には聞くことなんですけども、それに加えて戦略的と言いますか、効果的な自己開示も重要ですよね。私の頃はこうだったよという話をするときに、成功談ばかり話してしまうとイヤな感じになってしまう。失敗談をうまく取り入れながら「私も勉強できなかったんだよね~」とか「私もこんな間違いをしてしまったことがあって…だからあなたも気をつけてね」とか。適度に自分の話もした方がいいと思いますね。

ー 佐々木さんの書籍も読ませてもらって、今のお話でもそうですが、要所要所でいろんな言葉、ビジネスの言葉であったり、心理学の言葉であったりを使われていますよね。それもわかりやすい。すごく勉強をされているんだろうなと伝わってきます。

ありがとうございます。自分が勉強を教える立場なのに、勉強をしないのは信頼関係を失うと思っています。「勉強しなさい、私はしないけど」では人はついてこないですよね。

自分の好きなことが自覚できていない?

ー みんなスキルアップしたいし、して欲しいと上司は思っているし、自分の能力をもっともっと引き出したいと思っている。それなのになかなか実現しない。そんな時、どういうポイントに意識を持っていけばいいでしょうか?

私が気になっているのは、皆さん自分の好きなことを意外と自覚できていないのではないかなということです。自分の適性を自覚できていない方って、多いと思います。「やりたいことがない」とか「自分が何に向いているかわからない」という相談を頂くことも多いですね。社会人の方でも「自分が何をしたいのかわからない」あるいは、やりたいことに固執しすぎていて、見失ってしまっているような相談が非常に多くて。なので、まずは自分が何をしたいのか、どうありたいのかを明確にすることじゃないでしょうか。

今の時代の流れとして「やれと言われたからやる」という風潮は薄れているように思います。皆さん「やりたいからやる」というパワーが非常に強いというか、今成功している方々って、自分がこれをやると決めたからやるんだっていうエネルギーがすごい。

昔の方々って、達成だったり熱意だったり、そういったモチベーションで頑張ってこられた方も多かったように思います。「自分を認めてもらえる」とかそういった気持ちで頑張っていたのに対して、今の若い世代は、達成感よりも「没頭できる」とか「熱中できる」とかそういった、自分が好きだったり興味を持てたりすることを重視する傾向にある。だから、上司と部下の感覚がかみ合わないこともありますよね。「やれって言っただろ」、「いやいやいや~」みたいな。言うことを聞かないとか、すぐ帰るとかそういう風にとられてしまう。

バブル世代の方々は、スケールの大きな仕事や、社会の穴を埋める為に頑張ってきたっていう人が多い。それに対して今の方々は「没頭」と「人間関係」を重視しているんですよね。自分の半径1mとか5mくらいが幸せになることを望んでいる。やる気が出ないっていうことは、自分の好きなことや得意なことと、現在の仕事がつながりが見えてないということですよね。なので、まずは自分の好きなことを自覚して、そことのつながりを見出すと自ずとやる気につながっていくのではないでしょうか。

自信の根拠を演出してあげる

ー 勉強が嫌いな子に興味を持たせるコツはありますか?

自信を持たせてあげることです。自信って2種類あると思っていて、「自己肯定感」と「自己効力感」という2つなんですけども、そのうちの「自己効力感」を上げるというところにフォーカスを当てて考えていく。自己効力感とは私はできる、みたいな気持ちのことですね。根拠なく自信を持てる子っていますごく少ないように感じられて、自信を持つ為に根拠が必要なんです。その根拠をどうつけてあげるか、根拠を演出してあげる、と言いますか…。

勘違いする力

先日ボクシングの世界チャンピオン、竹原慎二さんの講演会に行きました。なんでボクシングを続けられてチャンピオンになれたのかっていう質問に対して、「勘違いですね」とおっしゃっていました。「勘違いでここまできてしまった」って。私、それって大いにあるなと思って。

ああ、なるほどなって思ったんです。最初はみんな勘違いだと思うんですよね。あ、これ自分できるんじゃないかなって。その勘違いを自分で出来ればいいんですけど、それを演出してあげるのも周りの仕事かなって思っています。「あれ?天才なんじゃない!?」って周りが持ち上げてあげて、「あれ?自分天才なのかな?」って。私自身独立したのも、「あれ?私いけるんじゃない?」と思ってしまったからで、なんとか5期、6期とやってこられているのも「私いけるんじゃないかな」と思ってきたからという部分があったので。

