『人のふり見て我がふり直せ ~反面教師に学ぶ生き方レシピ~』

『人のふり見て我がふり直せ ~反面教師に学ぶ生き方レシピ~』

株式会社Love Letters代表取締役として紅茶専門店Dio Del Té(ディオデルテ)を経営し、カウンセリングやコーチングを通して多くの人の悩みと向き合う柳愛実子(やなぎえみこ)さん。著書『人のふり見て我がふり直せ~反面教師に学ぶ生き方レシピ~』に込められた、最高の人生を送るための視点やコツ、とことん聞き取らせていただきます。

人のふり見て我がふり直せ

癒しの場を提供する紅茶専門店

2017年夏から、Dio Del Té(ディオデルテ)という紅茶専門店をオープンしております。このお店では選別された世界中の紅茶から緑茶、ハーブティーなどを集めて、一般的なティーポットではなく、「ティードリッパー」というものを使用して、ちょっとしたパフォーマンスのある紅茶を淹れています。ただ、お茶を飲んでいただくだけではなく、「目で楽しみ」「香りで楽しみ」そして「癒されていただく」ということを大切にしています。

学生時代に、たまたまロンドンへ研修に行くことになり、ホテルの朝食でイングリッシュブレックファスト・ティーというものが出されました。ティーカップを覗くと温かいミルクが半分程入っており、不思議に思いましたので店員さんに尋ねますと、そこに温かい紅茶を注いでくれました。「ミルクが先、紅茶が後」という、イギリス流の日本では考えられない紅茶の飲み方に感動し、ミルクのコクの深さと、蜂蜜の優しい甘み、そして本場の紅茶のほろ苦さに恋をしてしまいました。

「この世のものとは思えない!すごく癒される!」この経験が、『紅茶』を味わうと同時に、『癒し』をテーマとして、肩の力を抜き、ゆっくり呼吸することで心の静寂を取り戻し、「よし!また明日から頑張ろう」そんな気持ちになっていただけるようにお店を開業致しました。

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ー 飲むだけではない「癒し」というのは具体的にはどういうことをされているのでしょうか。

カウンターからティードリッパーで実際に紅茶を淹れている様子をご覧いただけます。淹れた紅茶を美味くいただくにはジャンピング(お湯に酸素を含ませ茶葉が全体に混ざる動作)を起こすために、高いところからお湯を注ぐのですが、まずそのパフォーマンス性に感動していただき、淹れたてのお茶を一杯飲んでいただいて、ホッとしていただきます。

すると、お客様が「あのね、実は…」とご自身のことを話される。そういったご相談を伺いますと、これまで勉強してきたことや経験してきたことから、約12通りの分野のお悩みが集まりました。「これらをメモにしてみよう!」と思い、ペンを取りましたらすごい量になりまして…。「これはもっと多くの人に広められたら、人間関係の悩みや自分の欲望、生き方についてもっと改善し、人生を幸せに過ごせるのではないか!?」ということで、カウンセリングやコーチング、瞑想教室を兼ねています。

柳愛美子

他人の経験を自分のものとして吸収する

ー そうやってまとめたものが今回の著書『人のふり見て我がふり直せ』なんですね。

そうですね。やはり人生において、どうしても「全ての失敗」はできないので…。全てとなりますと、何百年という時間が必要ですし、人間の寿命も限られています。では、一番手っ取り早い方法を考えたところ、他人の失敗例を見て「気をつけよう」や、「こういう風にやればいいのか、私もやってみよう!」などと、『他人の経験を自分のものにすること』によって、自分の経験のように吸収することが可能です。そういう意味での「我がふり直せ」ということです。

居場所がない、を経験した子ども時代

ー こちらの著書、その若さでものすごい洞察だなあと思って読ませてもらったんですが、どういった背景が影響しているんでしょうか。

そうですね、「信じる」ということにすごく疑いを持つ時期が多かったです。3歳くらいでしょうか、物心つくころから鏡に写る笑った自分や写真に対して「なんで私はこんななんだろう?」とすごく自己嫌悪で、自己評価も低く、とにかく自分を好きになれない時期がありました。

