現場を貫くカネコシュウヘイ氏の記事がアイドルファンの心に刺さる

クラウドソーシングの浸透で、本業か副業かを問わず「ライター」として活躍する人たちも多くなってきました。一方で、情報の信ぴょう性も読者からより強く求められるようになった時代に、現場取材へ重きを置きながら活動している方もいます。フリーライターのカネコシュウヘイさんです。アイドルをはじめエンターテインメント系の記事を中心として、取材や執筆活動へ注力するカネコさんの記事を読み、心を揺さぶられるファンの方も少なくありません。一体どのようにして生まれるのか。ライターを目指す人たちへのメッセージと共に、日々の仕事についてのお話を伺いました。

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現場取材で得るものは大きい

― カネコさんは普段、どんな記事を書かれるのですか。

体感ですが、インタビュー記事が8割で、残りの2割はコラムや体験記事です。インタビューは主にアイドルの方が多く、映画の公開やドラマの放映に合わせて俳優さんにお話を伺う場合もあります。

一方で、作品を手がける裏方の方々や経営者の方々、面白い経歴や趣味などを持つちょっととがった方々など、とにかく情報のソースに当たり、現場からの声をなるべく拾おうと思っています。

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― アイドルの記事が多いということですが、カネコさん自身もアイドルは好きなんですか?

はい。コロナ禍でライブの本数自体は減ってしまいましたが、以前はプライベートでも月平均で3~4回はライブに行っていた気がします。武道館へ何日も連続で通う日もありました。

― 好きなアイドルの取材ができると、テンションがあがりますか。

どうでしょう。正直、インタビューのお仕事を始めた当時は舞い上がる気持ちもあったかもしれませんが、今はむしろ冷静なのではなと思います。例えば、各グループのルールにもよりますが、ファンのみなさんは、数秒間の握手と会話のためにCD1枚を購入しなければなりません。

でも自分は、インタビューで30分から長いときでは1時間ほどお時間をいただき貴重なお話を伺っているので、「握手券に換算するといくらぶんなのか」と考えると、自分のエゴは出せないですし、むしろ、ファンのみなさんの気持ちも汲み取りながら「どうすれば本質に迫れるか」という緊張感の方が強いです。

また、これはステージが好きな理由にも繋がるのですが、個人的にアイドルとは「近付けない壁があるからこそ憧れられるし、楽しい」と思っています。

インタビューでもどこかその気持ちを残しているし、ライブ自体よりも、終演後に同じものを追い続けているファン仲間と「今日のライブよかったよね」とお酒を飲みながら語るのが好きなのも、土台にあると思います。

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質問のヒントはライブの中にある

当然、好きだからライブを観に行くというのはありますが、公演中も「今こんな発言をしたけど、どんな思いがあったのかを次の機会に聞いてみよう」と、インタビューがやはりちらつきます。

プライベートの場合にはライブ自体を楽しもうと足を運んでいますが、その積み重ねが、あるときふとインタビューに生きてくることがあるんです。

インタビューとしては「このライブに対してはどう思っていましたか」「この作品への意気込みは」と定型句のような質問だけを投げかけても成立しますが、より具体的なところを突きたいといいますか。

「あの瞬間、どんな理由で発言していたんですか?」など、時間の限られる中でも、どれか一つ二つでもより深く刺さるようなフックを設けたいとは考えていて、ただ、内容が深過ぎるとニッチな記事になってしまうため、その辺りのバランスについては今なお試行錯誤しています。

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萎縮しないで聞き出すのがライターの役目

― ビジネス系ではどんな方にインタビューされるのですか。

経営者の方や、ユニークな取り組みで成功されている若手ビジネスマンの方が多いと思います。企業の取り組みを広報の方に聞くこともありますね。

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相手の肩書きは気にしない

― ビジネスのインタビューで気をつけていることはありますか?

