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のべ25万人の接客を観察してきた、完売王が見据える次世代の販売哲学とは?

のべ25万人の接客を観察してきた、完売王が見据える次世代の販売哲学とは?

小売業界が、AmazonなどのAIに取って代わろうとしている昨今、現場の販売員ができる事は何なのか?売れないモノを、売れない場所で売り続けて、約3万時間。延べ接客人数25万人を観察してきた、実演販売のプロフェッショナルである、千葉商科大学大学院客員教授、株式会社カワセ・クリエイティブ・カンパニーズ代表取締役の河瀬和幸(かわせかずゆき)氏に、変化する小売業界を生き抜く秘訣をとことん聞き取ります。

お客さんと接することによって、相手を知る

小売りはAmazonに勝てないですよ、絶対。なんで勝てないのかというと、何もしてないから。何もしてないのだけど、売れたような気になっている。売れたような気になっている理由は何かというと、POS、単品管理するでしょう。あれしか見ないから、プロセスを見ていないから。

結果しかわからないから。たった一人の中国人が買っても、一万人買っても同じでしょう。でもたった一人が買っているから広がりがない。じゃあなんでたった一人の中国人が買うことに関してだれも見破れなかったのかというと、お客さんに関心がないから。

皆、お客さんに関心があるふりをしている。精神論を持ち上げて、下の人に皆で押し付けているだけだから、だからダメなの。本音を言っていない。自分の立場しか考えていない。お客様のことを考えましょうという標語を掲げているだけで、本当にお客さんのことを考えている人はいないですね。

僕、現場行くでしょう。現場行ってエプロンをするでしょう、そうするとお客さんに何をしているのかが見えるから。エプロンをしたり、その服装をしていると、怪しまれないから。それで僕はお客さんに聞くんです。「なんでこれ買うの?」みたいな風に。そうしたら本音がわかる。

でも例えば百貨店の社長が、お客さんと接することはありえないから、接するというよりただウロウロ歩くだけだからわからない。接するというのは、その人になりかわって、その風景の中に溶け込まないといけない。でないとお客さんは本音言わないんです。

― いきなり本質ですね。伝えたいことがあふれている感じです!

なんで聞く人がいないのかというと、聞く技術を持っていないから。なんでその技術を持っていないのかというと、販売員は使い捨てだから。だから人材派遣会社あるでしょう。もともと人材派遣会社というのは、技術を持った人が、パソコン、いわゆるコンピューターの技術を書いたんですね。

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相手を知らないと、商品は売れない

昔から販売員は体ひとつあれば、なんでも応用がきくという、いわゆる誰でもできる世界だから、というふうに今でも皆が思っている。でもそれを言ったら語弊があるから、教育していますよ、というけど、何のことはない。ただ、体が健康というだけの世界。そういう世界の中に放し飼いにしているから売れないだけで、だから例えば、中国人が一人で買っているということさえ見抜けない。

売れる人は簡単で、押し売り。それでは1回目は買ってくれるけども、2回目、3回目は買ってくれないんですよ。その押しの強い、我の強い人達が、販売員になる。それは、この人だから売れるという神話を皆信じたから。要するに販売員のレベルが低い。

― いきなりバッサリ行きますね(笑)

その最底辺にいるんだということを販売員は自覚していないから、自分が自分と向き合わなきゃダメ。自分は最底辺の仕事にいるんだということを自覚しなくてはならない。

だからどんなに販売の本を書いても、やさしくないと読まない。読めない。行間が空いているようなやさしい事を書かないと、販売員には売れない。もっともらしいことを書くと売れる。だからよく講演先で、本を書いている有名な先生と、一緒に売りましょうよと言うと、皆言います。やめてください、と。売れるわけないじゃないですか、と言う。でも僕は売れる。なぜならば、実践派だから。多くの人は、剣道の竹刀持って、強いって言っているだけで、剣道の竹刀と実践の刀は、違うの、重さが。その本音をできるだけやりたいですね。

竹刀を持っている人は、相手と戦うと切られる事がないから、スポーツ。スポーツと、実践は違う。実践は、切られると痛い。そうすると、どうやって倒れるのというと、後ろに倒れる。刀を持っている人は逃げようとするから、後ろに倒れる、怖いから。でも後ろに倒れていたら、相手を切れない。ということは宮本武蔵と同じように、踏み込みが大事。

その踏み込みとは、相手のことを知ること。相手のことを知るとは、相手の剣の長さが、自分の剣の長さとどれぐらい違うかと知ること。お互いに振り下ろした時に、自分のほうが5cm長いだけで相手を全部切ってしまう。でも相手は5cm短いと一緒に振り下ろしても、ここのところをかすっていくだけ。そのことを知らない。だから敵を知らないとダメ。