そう思わせてあげるためには、本人ができそうなギリギリちょっと低いぐらいの課題を与えて、出来たねすごいねと褒める、あるいは本人の能力よりちょっと高いものをやってもらって、「これが出来るなんて、もう天才としか思えない!」くらいのことを言ってあげる。いずれにせよ、本人のレベルよりちょっと下か、ちょっと上のものを達成してもうことが大事です。うまく達成してもらって、まずは勘違いをしてもらう。そこから「出来る」を積み重ねて根拠をたくさん貯めてもらって、やっぱり自分は出来るんだなと思えるような演出を周りがしてあげる。

ー それは大人の世界でも当てはまりますよね。

まったく同じだと思います。大人だって多かれ少なかれ自分の能力を信じたいところはあると思うので。

ー 成功のきっかけって、勘違いの部分が大きいですね。

「勘違い力」ってありますよね。世の中の原動力は勘違いだと思う。

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教える経験と学ぶ経験

ー 最後に「私の流儀」を教えてください。

勉強って楽しいと思います。勉強をしていて損することとか困ることって、一切ない。学びをしていて困ることってないと思うんです。プラスでしかないと思うので。だから、勉強嫌いですって言う方々、勉強イヤなんです、したくないんですっていう子どもたちを、1人でも減らせたらいいなって思っています。

自分の専門を持つ

ー 子どものころは一生懸命勉強したけど、大人になってから勉強してないなっていう方も多いかもしれませんね。そういう方はどうやってきっかけを作ればいいでしょう?

自分の専門を強く持って欲しいなと思います。「これは自分は負けないぞ」っていう勘違いです。その勘違いを原動力にいろんなことを深めるでもいいし、広げるでもいいし。その専門の本を読んでみようかな、とか、なにか1歩踏み出して欲しいです。

教えることで多くの事に気づく

ー 誰かに何かを教えるスキルを身につけたいっていうことでもいい?

何かを教えるってすごく重要ですよね。教えることによって自分の穴だったり、自分のわかっていないこと、自分のクセに気がつく。だからこそ今持っている専門を他の人に教えるという経験をみなさんにしていただきたい。なので教え方に自信のない方はぜひ 連絡を(笑)

教えるために勉強する

ー 教えるっていうことは自分が理解していないと出来ないことですもんね。

そうなんです。「自分は教えるのにはまだ早いんです」みたいなことを思って欲しくない。教えるという場が設定されたことによって勉強、インプットを開始するじゃないですか。なので、物怖じせずに教えるという体験にチャレンジしてほしいなと思います。

【略歴】
佐々木 恵(ささき めぐみ)
勉強嫌い克服専門家庭教師 教育ライター
家庭教師のさくら 代表 日本心理カウンセラー協会 正会員

勉強嫌いでみずから机に向かわない、苦手意識が強く成績が伸びず悩んでいる中学生を対象に神奈川県横浜市・川崎市で活動するプロ家庭教師。大手メーカー系経営コンサルティング会社に入社、新卒で事業戦略部門に配属、その後広報宣伝課 新規事業開発部を兼任。顧客交流会の現場統括担当として60名のスタッフを束ね200名来場のイベントを成功させ、入社2年目で社内の表彰制度で二冠を受賞した実績を持つ。

同社を退社後、学生時代に大手個別塾講師として4年間で述べ200名以上を指導していた実績と前職の広報宣伝で学んだスキルを活かし、プロ家庭教師として独立。

モチベーション理論や記憶法、心理学を駆使し「なかなかできるようにならない子ども」の気持ちに徹底的に寄り添いながら、生徒の性格や個性に合わせたタイプ別指導を行う。これまで指導した生徒の成績アップ率100%、第一志望校合格率100%を誇り、定期試験の得点が18点から81点まで大幅アップした実績も。独立3ヶ月以降、常に満席となり、予約が取れない家庭教師となっている。

佐々木恵WEBサイト
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