インタビューでは、相手の肩書きには萎縮せずなるべく気にしないようにしています。もちろん最低限の礼儀をわきまえた上での話ですが、実は、インタビューのお仕事を始めた当時、相手に対して「すごい人だ」と思い込み過ぎて、ふたを開けてみたら杓子定規な質問しかできていなかったことが何度もあって。

振り返るととんでもない失敗で、気を使い過ぎて「どうでしたか?」「嬉しかったです」のような問答ばかりを繰り返し、結果として「なぜですか?」と切り込めなかったんです。

今思えばすべては自分の気の弱さが原因で、場数を踏んでいくうちに慣れていった気もします。

何が本質かというのも難しいですが、物事は成功体験だけではなく失敗にも価値があると考えていて、それを乗り越えようとした努力にこそ相手の素がにじむとも思っているので、本来であればなかなか言いづらい部分も引き出そうと「失敗してしまったことは?」と、できる限り自然に滑り込ませて聞くときもあります。

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本質を聞き出せる空気をつくろう

もちろんこちらがお時間を頂いているわけですから気を付けないといけませんが、できるだけ気軽に相手に話していただけるような空気を作ろうと意識しています。

先日も企業の代表取締役の方を取材させていただきましたが、そのときもあえて僕は「○○さん」と呼ぶようにしました。「○○社長」と言うと、こちらが気持ちで負けてしまう気がするんです。

限られた時間の中で、その人の過去の貴重な経験や考えを預かって読者に伝えるというのがインタビュアーであり、ライターの仕事です。

そして、しっかりと聞き出すには前のめりで「さて、準備はいいですか?」くらいに、相手へ立ち向かうような気持ちを持たないと鋭い質問ができない。

凡庸なことしか聞けず、本質を引き出せないのが本当に一番怖いんです。

もちろんその人に興味があるから聞きたいし、その人自身も好きだけれども、その人自身というより、その人の周りにある事実にもっと興味がある。その気持ちが僕はたぶん、強いと思います。それを文字で伝えられるというのは、責任もあるけれども楽しいと思っています。

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紆余曲折を経てフリーライターに

― カネコさんがライターになろうと思ったきっかけは何だったのですか。

初めは本当に、何となくです。実は、紆余曲折があり20代半ばにニートとして生活をしていた時期があったのですが、当時は「えん罪」の問題に興味があり、mixiなどでニュースに対する自分の見解を述べていました。

それを続けているうちにだんだんと「ライターになり『えん罪』の問題を広く伝えたい」と思い始めるようになり、26歳で出版社から本の制作を請け負う編集プロダクションに入ったのがキャリアのスタートでした。

― ニートから就職しようとしても、なかなかすんなりいかないと思いますが。

当時入ったのは単行本の企画から編集、取材や執筆に加えてデザインも請け負っていた会社だったのですが、兄の仕事の関係で、たまたま自宅にイラストレーターというソフトがあったんです。

それで、面接時に自分がつたない腕前で作った架空の誌面サンプルを持っていったら、実物を持参したのはどうやら僕だけだったようで、そこの代表者が採用してみようと思ったとは聞きました。

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大学再入学でフリーになることを決意

― フリーとして独立したきっかけは何ですか?

実は、ここも経歴がややこしいところなんですが…。18歳で入学した大学に約5年半ほど在籍して中退した過去がありまして。

その後、ニートの期間を経て先ほどの会社へ2年ほど勤めていたのですが、ちょうどその頃に付き合っていた彼女と結婚を考えていたので親御さんへ挨拶しに行ったところ「君はまだ給料も安いし、しかも大学を中退しているでしょう」と言われてしまったんです。

当時はそれがすごい悔しくて、でも、衝動的に「大学に再入学して卒業してやる」と思ったんですよ。27歳の時でした。

大学は単位を引き継いで再入学できるとはいえ、2度目ですから本腰を入れなければならないので、勤めていた会社に経緯を説明して「卒業したら胸を張ってまた会いに来ます」といって辞めさせてもらいました。

ただ自分は、編集という仕事をとにかく楽しんでいたし、2年間も続いたからやりたい気持ちはあって。だから、大学の再入学と同時に何も考えずフリーランスになりました。

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ゼロからのスタート

とはいえ、お世話になった会社の代表者には「卒業したら胸を張ってまた会いに来ます」と言ってしまったので、ツテを頼ることはできなくて…。

だから、仕事についてはネットでじかにライターを募集しているところを探して、掲示板経由で企業のメールマガジンのを書く仕事へ応募したり、地元のお店から依頼を受けてチラシのデザインを作ったりしていました。