販売というのは敵を知らない、自分も知らない、何も知らないということでやっているから、Amazonに100%負ける。でも100%負けるにもかかわらず、皆がオロオロしているのは、何もノウハウがないから。僕はノウハウがある、それだけ。

― 営業でも同じですよね。皆結構、ダメな理由を聞けてないですね。

例えば僕は言うんですよ、「喋る時に、右の耳から入れるのと、左の耳から言葉を喋るのかでは、売り上げが20%違うよ」と。まずね、知識がない。例えばここの景色がある。人がこっちに座ると、こっちの景色に注意がいってしまうから、この景色に注意が奪われてしまうわけ。

だからこっち側に座らせようかなというような工夫がないから。毎日同じことの繰り返しをずーっとしていくんだけれども、残念ながら、機械のほうが進化が速い。指数関数的に進化するということを、人間はなめてかかっている。パソコンだって、昔はスマホなんかなかったわけですよ。でもね、ここ10年の進化というのは速いわけですよ。

そのなめている人たちは何かというと、販売に関わる人達が、人間にしかできないから、機械には凌駕できないという、甘さ。凌駕されるの、簡単に。機械のほうが速いから。人間より全然頭いいから。

昔、固定電話しかなかったですよね。今のスマホなんて誰が考えました?じゃあスマホになったら何があるか?パソコンが使えなくなる。なぜならパソコンよりも、今はタッチひとつでいく。小売りの人達は、危機感がない。なぜ危機感がないかというと、毎日同じだから。海と川の魚が混合になると、危機感感じるわけですよ。

絶えず脅かされるのは他業種

一番の危機なのは、他業種。スタバがでてきた時に、スタバがこれほど売れるとは思わなかった、誰も。コーヒー業界は、うちのコーヒーが美味しいと思っていた。スタバはコーヒーなんか関係ないわけ、癒し。だからオフィスの横に作っていく、電気がほんのりと灯ると、虫が電気に吸い寄せられるように人がそこに行った。

それがスタバの戦略。でもコーヒーショップ業界は、コーヒーの味ばかりにとらわれていた。じゃあ、スタバがなんで押されたかというと、セブンイレブン、ファミリーマート、コンビニが100円のコーヒーを出すから。絶えず脅かされるのは他業種ですよ。その他業務とのお付き合いがないからこそ、危機。だから小売業界の人に、小売りは改革できない。

その本質をわからないから、皆。なぜわからないかというと、洞察力がないから。なぜ洞察力がないのかというと、そういう訓練を受けてないから。ずーっと同じ水の中で泳ぎ続けてきたから。まさか空から隕石降ってくるなんて思わないから。でも僕はそれを考える。

良い商品と、ヒット商品は、違う

Amazonには勝てないよ、AIには勝てないよというの。じゃあなんで同じ人間同士で戦って勝てるかといったら、相手方があまりにも無知だから。これを理解したところは、売り上げが倍になった。僕のことを理解するのは、異業種の人。僕のことを理解できない人は、小売りの人。小売りの人達は誰も理解できない。

しかし、小売りに参入していく人達がいる。この人達は理解してくれる。だから勝てる。無茶苦茶勝てる。本はタイトルが大事。人はワンフレーズワンタッチ、一声でしか理解できないから。そういう本を書いています。

それに合ったものがヒット商品になって、良い商品はヒット商品ではない。良い商品とヒット商品は、何の相関関係もない。ブームで買う。そのブームは何で起こされたのかというと、テレビ。中国ではスマホ。それぞれが好む媒体が、国民性によって違う。自分で商品を選ぶように皆思っているけれども、選んでない。選ばされているんです。

― 著書『商品プロデュースの発想法』の中では、色々な切り口で伝えていますけれども、とにかく顧客心理ですよね。

例えば、ある大手の食品メーカーをコンサルしていたんですね。そこが、お弁当を、東京駅のそばの百貨店で売っている。でも1日100食売ってみたい。でもいつも20食くらいしか売れない。僕はなにをしたかというと、「お客さんがどこから来ると思います?」と聞いたら、「東京駅です」と。「いや違うよ、あなたのお弁当を買いに来る人達は、あそこのエスカレーターから来る。40代過ぎの女性」と言ったら、「え、嘘」と。

この東京駅の百貨店に入る所に、甘栗屋さんがある。それがノイズ、いわゆる障害になっている。だからお客さんは、百貨店の人は、あそこから入ってくると思っているけど、大間違い、入ってこない。だから僕は、そのお弁当を、11時40分にバックヤードから持ってくるように指示しました。

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多くの百貨店は、白線が引いてあって、そこでお辞儀をするんだけれども、そんなの意味はない。でもその白線でお辞儀をすることに意味があるような嘘をついている。それは綺麗に見える。でも、その白線のところでお辞儀をするのは意味が分からないから、ちょこっとお辞儀をするだけ。