そんな中、ある劇団のチケットをいただいたことが今後の人生を決める大きなきっかけとなりました。キラキラと無限に輝くイルミネーションの中で、眩しい光に笑顔を照らす女優さんたちの姿に、「私もこの舞台に立つんだ!」と目をキラキラさせ、夢に向かって生きて歩み始めました。

幸いにも、近所に日本舞踊の先生がいらっしゃったり、バレエ教室に通わせてもらったり、知人に声楽を教えてもらったりと基本的な芸事は経験させてもらえた恵まれた環境にとても感謝しています。

ー 夢を追い続けながらも、その裏には小さな頃からかなり過酷な経験をされてきたんですね。

例えば、日本舞踊など子供には理解しづらい習い事や、夢や目標を持っているという理由で学校でいじめになり、ランドセルに傷がついたり、下駄箱の上履きに画鋲が山積みになっていたり、学校を転校してもいじめが絶えない時期もありました。今だから話せますが、家庭内では喧嘩が絶えず、自分の居場所がなかったため、中学2年生の時に家を出て、内緒で父に相談して学校と習い事の教室を両立しながら6畳の小さなアパートで一人暮らしを始めました。

柳愛美子

「必要な時に」「必要なことが」「必要なだけ起こる」こと

過去の経験により現実逃避するのではなく、「何が原因でこのような出来事が起こるのか?」ということを分析し、「それに対してどのような行動を取るのが賢明なのか?」ということを必死に考える習慣がつきました。世の中を見渡せは、私よりも悲惨な青春時代を過ごした人も数多く存在します。側から見れば幸せそうな人生を送っている人はいるかも知れませんが、何も苦労せずに幸せな人生を送っている人などはこの世には存在しません。私は現実から目を背けずに青春を生き抜いた。ただそれだけなのだと思います。

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愛を取り戻したアメリカ時代

ー こういう言い方が正しいかわかりませんが、ドラマのようですね。

夢を追いかけ続けていた当時は、居場所がなかったという動機が「とにかく1日でも早く自立して、親や他人に迷惑をかけないで生きよう。」そんな思いが、必死に行動させてくれたと思います。週6日、部活に参加することもせず、友達と遊ぶことも滅多にせず、学校が終わればすぐに稽古場へ行き、日付が変わる頃に帰宅するような生活で命懸けで練習に励んでいました。 

しかし、どんなに頑張っても結果は「不合格」。当時は、「自分の存在はどこにもない。あぁ私って誰からも必要とされないんだ」と絶望的な状態に陥ってしまっい、自殺を試みてしまいましたね。不登校にもなりまして、それが当時16歳ですね。それである日、「もうどうせ死ぬんだったら、違う国に行ってみよう!」と思い日本の高校を中退して、アメリカの高校へ行きました。

振り返ってみますと、人生は夢を叶えることが全てではなく、その過程が人を成長させ大きな財産を与えてくれたことに気がつきました。いくら頭の中で考えても発言(顕在意識)しても行動(潜在意識)しなければ何も起こりません。どんな夢でもいいんです。潜在意識から「やりたい!叶えたい!」そう願う、夢中になって夢を追い続ける情熱こそが行動となりエネルギーとなって生きる源になると肌で感じました。

どんな経験も必ず活かしていける

夢が破れた悔しさからの「アメリカへ行こう。」そのときの決断が、ある意味では人生の岐路になりましたね。渡米した際の滞在先はホストファミリーにお世話になったのですが、なんとホストマザーが妊娠1か月という状態で私を受け入れてくれたんです。

出産の際に、別のホストファミリーの家に移ったのですが、ある日ホストファミリーが「やっぱりEmikoに戻ってきてほしい」という連絡があり、なんと高校卒業まで生てれきたお子さんの成長と共に過ごさせていただきました。何よりその子が、私のことを本当の姉だと思ってくれて、面倒を見たり、一緒に遊んだり…。そこで家族の愛や信頼性を取り戻すことができました。

ー 「居場所がない」というつらかった思いや、家族の愛や信頼性を取り戻すご経験が、今に活きているということなんですね。

そうですね、あとは面白いことに小学校と中学校は仏教系の学校へ通っていたり、アメリカで通った学校がクリスチャンの高校だったり、宗教のことを自然と学んできたことがすごく大きいです。「何を信じるか」という科学では解明できない、「目に見えないものを信じる」という世界が常に身近にあった為、芸術の世界から、心の世界へと足を踏み出すようになりました。

