ミニマムリッチコンサルタントが説く、選択肢が溢れる時代の在り方

物や情報が溢れるこの時代、何を選び取ることが自分にとって一番いいのか、自信を持って言える人間はそういないだろう。上質なものを少しだけ……という、「ミニマムリッチ」の考え方を広めている横田真由子(よこたまゆこ)さん。誰もが知るハイブランド「Gucci」の店長時代に出会った考え方だそうだ。皆そうでありたいのは山々だが、一歩踏み出せないのには、心や経験が関係していると横田さんは言う。環境も心もシンプルに、ハッピーに!「ミニマムリッチ」な生き方について、とことん聞いてみました!

横田真由子

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あなたの生き方の中で上質なものとは何ですか?

ー 現在どのような活動をされているのですか?

ミニマムリッチ・コンサルタントとして活動しています。ミニマムリッチというのは 「上質なものを少しだけ」という意味です。「上質なものを少しだけ持つライフスタイル」を個人のキャリアコンサルティングを通して考えていただいたり、人生を歩いていく上で、大切にしながら、長く大事にしていきたいものを見極めてもらう、というお手伝いをしています。主に女性の支援です。

長く使っていきたい、大切なものを決めるというのは、選ぶこと、捨てることが必要で、選んだもの以外、余計なものは持たないということにもなります。けれど、手放すこと、捨てることが苦手な人ってすごく多いので、まずは、「余計なものを捨てる、思い切って手放すために、これまでの振り返り、キャリアの棚卸しのお手伝いをしています。

企業様向けには、キャリアデザインやコンサルティング、研修、講演です。ハイブランドショップの店長時代のマネジメント経験を活かして、女性リーダー育成のお手伝いをしています。また、顧客づくりが評価につながった経験がありますので、「お客様からもスタッフからも愛されるという自分づくり」をテーマに講演を行っております。

横田真由子

「ミニマムリッチ」ということに至った経緯とは?

店長だった時代に、とても素敵なお客様がいて、小さいバッグひとつでふらっと来られるんですね。両手がいつも空いてるので、軽やかで颯爽と見えました。そこで「どうしていつも小さなバッグなのですか?」とお尋ねした時に、そのお客様が 「本当に大切なものって少しだけよね」とおっしゃって。

私はその時、ずっしり肩に食い込むような大きなバッグを持っていたので、はっとしました。それをきっかけに大きなバッグの中身を見直して、「本当に大切なものって何なんだろう」ということを考えたのがきっかけです。

早速、家に帰って、バッグの中身を全部出してみました。そうしたら、バッグの底の汚れに気づいたり、内ポケットの中に入れっぱなしだったごみを見つけたり。

全部出してみると、化粧ポーチや財布からも、「こんなものまで毎日持ち歩いていたの?」と思うようなものまで出てきて、改めて、要らないものまで詰め込んでしまっているバッグを見て、気持ちも一杯一杯で過ごしてきたように思えました。

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バッグは人生を象徴する

ー 物に限らず、自分の気持ちも含むということなんですか?

はい。小さいバッグって「有限な人生の象徴」だと思います。限られた時間ですから、何もかも持って歩く訳にはいきません。今は、選択肢が多い時代ですが、選択肢が多いことで、皆、悩んでる。

「本当にこれだけでいいのか?」「あの人が持っているから、これも持っている方がいいのでは?」と思うと荷物は増えます。「私の大切なものはこれだけ」「私の選んだもので幸せ」 「これだけで十分」と思えたら、自信になります。そんな自分軸があると、人とも比べないし、気持ちも軽やかです。

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ミニマムリッチによって、コレが増える!

バッグだけでなく、部屋も同じです。物を置かない余白を作ると、心の中にも余白ができます。実際に、散らかった部屋で暮らすと気持ちもだんだん整理できなくなる。まずは、床に物を置かないだけでも、部屋は広く 感じます。掃除もしやすいですし、心も整っていきます。

余計なものを捨てると、お金も時間も増えるんです。物を持てばメンテナンスが必要ですよね。例えば、服を買ったらクリーニングに出さなければいけない。だからクリーニング代が必要です。

多く持てば持つほど、維持費もかかります。余計なモノを持たなければ、お金は増えます。また、整理整頓ができていると物を探す時間がなくなりますから、時間が増えるんです。

横田真由子

心の中を整理する

ー 心の中に余裕があるといいのですが、日々仕事をしているとどうしても「あれもやらなきゃ」「これもやらなきゃ」 と色々抱えがちになってしまいます。そういう時の対処法 ってありますか?

抱えすぎてしまうときは、「一旦、全部出す」。棚卸じゃないですけど、一旦整理する。心の中のもやもやを文言化してみることです。

ー 書き出したりとか?