本気なら飛び込んでみるのもいい

― ライターになりたいとか、ビジネスでインタビューをしたいという方は、たくさんいると思います。その方たちに向けてメッセージをお願いします。

書く仕事をやりたいと思うのであれば、例えば、専門分野に特化したブログを書いてみるのも一つの方法でしょうか。最低限、Twitter とかリアルタイムに発信できるものを母艦として持ちつつ、ブログやnoteといったプラットフォームで、落ち着いて書いたものを溜めていく。

それを告知したりして、とにかく自分自身を露出できる場を作るのが近道だと思います。

一方で、雑誌などで記事を書けるライターになりたい場合は、編集部の方など、他の人からの評価が入らないとフィールドに立てない現実もありますが。それを考えると、くだらないことでもいいので目立つことを書くのがいいですね。

何か一つでも、自分でこだわりを持つものを書き続けて、タネを撒いておくのがいい気がします。

― それを誰かが見るとか、それを持ち込んでみるということですね。

古典的かもしれないですが、雑誌を作っている編集部などで募集をかけているところもたくさんあるので、業界に飛び込むのが実は一番の近道かもしれません。

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メディアを探す場合には注意が必要

ネット媒体でライターを探しているところはたくさんあります。ただ、コピペやネット上の情報を寄せ集めで作っているだけのメディアがあるのも現状で、1記事あたりで100円や200円といった低単価で原稿を執筆するとなると、おそらく書いている側も疲弊すると思います。

ネットで検索をかけるならば「ライター 企画 募集」と調べると、企画の提案もできるライターを募集しているところが出てきます。信頼性の高いニュースサイトなどが振り分けられて上がってくる可能性が高くなると感じていて、初心者でも募集しているところはあるので、思い切って門を叩いてみるのもアリだと思います。

企画を出せるライターは生き残る

ライターの分類というも様々ですが、依頼を受けて書くか、自分から企画を提案して書くかもけっこう重要です。実は、個人的には「ライターに日本語の上手さは必要ない」と考えているのですが、記事自体は慣れれば誰でも書けるようになります。

ただ、ライターとして“生き残る”となると、肝に銘じておくべき戦略も変わってきます。

コロナ禍で特に痛感したのですが、依頼をただ待っているだけではやはり仕事の数自体がみるみる減っていくんです。

緊急事態宣言下ではとりわけ顕著でしたが、かろうじて続けてこられたのは企画を出すことを並行していやっていたからだと考えていて、日々の生活の中でも、例えば、自分や誰かが困っていることなどをヒントに「こんな記事を作ってみたら面白いかもしれない」と思いを巡らせておくのも大切だと思っています。

「ライター・カネコシュウヘイ」という責任

ライターになるのが簡単ともいわれる時代ですが、僕も道半ばで、けっして文章も得意ではないしもがいているときも多々あります。

また、言葉という形ではありますけど、それを伝えるには責任も伴う。署名記事を受け持つときもありますが、カタカナの「カネコシュウヘイ」というペンネームは、僕自身を知ってほしいというのではなく、記事に対する責任として付けている意味が強いです。

だから、批判なども受け入れようとツイッターのダイレクトメッセージを解放しています。

また、ツイッターではどうでもいいつぶやきから真面目なことまで全部出しているので、たぶん僕以上に僕が出ていると思います。

― 何か問い合わせや相談をしたい時も、Twitterから気軽に連絡することができるのはいいですね。これからもご活躍を期待しています。

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【略歴】
カネコシュウヘイ
フリーランスの編集者・ライター・デザイナー。Webのニュースサイトや雑誌の記事を中心に、現場取材へ重きを置きながら活動。守備範囲はアイドルをはじめとした音楽・エンターテインメント系、ビジネス系、生活系。プライベートでは、月平均で3〜4回はどこかしらの会場へ足を運ぶほどのアイドル好き。

Twitter ⇒ https://twitter.com/sorao17
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