「いつも11時半にお弁当を出しているでしょう?11時40分にお弁当を出しなさい。その時に白線の所で、腰まで深くお辞儀をしなさい。あなたがお客さんを意識するのは、エスカレーターの所を見るために、深くお辞儀をしながら、目を上げた時に、そこの所を意識してごらん」と。

『○○のお弁当が出来上がりました~!』と言って、お客さんがあなたの周辺に来た時に、決してお弁当を勧めるな、と。ただお弁当を積めと。そこに、試食の爪楊枝だけ出しておいて、爪楊枝を捨てる所を置いておいて、たった一言、「美味しいでしょ」とだけ言いなさい、そしたら相手は「美味しい」と。そうしたら、「ね。」とだけ言いなさい。そもそも美味しくないものなんて出さないんだから。

美味しいか美味しくないかは、ぼうっとしかわからないから、美味しいでしょ?と言われれば、美味しい、ということがもう形成される。「一つ買っていきます」となったら、「ありがとうございます!」とだけ言いなさい、そしたら次の人も買っていくから。そしたら、一気に100食売れた。あんまり毎日100食売れるから、日テレかなんかが面白がって取材に来た。そしたら足りなくなった。これが人の心理です。

仕事は想像力

作業と仕事は違う。仕事は想像力。作業はこなす。この作業と仕事の違いが皆わからなくて、朝から晩まで不機嫌に働いている。だから売れない。僕は現場で見て、実際にやるから。実際のお客さんに売った時に、お客さんが感動するから。

「あなた上手よね~。あなたがいる時に来るわ。」って。で僕のいる現場に電話が来るの「あのおじさんいつ来るの?」って。そういう販売員がいないから。だから僕はお客さんから求められる。いつも出入りしている人達は、価値がわからないの。それよりも異業種の人たちは、「あの人が完売王だよ」といって講演とか呼んでくれたら、価値がでるから。いつも行っているようなところは見慣れているから価値がわからない。

鍵山秀三郎さんとの出会い

気付いてくれた人が一人だけいる、イエローハットの鍵山さん。1996年ですね。僕は丸紅に入って、その時の上司が会いたがっていた人が、鍵山秀三郎さん。

テレビに出ていたんですよ、鍵山さん。「社長さんを訪問する」っていう番組があって、道路を掃除していた人に聞いたら、その人が、社長の鍵山さん。僕は会いたくてイエローハットに電話して、「トイレ掃除を教えてください」と、他の社員に教えてもらったんですね。鍵山さんに会いたくて、外の掃除に、30日間通った。そこで接触の法則で、親しくなった。

ある日、アテンド、鍵山さんの身の回りの世話をさせてくださいと言ったの。京都山科・一保堂茶舗のお茶を4分目だけ子供のポットに入れて出したいと。鍵山さんは1000人の前で、講演をされるでしょう。鍵山さんは、もったいないという思考の持ち主だから、全部飲むから、おなかガバガバになる。だから4分目だと。

たった一人で東京証券取引所の1部まで上場させる人は、サラリーマンじゃないから、この不思議さに気づくはずだと思ったの。このポットを用意したのは誰だ、君かと。そこで初めて鍵山さんと知り合って、それからのお付き合いです。

ヒット商品を作れるのは、人間しかいない

人とは何かということを知らない以上、販売は難しい。人とは一体、どういう生き物なのか、ということ。ということは、人を知るためには、それなりの苦労もしなきゃだめだということですね。

その苦労を凌駕するために、古典を読む、特に仏教書とか聖書とか。僕は販売の本なんて読んだことがありません。聖書と仏教の経典しか読んだことがないんです。あとは武芸も合気道です。柔よく剛を制すと言った、植芝盛平ですね。

相手にかかっていかない、ということです。合気は、相手の気に合わせるということ。相手がつかみかかってきたら、相手と同じ動き、相手が後ろにまわってきたら、自分も後ろにまわるということ。そうすると、相手が倒れるということ。柔術です。

僕の販売は、相手にモノを売るのではないんです、相手が欲しがるんです。合気なんですよ。だからお客さんがその商品を覚えて、何度も買いに来て、日本的なヒット商品になる。それができるのは人間しかいません。

【略歴】
河瀬和幸(かわせかずゆき)
株式会社カワセ・クリエイティブ・カンパニーズ代表取締役。
千葉商科大学大学院客員教授。売れないモノを、売れない場所で売り続けて、約3万時間。 延べ接客人数25万人を観察し、売れるようになる理由を発見。 「売れる商品」開発と「伝わる売り方指導」に励む。「また、売れちゃった! 」(ダイヤモンド社)はじめ著書多数。

株式会社カワセ・クリエイティブ・カンパニーズ