はい。書くことで整理できますね。まずは、「やるべきこと=MUST」「やりたいこと=WILL」「できること=CAN」を改めて書き出して整理します。自分がやらなくてもいいことをやっていたり、本当にやりたいことに時間を使えてなかったりします。

バッグだったら全部中身取り出して、「一体私は何を持っているの?」と、毎日、見直す習慣をつけます。

著書について

ー 横田さんは本も出されていますが、テーマはやはりミニマムリッチについてですよね?

はい。「上質なものを少しだけ持つための具体的な提案」をさせていただいています。量から質へのチェンジです。また、「上質なものを大切に長く使うと、こんなに豊かです
ということも、出会った素敵なお客様のエピソードと含めて、お伝えしています。

ー 本の中でイチオシの部分は?

「大きいバッグしか持てないのですが、どうしたらいいですか?」という質問が多いので、大きいバッグから小さいバッグに変える方法でしょうか。これは、テレビや雑誌の取材でも、一番多いテーマです。

ー その方法とは……?

まずは、家に帰ったら一旦バッグの中身すべてを出して並べてみる。ここから仕分けをします。「明日は何をする日?」と考えて、必要なものだけを選んでいく。例えば、財布、携帯電話、化粧ポーチ、ハンカチなど、必ず、毎日必要なものを選びます。これが一軍、スタメンです。

そして、明日の予定や天気を考えて必要になるもの、例えば、パソコンや傘などです。これが二軍、補欠ですね。そして一軍だけを小さなバッグに入れます。二軍は、サブバッグに入れます。これを繰り返していくうちに、サブバッグを持たないで、小さなバッグひとつで出かけられる日が増えていきます。

横田真由子

「Gucci」の店長時代

ー 元「Gucci」で店長をされていたと……。現在に至るまでに大変なことはありましたか?

「Gucciの店長になったのに、なんでやめるの?」と、色んな方から、反対されました。その時は40歳を迎える手前でした。人生の折り返し地点が近づいている気がして、「後半戦このままでいいのかな?」って思って悩んでいました。

「店長失格」から始まった

その頃、後輩の指導が全然うまくいかなくて、私の右腕として頑張ってくれていた副店長が「ついていけません」と言って辞めていきました。「店長失格」「マネジメントができない」と悩んでいるときに、コーチングに出会ったんです。「これだ」って思いました。

時代も「トップダウンからボトムアップへ」、「北風型から太陽型へ」と、マネジメントのやり方が大きく変わるときでした。これを機に、自分の歩き方や仕事の仕方を見つめてみようと思って、キャリアカウンセラーの資格を取ったり、心理学の勉強をしたりと、仕事をしながら、あらゆる講座に通いました。

その時に「捨てること」の大切さを学んだような気がします。「今までのプライドやキャリアも全部捨てて、一から頑張る」「もう一度、輝くために捨てる」と決心しました。家の中も全部整理しました。

今でいう断捨離です。家の中にも余白ができたら、心にも余白ができましたし、また新しい自分に生まれ変われるとワクワクしました。モノを捨てることで、一歩ふみ出す勇気が出ました。
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キャリアも捨てて、それでわかったこと

いつも、「捨てちゃったら後悔しませんか?」って聞かれるのですが、「捨てたら、どんなことが起こるか、想像して書いてみてください」と答えます。実際に書き出してみると、「そんなに最悪でもないです」と、皆さん、おっしゃいます。

私も辞めてから3年くらいは食べていけず、貯金を切り崩しながら過ごしていた時もありました。華やかな世界にいたので、地味なスーツを着て、40歳でアシスタント講師という修行の毎日に最初は全く慣れなかったです。

地下鉄で後輩に会ったりしても恥ずかしくて隠れたこともあります。けれど、やってみたら、本当にやりたいことは続けられますし、楽しく続けていると応援してくれる人も増えていきます。

横田真由子

生き方を考えよう

好きなことを見つけられたら、人生は豊かですから、「これからはミニマムリッチの時代です」ということをご提案したいです。昔は人生50年と言われていました。50歳が寿命だと言われた時代は、たった50年前なんです。

今、急に「人生100年時代です」「60歳の定年が70歳になります」と言われても、70歳まで現役でいるようなキャリアプランは、誰も語ってこなかったと思います。

だからこそ、人生の後半はミニマムリッチ。余計なものはそぎ落として、本当の自分でいることで、自分らしいキャリアプランが見えてくると思います。

ー 僕も最近引っ越しをしたのですが、ミニマムリッチっていいなって思いました。引っ越しするのに荷物があると邪魔ですよね。必要最小限の物だけあれば、住む場所も選ばないですし。

そうです!今、働き方も多様化しています。企業ではテレワークも導入されていますし、スマホひとつで仕事をしている人もいます。荷物をいっぱい持つって、時代に逆行していると思います。大事な物だけで十分です。

ミニマムリッチのコツは自己肯定感

ー ミニマムリッチは、どういった方に必要ですか?