柳愛美子

この考えを持ち始めた高校時代は、夢を諦め掛けていた私にホストマザーがミュージカルのオーディションを応募してくれて背中を押してくれたり、アメリカで初の舞台に出演することができました。学校ではチアリーディング部で活躍し、卒業論文でフラッシュモブを企画したのですが、校長先生まで参加してくださって…卒業式ではインスピレーションの賞をいただいたり、アメリカでの生活が「自分を好きになっていい」と自信を取り戻してくれた時間でした。

大学時代はボストンの方でメディアやコミュニケーションの勉強しながら、放課後は近くにあったバークリー音楽大学の校内にある音楽プロダクションに所属して洋楽の勉強をしていました。まどこかに夢を諦めきれない自分が、「もう一度チャンスがあるんじゃないか」と自分を信じて立ち上がろうとしていた学生時代でした。

ー 視点が大きく広がっていたんですね。

はい、夢を失った毎日は、「自分って、誰なんだろう?」「本当は何がしたいんだろう?」「どうしたら人の役にたつだろう」と常に何かを探し求めていました。

そんな中、私が今でも忘れない出来事があるのですが、毎週金曜日の夜は、教会へ行ってホームレスの方々に料理を作ったり、洋服を寄付したりとボランティア活動に参加していたのですが、ホームレスのおじさんから“Keep your smile!(笑顔を保って!)”と逆に元気付けられてしまった時ですね。その時に、「幸せとは何か?」ということにすごく「悩んだ」時期がありました。

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「幸せ」とは、その人の置かれた環境を指すのでなく、その人の心の状態を指すということ。もっと簡単にいえば、「自分がどうあるか」という心の持ち方でしかないということ。「欲望がない方が幸せなのかもしれない」と目の前に起こる出来事やあるもの全てに感謝することに気づかされた瞬間でした。

自分を客観視する~悩むのではなく、考える〜

ー 人生いろんな挫折があって、それでも前に進まなきゃいけないっていうときがあると思うんですけど、そういうときの心の持ち方、進むための捉え方を教えてください。

私は基本的にあえて、批判的に物事を判断するようにしています。例えば本を買ったとしましょう。全て受け身で「うん、うん」と読んでも自分の潜在意識には何も影響されないと思うんです。なので、「え?この考え方おかしいと思う、私だったら…」という意見を本が真っ赤になるくらいコメントをつけて著者と議論するようにしています。 

そうすることで自分の意見が発見できることができるのです。人と話していると新しいアイディアや、気持ちの整理ができるように、本では自己内対話として、「自分が今どういう状況にいるのか、どのような価値観を持っているのか」ということを受け入れて、自分を客観視する。それが前に進めていける心の持ち方の1つかもしれません。

ー 自分を見失わないっていうことですかね。

そうですね。常に自分を探してきたことが大きいです。自分探しにも「どうしたら良くなるかな、綺麗になれるかな、カッコ良くなれるかな」というのは『考え』であり、向上心として発展性や自分の成長に繋がります。しかし、「どうしてこんななんだろう、どうしよう、なんでダメなんだろう」と『悩み』になってしまうと、そこでぐるぐると同じ気持ちが繰り返され、発展性がなく止まってしまいます。

同じ時間を過ごすのなら、持っているエネルギーを誰もがポジティブなエネルギーでいたいはずです。「悩み」のエネルギーは負のエネルギーであり、時間の無駄だと私は思っています。他人にも影響を与え、迷惑がかかりますから…『悩む』のではなく『考える』これが2つ目ですね。

ー 小さい頃もっていたコンプレックスというのは、どうやって克服されたんですか?

