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店長さん必見の「10年顧客戦略」を顧客育成コンサルタントが説く

店長さん必見の「10年顧客戦略」を顧客育成コンサルタントが説く

顧客育成コンサルタントとして多くの企業に「10年顧客戦略」を伝え続ける齋藤孝太(さいとうこうた)さん。同じお客様に10年来てもらうために何をしたら良いのか。情報やデータ、リサーチに翻弄される今の時代であっても、その答えは立ち位置を変えればわかることだと提唱されています。お客様をよりリアルに感じ、深く知るための“自分視点”について、とことん聞き取らせていただきました。

齋藤孝太

単なる固定客ではなく、10年顧客

B to Cのビジネス、エンドユーザー向けのビジネスの方々にコンサルティングをしています。特に店舗のビジネスがお相手です。例えば化粧品業界、バイク業界、釣り具業界、居酒屋チェーンさん、プライベートスポーツジムの方々と仕事をしています。

― 私たち消費者にとって一番身近なところにあるものですね。どんなコンサルティングをされているんでしょうか。

同じお客様に何年もずっと来てもらう「10年顧客戦略」をお届けしています。同じお客様に10年来てもらうためには、今の活動をどう変えたら来てもらえるをクライアントさんと丁寧に考えるんですね。今のままだと中々10年来てもらえないということであれば、具体的にどうすればいいのかを考えて実行していくことをしています。

齋藤孝太

固定客を育てていこうということだけですと、別に今のままでもいいんじゃない?となりがちなんですが、本当に10年来ているお客様って何人いるのか調べてみたときに、ちょっと少ないんじゃないかと気づいたりするものです。

“他にはない”があるからこそ人は通う

― 10年というとかなり長いスパンで来続けていただくということになると思うのですが、具体的にどういったことをされているんですか?

例えばレストランの場合、来てくれたお客様に10年来ていただくには、当然その方の好きなメニューだったり、望む接客だったりを把握しておかないと、10年来てくれないですよね。お客様の事を深く知り、情報を蓄積しながら進めていく必要があります。

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例えば、同じ美容室に10年来てもらおうと思ったら、毎回来た時に「今日どうしましょうか」と言っていても、なかなか10年は来てもらえない。これからも継続してきていただくには、「今、お客様の年齢が◯◯だから、こういう髪型にされているけど、10年後はこんな風に変えたらいいんじゃないかな」と想いをちゃんと伝えてから、お客様に「今回はこんな髪型にしてみたら、いかがですか?」と聞く事が大事ですよね。毎回「どうしますか?」と聞いていると、「他の美容室でもいいかな」とお客様は考えてしまいますよね。

ただ売るだけなら工夫は要らない

バイクショップの例が一番わかりやすいかもしれません。車でも同じですですが、例えば1台目を買って、5年後に2台目を買ってもらって、もう5年後に3台目を買ってもらいます。10年の間にバイクを3台買ってもらうのです。本当に3台買ってもらうために、どうしたらいいんだろうか?と、丁寧に考えていきます。

そうしたときに、バイクを購入したお客様にお礼状を書くことは当然なんじゃないかと。1台買ってもらうだけでOKであれば、別にお礼状を出さなくてもいいんですよね。もう買っていますから。成約という意味でいえば、そこで一旦終わっているわけです。

10年繋がる意味をつくる

でも2台目も買ってほしいのであれば、やはりお礼状が必要になってきます。また購入後の点検の時も、普通に点検して終わりであれば、次は別のところで点検や車検を依頼してもいいのかなとなりますよね。

ずっと来てもらうためには、1年点検の時にバイクの内部写真をきちんと撮っておけば、次の車検の時に違いを写真で見比べることができます。それだけではなく、自分の大事なバイクのことを一番知っているのはこのお店で、写真データをずっと蓄積してくれていると思ってもらえます。だからこそ、多少値段がはっても、そのお店に通う意味が出てきます。本当に人が一つの場所に10年通うって、そこまでやらないと現実的に考えて10年行かないですよね。

― 10年行きたくなる意味を作る、ということでしょうか。

そうです。バイクショップも美容室もレストランも、他にたくさんありますから。そういう意味では10年来てもらうにはどうしたらいいのかを丁寧に考えていくことは、実際に今の活動を改善していく上で、すごく大事なんじゃないかと思います。

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表面的な改善策は成果が出ない

― どのお店も、良くしていきたいと考えているとは思うのですが、齋藤さんのおっしゃる「10年」という軸で考えることとの違いはなんでしょうか?

ただ単に「良くしていこう」だと、笑顔を増やすことや基本を大事にすることなど、意外とお客様と関係のないところを努力しようとしてしまいます。実際に10年来てもらうためにはと考えて出た案というのはダイレクトに成果に繋がりやすいんですよね。

そういう視点で考えないと、毎回同じような改善点について話し合う会議になってしまいます。だからこそ、10年という時間軸をもって前に進めることを大事にしています。

齋藤孝太

接客は最低条件

― クライアントのお店に実際行ったときは、どういったところをまず見ますか?