次から次へと新しいものが欲しくなって買い物を繰り返すけど、本当に満足できない方、また、自分のことが好きになれなくて、いざというときに勇気が出なくて、行動できない方、真面目で頑張りすぎる方に、重い荷物を手放してラクになってもらえたらと思っています。

ー 自己肯定感の低い人ということですか?

なかなか自分にOKが出せない人ですかね。今は、SNSで、人と比べることが当たり前になっているので。知らなくてもいいような情報がどんどん入ってくるから、自己肯定感が低くなる傾向は強いと思います。

サンダル履きでもスリッパでもいいから

ー 「ミニマムリッチ」で判断力と決断力がつくっていうことですが、やはり今、決断力がない人がすごく多いですよね?

決断力がなくなる原因として、選択肢が多すぎるのかもしれません。AかBで悩んでAを選んでも、「やっぱりBがよかったかもしれない」ってずっと悩む。今は、情報も多すぎるから。誰が何と言ってもブレない、マイルールや自分の基準をしっかり持てるといいですね。

ー それでも迷ってしまう人っていると思いますが、そんなとき横田さんの本を読んでもらえるといいですよね。

本には、私の失敗談もたくさん書いていますので、「背中を押してもらえた」「失敗してもいいからやってみようと思えた」という感想をいただいています。
失敗するのが嫌な人は、完璧じゃないと一歩も進むのが怖いと思いますよね。でも、取りあえずやってみよう、サンダル履きでもスリッパでもいいから、とにかく一歩ふみ出してみようと思ってもらえたらいいなと思っています。

ー そんな気持ちになれたら、いいですね。

はい。私にできることは全力で応援したいと思っています。月一回ランチ会を都内で開催していますので、ぜひお越しください。遠方からも読者の方が来てくれて、お互いに情報交換したり、ミニマムリッチについて、いろんな経験談や目標を共有していますので、「刺激になる」と、毎回参加してくださる方もいます。

実際に読者の方にお会いして、色々なお話聞くと私も勉強になるし、「ミニマムリッチの答え合わせに来ました」とか「やることより、捨てるもの、やらないことを決めました」と言って頂けて、私の方も「これでよかったんだ」「私の言いたいことはちゃんと伝わってるんだ」という確認になります。

横田真由子

バッグから出して仕分けをするきっかけに

ー 迷ってることって正解はないけど、ある程度振り分けてくれる存在って大事ですよね。

そうですね。最後に決めるのは自分ですけど、ある程度整理して「こっちは必要だけど、これは本当に必要ですか?」って。バッグから出して仕分けをするきっかけをつくれたらいいなって思っています。

ー その最後に自分で決めたっていうところが自信になりますね。

はい。人に惑わされず、日々の小さな決定を自分でしていくことで、やがて大きな決定もできるようになります。

ー 今後はどういったことを?

いくつになっても輝いていて、人生を軽やかに、しなやかに生きる女性が増えるといいなと思っています。「私の幸せは私が決める
と、それぞれの個性が輝くような女性のコミュニティーをもっともっと大きくしていきたいと思います。
やっぱり女の人がご機嫌だったら、男の人もハッピーだと思うんですよ。子供たちもお母さんが笑っていたら嬉しい。だから「いつも女性が笑顔でご機嫌だね
っていう社会を作りたいです。

【略歴】
横田真由子 / よこた まゆこ
ミニマムリッチ®コンサルタント
ライフスタイル・アドバイザー
オフィスファーレ代表

株式会社ケリングジャパン(旧 GUCCI JAPAN)販売スタッフとして有名人やVIP客の担当となり、3年で店長に昇格。顧客獲得数NO1となる。VIP客の物選びに女性としての優雅な生き方を学び、独自の「大人エレガンス」を実践。

2004年研修講師として独立。英語の「DO」と同義語のイタリア語「fare」を屋号に、「オフィスファーレ」を設立。
「えらぶチカラで人生は変わる」を理念に、キャリアコンサルタントとして企業研修、女性のキャリア支援を行い、満足度、リピート率は97%。

また、物をただ使い捨てるのではなく、選んだものを大切に手入れしながら愛し抜く姿勢に、真の豊かさを感じ、「上質なものを少しだけ持つ人生」=「ミニマムリッチ®ライフ」を提唱する。
軽やかで心豊かに生きるメソッドを伝える「ミニマムリッチ®コンサルタント」として、セミナー、講演、執筆活動を行う。

著書に、「本当に必要なものは、すべて小さなバッグが教えてくれる」、「すてきな靴が一歩ふみ出す自信をくれる」(クロスメディアパブリッシング)がある。

ミニマムリッチ公式サイト
http://minimum-rich.com/
オフィスファーレ
http://www.office-fare.jp/