一冊の本がきっかけでした。鏡の前に立って、自分に話しかけるという課題があるのですが、はじめは鏡に映る自分と目を合わせることもできなくて苦労しましたね。でも毎日少しずつ、「おはよう、今日も頑張ろうね!」や「今日も良く頑張ったね!お疲れ様」などと、簡単な気持ちを伝えると、徐々に気分が変わり、自分への信頼や確信を持てるようになりました。

最終目標である「愛してる」という、自分を見つめての語りかけができるようになったのは1年程かかりました。この経験を通して、思ったことは自己嫌悪や、自分の評価を下げるということは大げさに言えば他人を傷つけるよりも悪質な犯罪ではないかと感じています。「自分なんて…」という気持ちから「自分の存在でどうしたら他人が幸せになれるか」そう気づけたのは、コンプレックス(何かに気づくための課題やチャンス、試練)のお陰だと思っています。

ー 自分に自信が持てないという人に何かアドバイスがあれば教えてください。

「自信がない」というのは、実は本当に一部の「思い込み」でしかないんです。自分に自信があってもなくても、相手にとってはあまり関係がないことですから。ただクヨクヨ悩むのではなくて、「自分に自信がない。じゃあどうすればいいか?」と考える向上心を持つこと。つまり、「悩む」というところから「考える」ということに変化することがまず一歩かなと思います。

柳愛美子

どんな人の日常の悩みにもつながる一冊

ー 書籍には事例もたくさんあって、ひとつひとつに教訓みたいなものが書かれていてほんとうにいい本ですね。やっぱり本著に書かれている“Tea Break”の部分が特にいいと思いました。

ありがとうございます。実はこの本で最も重要な内容が“Tea Break”なんです。ただこれだけですと、論文のようで客観視しづらいという想いから、「一般の家庭の中で起こる出来事」をエピソードとして映画やドラマのワンシーンように構成してみしました。

ー 本を出すきっかけってなんだったんですか?

元々本を書いてみたいなという気持ちがあり、詩を書いたり、物語を書いたりと自分の思いを言葉で表現することが好きでした。でも書くからには、「何か目的がないと…」そんな思いを脳裏に、カウンセリングをしていた際に、ほとんどの様のお悩みの根本的な部分が「欲望」や「愛」についてという共通点がりまして、プレゼンをするつもりでペンを取りましたら、結構な厚さになり、最終的に例を書いたり、解説を入れ、完成したものが今回の本となりました。

心の教科書を作りたかった

ー この本の中だと、ご自身のことについて、ほとんど触れてらっしゃらないなと思いましたので、今回色々とお伺いできてすごくよかったです。

「挫折を経験しているひとたちに幸せになってもらいたい」という気持ちで、心理学書ではないですが、ある意味「教科書」を今回は書いたつもりなので…。私の人生の経験というのは、数多くある人生の中のほんの一部でしかありません。今回は先ほどお伝えしたように、エピソードに「幸せのあり方」を映画やドラマのワンシーンように解説し、あえて私のことは書かずに、「必要なもの」だけをぎゅっと凝縮させて書かせていただきました。

目の前のひとを幸せにしよう~幸せは循環していく〜

今後は、この本をベースとして、本当に心身の浄化につながるような「なんのために生きているのか」「幸せとは何か」というものをコンセプトに、セミナーやコーチング、ワークショップ、そして瞑想教室など、全国で開催していく予定です。

自分だけが幸せだったら幸せは1で、それで終わりなんですよね。でも目の前の相手を幸せにしたら、幸せと幸せで、幸せが2になる。そうやってどんどん幸せを増やしていったら、循環していく摂理ができていると私は思っています。自分の幸せや欲だけを求めるんじゃなくて、他人を幸せにすることによって自分が幸せになる、自分がした行為に対してひとが「ありがとう」って返してくれることによって自分が幸せになる、という循環を大きく広げていきたくて、この紅茶専門店を始めました。

ぜひこの本を活かして自分自身の気づきを増やしていただき、周りのひとを幸せにして、ご自身も幸せになってもらえたら、それが私にとって一番の幸せかなと思っております。

柳愛美子

【略歴】
柳愛実子(やなぎえみこ)
株式会社Love Letters代表取締役

2014年に株式会社Love Lettersを設立。2017年紅茶専門店Dio Del Téを千葉県浦安市に開業。Dio Del Téとは、日本語に翻訳すると「紅茶の神様」という意味。このお店に集う人たちに癒しと元気と勇気をお与えいただきたい、という思いがこめられている。ティードリッパーによるパフォーマンスを交えながら、自身の経験を活かしたカウンセリングやコーチング、コンサルティングを実施。2018年著書『人のふり見て我がふり直せ』(たま出版)を出版。悩みを抱える多くのひとに夢と希望を与えている。

株式会社Love Letters

人のふり見て我がふり直せ