店舗の場合は接客ですね。店舗はお客様から見ると4つの要素で構成されています。接客、売場、イベント/販促、ツールです。リーフレットやDM、SNSもツールの中に含まれます。

この4つの内、10年来てもらおうと思ったら、まず接客が大事です。接客が今一歩だと、10年通うことが極めて難しくなります。いくらリーフレットが美しくても、いくら店構えがかっこよくても、SNSの情報が面白くても、一回は行くんですけど、10年といった場合、接客がまずは一番大事になってくるので。そこのところは一番見ているところですね。

通い続けてもらうための「お客様視点」とは

― 著書の『お客は自分が欲しいものをわかっていない』にも書かれていたと思うのですが、お客様をお客様という風に扱ってしまうと遠い存在になってしまうので、考えるときには「自分も一人のお客様だ」考える視点を持つと書かれていますよね。

そうですね。特に接客を改善しよう思った場合に、「もうちょっと商品説明を丁寧に」だとか「もっとお客様に共感しなきゃ」など、いろんなアイディアは出てきても、言葉だけになりがちで。頑張ろう!ってなるんですけど、なかなか変わらなかったりします。

まずは自分がお客様で、お店に行ってサービスを受けますよね。そういうときに、“自分はどんな接客だったら心地いいだろう”ということを考えてみるのです。そういった思いをみんなで共有して話し合いながら、アイディアを出していくと比較的改善につながりやすい。月一回のミーティングで、ここ1か月で自分がお客様として心地がよかった体験をシェアしてみる。スタッフが5人いれば、5人に話をしてもらうわけです。

例えば、あるスタッフはレストランでこういった説明を受けて心地がよかった話があるかもしれないし、逆にこういった対応をされて気持ちがすぐれなかった場合もあるかもしれないから、そういったこともお話をしてもらって。そのあとに、じゃあ実際に私たちの接客はどうなんだろうかと考えていくんです。

体験をベースにすると実践しやすい

― 具体的だと、意識しやすいですもんね。

やっぱり「普通に改善点を見つけよう」みたいに話をしていくと、表面的な話で終わってしまう。なので、自分の体験をベースにしながらお話をしていくと、身の丈に合った話になったりするのです。

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この本では特にそこを強調して書きました。どうしても頭で考えちゃうんです。別に頭で考えるのが悪いわけじゃないのですが、エンドユーザー向けのビジネスは、心地いいとか、心が動く、琴線に触れることがものすごく大事です。

法人ビジネスの場合は、心に届く提案ももちろん大切ですが、どちらかというと、クライアントにどういう実質的メリットを届けるかが大事になってきます。やっぱりエンドユーザービジネスは、心に残ることが大事。

お客様の心を察するには

― エンドユーザー向けのお仕事でしたら意識しやすそうな気がするんですが、心を意識するというのは難しいのでしょうか?

打ち合わせや会議のときに「心の部分を大事にしてください」と言っても、なかなか良いアイデアは出てこないものなんですよね。お客様の心は見えないからでしょうね。
もちろんお客様に共感しよう、より伝わるようにと日頃努力はするのですが、満足しているかどうかをお客様が言ってくれるわけじゃないですし。お客様自身がどんな商品が欲しいのかわからないから、店舗に来ているっていう方もいらっしゃいますからね。

齋藤孝太

例えば「明るめのスーツ」と言われても、ほとんど説明していないようなもので(笑)グレーの明るめなのか、紺の明るめなのかってわからない。お客様の方も自分が欲しいものが実はわかってないことも多い。ですからお客様の心を察しようと思ったら、やっぱり同じ人間なので、自分のことを深く知ることでお客様の心もより見えるようになっていくのではないかということで、著作『お客は自分が欲しいものをわかっていない』のなかでは僕の体験をベースにしたマーケティング方法をまとめています。

自分だったらどんなお店に通うか

10年じゃなくても、自分が1年とか2年とか継続して行っているお店があったら、「このお店よりおいしいお店ってあるかもしれないのに僕はどうして通っているのかな」ということを丁寧に考えることを、意外にしていないものなんですよね。それなのに自分のお店にはなぜお客さんが来ないのかは結構な時間をかけて考えるんですよね。
自分を軸に考えたほうが納得感があるし、改善点を見つけやすいのですが…。

「いいお店だね」は二度と来ないこともある

― お店のことを考える時ってどうしても「店側」の視点に寄ってしまう気がしますよね。

そうなんです。だから商品を丁寧に説明しようとか、クレームを減らそうとなる。もちろん聞かれたことだけ答えたりしていれば別に不満もないしクレームもない。でも「いいお店だな」と思っても次回行かない事はよくある話ですよね。
僕も奥さんとフレンチレストランに行った帰りに、「美味しかったねー、次回はどこのフレンチレストランに行こうか?」なんて話していることはざらにあります(笑)

そう話している時点で、そのお店に2回目行くことはないですよね。「また行こうね」とはならないわけです。別に不満があるわけじゃなくても、意外とこういうことってあります。一定の満足をしていても、不満がなくてもリピートしないこともある。そういうことも、自分を見てみるとわかりますよね。

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その値引きは本当に有効か?

― 自分がお客様視点に立ってみるといろいろ見えるということですね。

やはりお客様のリアルなところがベースでないと…。どうしても、もっと割引しなきゃいけないんじゃないかという勘違いも生まれます。実際は割引しても、もう一回行かないんですけどね。自分がいつも行っているお店、自分が長く通っているお店って、毎回割引券を配っていますか?という話ですね。自分があるお店に通っている理由が、割引券があるからというなら、割引券は大事ですよね。自分がそうしているのですから。
でも現実はそうじゃないことも多いことを考えると、もしかしたら金額じゃないところで固定客が増えない、じゃあなんでだろうという視点も出てくるわけですよね。

齋藤孝太

自分自身の消費体験は宝

― お店側視点で考えないことによって、かえって見えてくるということですね。

自分の消費体験をベースにして考えていくと、そのくらいの方がちょうどいいということにも気づけます。お店をやっていてお客様のことを考えないなんてことはそもそもない。でもお客様のことばかり考えるといつも同じ方向ばかり考えちゃうんですよね。外部のリサーチを見たり。今のお客様が考えていることも大事ですが、そもそも自分はどうしているんだろうか?をしっかり考えた方が、変に情報に左右されないですね。

傾向や流行りを鵜呑みにしすぎない

― リサーチの時代ですからね。何が正しいかわからなくなる。

そうですね。リサーチを参考にしすぎてしまうと「今はコスパの時代です」なんて言われれば、安くしなきゃいけないのかななんて考えてしまったり。
吉野家で400円払えば美味しい牛丼や定食が食べられますけど、同じような定食屋さんで僕900円ぐらい払って食べたりもしますからね。倍以上も違う現実があるときに、じゃあなんで倍払って食べているんだろうと考えてみるんです。

男性だったら、同じシャツでも3000円のものもあれば8000円のシャツもある。同じシャツなのになんで5000円も多く払うのかと考えたときに、コスパと言いつつも8000円以上の価値があると思うから買うわけですよね。別に安いものだけを求めているわけじゃないことが、自分の消費体験を見つめると分かります。

情報は体験とすり合わせて活かす

― 情報だけ信用して物事を判断するとぶれちゃいますし、結局流行りに乗ると個性は埋没しますものね。

それこそ10年通いたい店にはならないですよね。情報が100個あったとして、自分の体験とすり合わせてみて、これは絶対そうだなと思うことが10個あったとしたら、それはすごく大事ですね。

僕自身、店舗を運営されている方々を対象にコンサルティングをしていますけれど、店舗で働いた経験はありませんから、店舗経営という面でいえば専門家ではありません。「私がお客様だったら、お店でこういったことをされたら嬉しいと感じます。いかがですか?」ということをお話しするのですが、それをやってもらうと、実際反応が良い事も多くて。そういう視点はビジネスの上では意外と見過ごされがちです。

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“自分がお客様だったら”に改善策が見つかる

― 自分が大切にしたいものが、お客様にとっても大切にしてほしいものだったりするということですね。

そうです。だから心の動きが大切だし、やっぱり心がこもっているかどうかはよく言われることですが、実際大事だなと思うんですよ。
会議の中で「心を込めようよ」というと何かさらっと流されそうですよね?「まぁそりゃそうだよね」「この話、前も聞いたな」みたいな。

でも自分が行っているお店で、「やっぱり心がこもっていないって嫌なんだな」「ぞんざいに扱われるって不快なんだな」と思ったときに、それをもしかしたら自分達のお店が提供しているかも知れないと考えるといたたまれないですよね。仕事だから、という以前の話になってきますよね。だからこそ、体験やリアル感を大切にしながら改善していくことが大事なのかなと思います。

― 今後どういった活動をされていきたいですか?

やはり“自分がお客様だったら”ということをベースに改善していくことを伝え続けていきたいです。お客様をよりリアルに思うことによる改革をクライアントさんと一緒に取り組んで行きたいですね。そんな現実をもっと増やしていきたいです。

齋藤孝太

齋藤 孝太(さいとう・こうた)
株式会社SIS 代表取締役。顧客育成コンサルタント。

1973年生。日本大学法学部卒業後、広告代理店に入社し、企画営業として勤務後、企画・マーケティング会社に転職し、大手化粧品メーカー・大手石油会社等のマーケティング計画策定・現場マニュアル作成に携わり、マーケティングノウハウに精通。その後マーケティングコンサルティングに転職し、多くの売上アップ成功事例に従事。2004年8月独立。店舗系ビジネスにおいてお客様との関係を深めることにより売上拡大を目指す企業を対象に「10年顧客戦略」をお店の現場に根付かせるコンサルティングを行っている。

主な著書に、『10年顧客の育て方』(同文舘出版)、『お客は自分が欲しいものをわかっていない。』(クロスメディアパブリッシング)、『店長のための10分でできる!売上アップのお店改善』(日刊工業新聞社)、『なぜ、CRM(お客様育成)は、現場の心に根付かないのか?』(日刊工業新聞社)、『店長のための10分でできる!売上アップのお店改善』(日刊工業新聞社)などがある。

株式会社SIS